Amazonのフライホイール効果から学ぶ、企業の成長戦略の描き方
Amazonはオンラインショッピングで世界を牽引する存在です。今やAmazonなしでは生活が成り立たないと言っても過言ではありません。その成長の勢いはどこから来るのでしょうか。
Amazonは、2001年にビジネスモデルとして「Amazonフライホイール効果」を発見しました。この記事では以下の三つのことが分かります。
①Amazonフライホイール効果とは?
②Amazonの新たな取り組み
③企業へフライホイール効果を応用する方法
これらのポイントについて詳しく解説していきます。
Amazonフライホイール効果とは?
フライホイールは、もともと機械設備の用語です。円盤状の機械部品で、回転力をエネルギーとして蓄積できます。フライホイールを回転させると、エネルギーを放出して速度安定化を図れます。このように、慣性力によって回転が保たれる現象をフライホイール効果と呼びます。
Amazonの場合は、利益を企業の発展のために再投資することにより、さらに売り上げを伸ばしていきます。このサイクルは一度回り始めると、フライホイールのように成長が持続します。このようなビジネスモデルを、Amazonフライホイール効果と呼びます。
簡単なスケッチにより発見されたフライホイール効果
引用元:amazon.com
1990年代初頭、Amazonの共同創設者でCEOであるジェフ・ベゾスはAmazonの基礎となる最初のアイデアを考え出しました。それは「顧客に多くの商品の選択肢を持たせ、できる限りなく低い価格で提供する」ことです。
その後、Amazonは急速に成長し、さらに大きなビジネスモデルへと変化していきました。その理由を、Amazonは簡単なスケッチにより可視化しました。
まずは、低コストのビジネスの仕組み(”LOWER COST STRUCTURE”)を作ることで、顧客に低価格(”LOWER PRICES”)で商品を提供します。商品を安く提供すると、顧客に高い満足度(”CUSTOMER EXPERIENCE”)を与えます。満足した顧客は再び買い物をするため、商品全体の取引量(”TRAFFIC”)が増加します。取引量が増加すると、さらに販売企業(”SELLERS”)が参入します。販売企業が多く参入すると、商品の品揃え(”Selection”)が増えます。そして、品揃えが豊富なことで、さらに顧客満足度は高くなるというようにサイクルが持続し、Amazonの成長(”GROWTH”)は加速し続けます。
フライホイール効果のスケッチにより、Amazonは自分たちの事業が成長する仕組みを理解しました。そして、インターネットの爆発的な普及により、Amazonは世界一のeコマース企業へと発展したのです。
利益ではなくキャッシュフローを最大化する
Amazonのビジネスモデルは、利益ではなくキャッシュフローを最大化します。キャッシュフローを最大化することで、様々な設備に投資して新事業を生み出していきます。
Amazonには「まず挑戦してみて上手くいかなかったらすぐに諦める」という企業文化があります。その考えはジェフ・ベゾスの「100倍の利益が戻ってくる可能性が10%あれば、必ず賭けるべき」という言葉にも表れています。
例えば、Amazonは2014年にスマートフォン「Fire Phone」を発売しました。メディアでも大きな注目を浴びましたが、大量の商品が売れ残り、結果として大きな赤字になりました。他にも、ホテル予約サービス「Destinations」や、スマートフォン決済サービス「Amazon Wallet」など新事業の失敗は数多くあります。
しかし、挑戦した事業の中には、大成功しているプロジェクトがいくつかあります。例えば、広告事業やクラウド事業の「AWS」は高い利益率で急成長し、Amazon全体の利益を大きく押し上げています。挑戦に積極的な姿勢が、様々な分野で事業を成長させる結果を生みました。Amazonは規模を巨大化させながら、さらに経営の多角化にも成功しています。
Amazonの新たな取り組み
Amazonは新たなフライホイール効果を狙って、多くの成長モデルへ投資しています。取り組みは現在も続いており、様々な新事業が誕生しています。その中でも特に興味深い、三つの例をご紹介します。
Amazon GO
2018年の1月22日、アメリカのシアトルにコンビニ店「Amazon GO」が誕生しました。「Amazon GO」にはレジ店員がおらず、スマートフォンを持って買い物するだけで決済が完了します。
「Amazon GO」の利用方法は非常に簡単です。まず入り口のゲートで、スマートフォンを使用しQRコードを読み取ります。店内では商品を自由に手に取り、バッグへ商品を入れていきます。会計手続きは必要なく、ゲートを通って店を出るだけで買い物が完了します。もしも、会計内容に間違いがあった場合や、商品に満足できなかった場合は、スマートフォンアプリから払い戻しを受けられます。この際に商品を返品する必要はありません。
「Amazon GO」の仕組みを可能にするのは、カメラセンサーによる来店客のトラッキングと、AIによるディープラーニングアルゴリズムの組み合わせです。カメラセンサーが人の動きを追跡し、ディープラーニングにより来店客の動作の意味を正確に捉えます。例えば、一度手に取った商品を棚に戻すと、商品の購入はキャンセルされる仕組みです
「Amazon GO」はAI化により、コンビニの人件費を大きく削減しました。さらに会計の手間を失くすことで、顧客にも新たな満足感を提供しています。
物流業界への参入
Amazonはインターネット上で商品を販売していますが、配送は大手物流業者に委託しています。その商品配送を自社で行い、物流業界へ参入する計画が「Shipping with Amazon(SWA)」です。
現在、世界中に物流拠点を作り、本格的な進出へと準備を進めている段階です。物流サービスの規模が大きくなれば、他社の商品配送も請け負うようになり、大手物流業者と競合していく可能性もあります。
さらにAmazonは、商品の配達にあたりドローンの利用を検討しています。現在、ドローン配送技術の特許取得を進めており、既に技術的には実現可能なレベルにあると見られています。
ただし、ドローンについては世界各国で飛行の規制があり、政治的な問題がドローン導入の障壁となっています。今後、必要なインフラとしての理解が進み、規制が緩和されていくことが期待されます。
Amazon Launchpad
Amazonは新たな発想によって開発されたスタートアップ商品を販売する「Amazon Launchpad」と呼ばれるサービスを提供しています。新たなアイデアを取り入れた興味深い商品を、簡単にインターネットで購入できる仕組みです。
例えば「Amazon Launchpad」の中には、紛失防止トラッカー、スマートロック、スマート電球など既に人気商品としての地位を確立している商品もあります。販売されている多くの商品がIoT(モノのインターネット)と呼ばれる、インターネットと接続する仕組みを持ち、スマートフォンと連携して製品の操作や情報の閲覧が可能です。
「Amazon Launchpad」はAmazonが得意とする集客と物流を、商品を販売する企業へ提供しています。取り扱う商品を増加させて、顧客の選択肢を増やすことで、Amazonのフライホイール効果へと繋げています。
企業へフライホイール効果を応用する方法
フライホイール効果はAmazonだけに当てはまるビジネスモデルではありません。他の企業もフライホイール効果を応用し、成長に役立てることが可能です。企業がフライホイール効果を意識する上で、特に大切なポイントについて解説していきます。
新技術へ関心を持つ
Amazonが新たな事業へ参入する際には、新技術の導入による改革の試みが多く見られます。例えば「Amazon GO」ではAI(人工知能)、「Shipping with Amazon(SWA)」ではドローン、「Amazon Launchpad」ではIoT(モノのインターネット)が活用されています。
日々生まれている新技術への関心を、常に持っておくことが重要です。アンテナを張って情報を取得することで、新たなアイデアの発想へと繋がっていきます。
失敗を恐れずに挑戦する
アイデアは思いつくだけでは意味がありません。実際に行動することで初めて意味を持ちます。例えば、アメリカのシリコンバレーでは、多くの企業が失敗に寛容な企業風土を持っています。失敗は、成功に必要なリスクだと考えられているからです。
日本企業は失敗を責める傾向が強く、技術革新が阻害されやすい環境が見られます。失敗を恐れずに挑戦することは、企業が推奨すべき姿勢です。
まとめ
フライホイール効果の最大の特徴は、利益を事業に再投資することです。目の前の損益だけに目を向けず、キャッシュフローを増やすことで新事業の成功を呼び込みます。
フライホイール効果は、日本企業にはあまり見られない挑戦と再投資の側面を持っています。企業のグローバル化が進む中で、学ぶべきポイントが多い成長戦略モデルと言えます。
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