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BIMデータをVR化して閲覧・利用・開発するための専用ソフト7選

ゲームや映像業界を始め、教育や医療の現場でも利用例が出始めているVR(バーチャルリアリティ)。
その波は、建築業界にも確実に押し寄せ始めています。
建築設計・施工の業界において、まだ実在しない空間を構想し他者とイメージを共有し合うことのできる仮想空間技術が導入されれば、非常に心強い武器となることでしょう。

一方で建築業界は、デジタル化への対応の遅れがしばし指摘される世界です。
特に建築とVRの融合を考えたとき、BIMデータをVR化する手法の乏しさは大きな課題となっていました。

BIMデータとは、建築物の見た目・形だけではなく、材質や構造、設備機器の仕様など、あらゆる物理的な情報も組み込んだ3Dモデルを意味する単語です。
BIMデータを使えば、風向計算のシミュレーションや建設費用の積算作業が一つのデータで完結するなど多くのメリットがあります。
しかしその多目的さ・複雑さゆえに、スムーズにVRデータに変換することが極めて困難でもありました。

そこでこの記事では、BIMデータをスムーズかつ手軽にVR化するソフトや手法を目的別に7つ、紹介いたします。
設計者同士、設計者と施工・保守管理者、あるいは顧客へのプレゼンテーションといった情報共有際し、VR技術を役立てたいとお考えの企業の皆様は、ぜひご一読ください。

ゲームエンジン「Unity」を用いてBIMデータをVR化する

ご存知の通り、VR技術は特にゲーム業界でめざましい発展と進化を遂げています。
そのため、建築の設計データをVRで鑑賞するにあたっても、ゲーム業界の開発ソフトを利用することが一般的です。

そこでこの章では、まずゲームエンジンUnityを利用した、BIMデータのVR化について紹介します。
ゲームエンジンを利用する方法は、後述する専用ソフトを用いたBIMデータのVR化に比べて手順も手間も多く、実現までの行程も複雑なものになりがちです。
しかしその分低予算での実現が可能となります。
また、自分で諸設定を決められることからカスタマイズ性に富み、あなたが望むVR内での表現や形式を実現しやすくなる点にメリットがあります。

そしてBIMデータをUnityで編集できる状態に変換すれば、あとは当ブログの記事を始めとする数々のサイトで紹介されているVR開発の手法を利用することで、設計したBIMデータを仮想空間で閲覧・利用することができるようになるでしょう。
【内部リンク:https://stg.capa.co.jp/archives/25210】

BIMデータをUnityで読み込める形式に変換するツールとしては、

  • Autodesk forge
  • Unity BIM Importer
  • Unity reflect
  • Lumion® LiveSync

などが挙げられます。
以下順に解説いたします。

Autodesk forge(Autodesk社)

Autodesk forgeは、AutoCADやREVITでもお馴染みのAutodesk社が、2015年に提供を開始したプラットフォームの一つで、CAD・BIMデータをweb上でも扱えるAPIデータに加工するサービスです。*1)

本来の主な使い方としては、CADソフトを持たない顧客相手に図面データを見せるWebサービスの開発や、図面データをウェブ上にアップロードするだけで積算が完了するソフトの設計などに利用されています。
【内部リンク:https://stg.capa.co.jp/archives/31332

そしてこのアプリケーションに「ARVR-Toolkit Unity Package」をダウンロードすることにより、下記記事でも紹介した通り、BIMデータをUnity上で扱えるデータに変換することができるようになります。
【内部リンク:https://stg.capa.co.jp/archives/31527

この手法はBIMデータをVR化する手法のなかでも比較的早い時期から登場した、代表的な手法です。
しかしその変換方法が大変複雑なため、激務に追われる建築業界人が導入するにはいささか学習コストのかかりすぎるものでした。
そのため、より手軽な設定と手順でBIMデータをVR化することができる手法の開発が望まれている状況が、しばらく続きました。

Unity BIM Importer

そんな中、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが2018年、Unity BIM Importerをリリースしました。*2)

BIMデータをより手軽にVR化する手法は世界中の建設業界の隠された悲願でしたが、その大きな第一歩が日本国内から踏み出された事実は、業界関係者の中で大きな話題となりました。
発表に際しては、開発者へのインタビューや発表スライドも同時に公開されたため、現在でも当時の盛り上がり感じることができます。*3)*4)

価格は通常版(Unity/3ds Max版)で、年額 :30,000円(税別) / 1ライセンス(スタンドアロン版)です。*5)
【内部リンク:https://stg.capa.co.jp/archives/32882

Unity reflect

さらに続く2019年2月には、Unityから「Unity reflect」がリリースされました。*6)
「BIMをワンクリックでUnityに」というコンセプトのもと発表された「Unity reflect」は、年間82800円とやや高額なものとなっています。
しかしスケッチアップやライノセラスといった非BIM系建築3Dソフトも視野に入れたソフトとして登場し、こちらも大きな注目を集めました。

Lumion® LiveSync

最後に紹介したいのが、レンダリングソフトLumionのプラグインである「Lumion® LiveSync」を用いる手法です。
BIMをUnityで読み込む専用ソフトではないため手順こそ複雑になりますが、無料ソフトのみでBIMデータをVR化することができる点に大きな強みがあると言えるでしょう。 具体的な手法については、株式会社松本技術設計の松本氏が執筆したnoteの記事などが参考になります。
REVITやARCHICADをはじめとする、建築業界で利用される3DモデリングソフトのデータをUnityに読み込む方法が解説されています。*7)

ゲームエンジンを用いず、BIMデータをVR化する方法

ここまでは、大なり小なりあなた自身の手でデータを変換・カスタマイズしながら、汎用のVRデータを作る方法を紹介してきました。

しかし世の中には、BIMソフトの制作会社が自社でVR化する方法をすでに提供しているものや、BIMデータをゲームエンジンを介さずにVR化する専用ソフトの販売を行っている会社も存在します。そのためご利用のBIMソフトによっては、最短で自社の設計データをVR化することも可能となるでしょう。

以下、複雑なデータ変換作業を必要とせずBIMデータをVRとして利用できる、具体的なサービスを2つ(サービス終了も含めて3つ)紹介します。

BIMx

ARCHICADでおなじみのgraphisoft社が提供する、BIMビューアアプリケーション「BIMx」には、タブレット端末やデスクトップPC上、そしてスマートフォン上でARCHICADの情報を閲覧する機能が搭載されています。*8)

このうちスマートフォン版の「BIMx App」には、GoogleCardboardを始めとするスマホ用ヘッドマウントディスプレイ装置と合わせることで、どこでも手軽にVRを楽しめる機能が備わっています。*9)

利用できるのはARCHICAD使用者に限定される点や、OculusQuestといった本格的なVRヘッドマウントディスプレイには対応していない点が残念ですが、作成したBIMデータからVR体験を得る最も手軽な方法として、非常に知名度の高い方法と言えるでしょう。

BIMxを始めとする、ARCHICAD関連サービスについては、下記の記事なども参考になります。
【内部リンク:https://stg.capa.co.jp/archives/33634

REVIT Lives

さて、ARCHICADをVR化するソフトが有るのなら、REVITをVRできるプラグインもあるのでしょうか?残念ながらその答えは「以前はあった」という過去形のものとなります。

Autodesk社は、REVITのデータをクラウド上にアップすることでかんたんにVR化できるというすぐれものでしたが、2020年3月にサービスを終了してしまったために、現在は利用することができなくなっております。*10)
Autodesk社はその代案として、前述のUnityReflectや、後述するIRISVR社の製品を取り上げています。*11)

PROSPECT

最後に紹介するのは、先進気鋭のVRベンチャーであるIrisVR社が提供する、「PROSPECT」です。*12)

2016年に800万ドルの資金調達に成功したIrisVR社は、建築業界で作成される3DモデルやBIMデータを、Oculus RiftやHTC Viveといったハイエンドクラスのヘッドマウントディスプレイでの使用にも耐えうる高い精度のVRデータとして活用することを宣言。*13)

そして翌2017年には、VRソフトウェア「Prospect」を発表し、建築業界に新たな風を吹き込みました。*14)

価格は、個人利用でも月225$とやや高価ですが、REVIT、ライノセラス、スケッチアップといった主要なモデリングソフトに対応しています。
ゲームエンジンを介さないワンストップ型のVR利用の新たな形として注目を集めています。

まとめ

以上、すでにサービスを終了したものや有償のものも含め、BIMデータをVRとして利用するための7つのソフトを取り上げました。
建築業界でのゲームエンジンの導入やVRの利用は、設計・施工・防災・保守管理・営業など、幅広い分野への応用が期待されている最先端の分野です。
そのため、今後さらに良質で手軽で安価なBIM×VRのサービスも登場してゆくことでしょう。
その動向に、2020年以降も目が離せません。

 

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参考文献(最終閲覧は全て、2020/10/28現在)
*1)A cloud-based developer platform from Autodesk(公式HP):https://forge.autodesk.com
*2)Unity BIM Importerをリリース決定:https://unity3d.com/jp/company/public-relations/news/unitetokyo2018bimImporter
*3)Unity BIM Importer と広げる新たな建築の世界:https://events.unity3d.jp/unitetokyo2018/interview/bim.html
*4)【Unite Tokyo 2018】Unity BIM Importer ~BIMデータの活用事例と新しいソリューション~
https://www.slideshare.net/UnityTechnologiesJapan/unite-tokyo2018-day3room41tanaka-96484689
*5)BIMImporter|情報技術部|事業部|DIX 株式会社ディックス:https://www.dix.ne.jp/departs/it/bimimporter
*6)Unity公式サイト 製品ページ
https://unity.com/ja/products/unity-reflect
*7)【チュートリアル01_B】Revit→Unity|note:https://note.com/matsumotobim/n/n5f396308eb42?magazine_key=m06644a83a8b0
*8)BIMx – Graphisoft(公式HP):https://graphisoft.com/jp/solutions/products/bimx
*9)BIMモデルをVRで見る! グラフィソフトのBIMxがまた進化:https://ken-it.world/it/2017/01/bimx-google-cardboard.html
*10)Revit Live is no longer available:https://www.autodesk.com/products/revit-live/overview
*11)RevitでVR (Virtual Reality)を使用する場合のオプションは何ですか?:https://knowledge.autodesk.com/ja/support/revit-products/learn-explore/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/What-are-the-options-for-using-VR-with-Revit.html
*12)VR for Architecture, Engineering, and Construction(公式HP):https://irisvr.com/
*13)建築デザイン向けのVRツールを開発するIrisVRが800万ドルを調達:https://jp.techcrunch.com/2016/10/27/20161025irisvr-series-a/
*14)IrisVR社がVRソフトウェア「Prospect」を発表:https://www.cadjapan.com/news/2017/d20170425_03.html

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