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新菱冷熱工業が取り組む体系的なBIM運用とは

BIM運用は比較的日本では新しい取り組みとされているため、まだまだ体系的な運用が進んでいないケースがほとんどです。しかし新菱冷熱工業では早い段階からBIMの効率的な運用を実践しており、自社のアピールポイントとして売り出している様子が見られます。

今回は、新菱冷熱工業がどのようなBIM運用を進めているのかについて、具体的に確認していきましょう。

①新菱冷熱工業の概要
②スペーススキャニングシステムについて
③スペースマネジメントについて
④環境シミュレーションについて
⑤維持管理(FM)について

新菱冷熱工業の概要

新菱冷熱工業は、空調、電気、給排水衛生など、環境エンジニアリングに関する事業を広く手掛けています。

事業内容について

同社は国内に66拠点を抱えているだけでなく、国外にも活動拠点を持ち、22の拠点を通じてグローバルな事業展開を進めています。半世紀もの海外事業経験と、冷暖房設備における強力なシェアを武器に、創業以来、65期連続の黒字を達成しています*1。

新菱BIMソリューションとは

そんな歴史と実績のある新菱冷熱工業では、近年BIMソリューションの提供にも力を入れています。30年以上にわたる3DCAD運用の経験を生かし、3次元建築設備CAD「DesignDraft」を全面採用することで、独自のソリューション展開を進めています*2。

建設業界における人材の不足、高品質、短納期のニーズ拡大、熟練技術者の減少、建築基準法改正など、様々な課題の解消においてBIMソリューションは多大な効果を発揮します。同社ではこの点に注目し、主に4つのBIMソリューションの提供を実施することで、顧客満足度の向上に努めます。

スペーススキャニングシステムについて

一つ目のBIMソリューションが、スペーススキャニングシステムです。

独自のCADソフト「S-CAD」を採用

新菱冷熱工業が強みとしているのが、独自のCADシステムである「S-CAD」の導入です。S-CADは3次元レーザースキャナにより取得した点群データを直接読み込み、正確に3次元モデル化、施設空間を把握し、改修計画などに活用できるというBIMツールです*3。

点群データを用いて空間を極めて正確に映像化し、空間の擬似体験やシミュレーションに活用可能です。

計測の仕組み

S-CADに活用している3Dレーザースキャナは、レーザーを走査しながら高速で連続計測を実施します。この働きによって周囲の形状を点群データ化し、対象物形状の複雑さにあわせて、計測ピッチの調整も可能です。1回あたり約5分で計測は完了するため、迅速に進められます。

スペースマネジメントについて

続いては、BIMを使ったスペースマネジメントについてです。

BIMを活用した見える化を実現

スペースマネジメントにおいても、独自システムであるS-CADが活躍しています。システムを通じて2D情報も含めて3Dに統合し、建築情報の一元化を実現します。専門家にしか理解しにくい図面も3Dに落とし込むことで、プロジェクトメンバーともイメージの共有が行いやすくなります*3。

スペースマネジメントの効果

スペースマネジメントを実施することで、空間を適切に把握できる環境が整い、情報共有の円滑化や、これまでになかった企画提案を生み出すことも可能になります。発注者およびプロジェクトメンバーと情報共有を図り、スムーズでスピーディな空間コーディネートを実現可能です。

環境シミュレーションについて

環境シミュレーションは、3次元情報から環境を予測するCFDシミュレーションを行うものです。CFDはComputational Fluid Dynamicsの略称で、流体の挙動をシミュレートし、竣工前の建物の検証精度を高めるために行われます*5。

BIMとCFDの連携ツール「S-Pre」を採用

CFDを実施する際、最も多くの負担が発生するのが、Pre作業と呼ばれるプロセスです。いわゆるデータ入力の工程ですが、この負担を軽量化するため、新菱冷熱工業が独自に導入しているのがCFD入力支援ツールの「S-Pre」です。「S-Pre」は3D-CADデータを活用して、計算メッシュの作成や日射の影響算出を自動化する機能を備えており、Pre作業の大部分を効率化する優れたツールです。

計算作業の負担軽減によって、時間短縮とコストの削減を実現します。

環境シミュレーションの具体例

環境シミュレーションを実施することで、様々な空間設計の課題解決に役立ちます。適切な室内温熱環境を調べるためのシミュレーションや、空調効果を計測し、省エネルギーな設計を実現したり、安全性に優れた工場環境を実現したりと、活用シーンは豊富です。

維持管理(FM)について

4つ目のBIMソリューションが維持管理、いわゆるファシリティマネジメントの分野です。

維持管理の目的

建築物の維持管理の重要性は高まっており、新たな建設物を施工するよりも、既存の建物のライフサイクルを改善することに注力する企業も増えてきています。適切な維持管理を実現することで、施設の生産性を向上させたり、コストの抑制・適正化につながり、経営効率が向上したりといった効果が期待できます。

維持管理の実現プロセス

新菱冷熱工業では、維持管理の実現プロセスにBIMデータを活用しています。維持管理システム(FMS)とBIMデータをシームレスに共有するシステムを構築することで、FMSの早期立ち上げや位置情報と維持管理情報の融合に寄与しています*6。

これまではFMSを運用する際、データは手入力で実施していたため、運用までのコストは大きく膨らんでいました。しかしBIMデータとの連携が実現したことで、設計・施工の際に使われたものと同様のデータをFMSへそのまま流用できるので、データ入力の作業は大きく削減し、効率化を実現できます。

「S-CAD」とのデータ共有も可能であるため、位置情報と維持管理の情報が融合し、FMSの運用だけでなく施設管理者の教育や更新工事にも活用可能です。

おわりに

新菱冷熱工業では幅広いBIM運用が進んでおり、自社独自のシステムも多数起用することで、相乗効果を高めることに成功しています。単体でのBIM運用ではなく、複数のシステムの中に組み込むことで、実践的な技術活用を進められるでしょう。

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*1 新菱冷熱工業
https://www.shinryo.com/1min/index.html
*2 新菱冷熱工業「BIMへの取り組み」
https://www.shinryo.com/tech/visualize_bim.html
*3 新菱冷熱工業「BIMソリューションズ1 スペーススキャニングシステム」
https://www.shinryo.com/tech/visualize_solution01.html
*4 新菱冷熱工業「BIMソリューションズ2スペースマネジメント」
https://www.shinryo.com/tech/visualize_solution02.html
*5 新菱冷熱工業「BIMソリューションズ3環境シミュレーション」
https://www.shinryo.com/tech/visualize_solution03.html
*6 新菱冷熱工業「BIMソリューションズ4維持管理 (ファシリティマネジメント)」
https://www.shinryo.com/tech/visualize_solution04.html

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