ゼンリンが「3D地図データ」で実現する次世代のCIMとは
地図情報会社として日本最大級の企業であるゼンリンは、3Dで日本の地形や都市の情報を形成した、「3D地図データ」と呼ばれるデータを提供しています。従来の3Dデータとは一線を画する性能を秘めているというこのデータは、従来の3Dデータとどのように異なるのでしょうか。
今回はゼンリンの「3D地図データ」の具体的な活用方法や、BIM/CIMへどのような影響を与えるのかについて、ご紹介します。
目次:
①ゼンリン「3D地図データ」とは
②DXF形式のデータ提供実現で得られるもの
③「3D地図データ」で実現する新しいCIM活用
ゼンリン「3D地図データ」とは
ゼンリンが公開している「3D地図データ」とは、主に建設・土木関連のプレゼンテーションを円滑に進めることを目的に開発された技術です。
従来の3Dデータに比べて圧倒的なディテールを備えているだけでなく、容易に細部まで情報共有を行えるということで、注目を集めています。
プレゼンテーションに最適化された地図データ
建設プロジェクトにおいて、重要なのが建築物と周辺環境の調和です。
その土地においての建築に自由は確保されているものの、周辺環境との調和なしに末永く利用される建物というのはあり得ません。古くから日照権の問題など、周辺住民との不合意によって多くのトラブルが生まれてきたものですが、こういった事態をうまく回避する上でも重要な技術となっています。
「3D地図データ」が得意とするのは、3Dによる質の高い景観作成です。建設予定の建物の3DCGを細部まで作り込むのは当たり前ですが、「3D地図データ」を活用することで、周囲の景観の3Dも圧倒的な造り込みを実現します。
入居予定者や周辺住民など、関係者への理解を促すとともに、その建物の資産価値を最大限まで高める働きをします。
BIM統合で高いコストパフォーマンスを実現
従来のプレゼンテーションなどで景観の作成に力が入らなかったのは、ディテールを詰めたCG作成は高いコストがかかるためです。人件費はもちろんのこと、作成には時間を要するため、プレゼンテーションのような現場で完成度の高い景観が用いられるケースは稀なものでした。
しかし「3D地図データ」は、ゼンリンの詳細地図情報と専用車両で計測したデータにより、実在する都市を忠実に3Dモデルへ落とし込むことに成功しています。建物の形状や質感、道路の交通標識や路面ペイントまで忠実に再現したデータは、国内21都市をカバーしています*1。
また、データの形成には従来の3D地図データとBIMを統合する技術が採用されており、高い汎用性を備えている点も特徴です。実在する都市のBIMデータはゼンリンのデータを活用することで、制作にかかる人件費や時間を大幅に短縮できる、驚きのコストパフォーマンスを実現します。
DXF形式のデータ提供実現で得られるもの
ゼンリンの「3D地図データ」は、2020年10月よりDXF形式でのデータ提供も開始しています*2。DXFデータとは、いわゆるCADソフトで扱う形式のデータのことを指しますが、これによって地図データの汎用性はさらに高まることとなりました。
高度なシミュレーションの実現
DXFデータ形式で「3D地図データ」を扱えるようになったことで、より高度なシミュレーションが都市レベルのスケールで可能になります。
建物の高度なシミュレーション実現する技術として、BIMは大きな役割を果たします。部材の情報がパーツごとに逐一内包されているため、現実と同様の挙動を、3D空間でも実現してくれるためです。
DXF形式の都市データ配布が開始されたことで、プロジェクトの建物だけでなく、その周辺の建物や空間を含めたシミュレーションが実現します。風速の変化や温度変化、人の流れや混雑など、あらゆるシミュレーションへの応用が可能です。
BIMデータでプロジェクト予定地とその周辺を再現するのは非常に時間のかかる取り組みでしたが、「3D地図データ」によってそれも解消されるでしょう。
多角的な視点を含めたプレゼンテーションも
また、プレゼンテーションを実施する上でもさらに多角的なアプローチでの情報共有が可能となるため、活用の機会は増加します。建物や道路は30種類以上のレイヤーに分かれて形成されているため、必要な箇所を適宜抜き出しながら活用するなど、ケースバイケースの運用を実現します*2。
プレゼンテーションの相手に応じて提示する3Dマップを柔軟に切り替え、情報の共有を円滑にするという使い方も可能です。
「3D地図データ」で実現する新しいCIM活用
ゼンリンの「3D地図データ」が登場したことによって、3D CADやBIMデータの可能性は大きく広がりました。規模の大きなモデリングが必要になった場合でも、「3D地図データ」を活用することで、迅速なプロジェクトの遂行が実現するためです。
BIM/CIM連携のデジタルツイン環境を実現
次世代のBIM/CIM活用のあり方として注目されているのが、デジタルツインです。デジタルツインとは、実在する建物や空間をBIMなどの技術でデジタル空間へ忠実に再現し、施工や保守点検、シミュレーションなどに活用しようという取り組みです。
デジタルツインが実現すれば、都市に最適化された建物の建設を実現したり、混雑や公害などのリスクを低減したり、IoTやAIによって都市の活動をコントロールできたりといった技術が実現します。いわゆるスマートシティと呼ばれるものです。
スマートシティが実現すれば、都市で発生する公害の抑制はもちろんのこと、人やモノの移動を最適化することで、経済活動やコミュニケーションをさらに活発化させられることが期待できます。徹底したシミュレーションにより、生活における安全面の向上も期待できるでしょう。
これまで、スマートシティは都市のデジタル化にかかるコストが莫大で、実験的な取り組みに止まっていました。「3D地図データ」が普及すれば、容易にデジタルツインを実現し、スマートシティ化を進められるでしょう。
ドライブシミュレーターなど建設以外の業種でも活躍
「3D地図データ」は建設分野での活躍が顕著ですが、実際にはそれ以外の業種における活躍も期待されています。
例えば正確に都市の交通網が再現されていることから、高度なドライブシミュレーターを実現し、自動運転技術の開発へ応用ができます。あるいはVR技術への応用など、さらなる映像コンテンツの刷新にもつながります。その活用方法は、まさに無限大のポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
おわりに
ゼンリンの「3D地図データ」は、単なる地図データにとどまらない多様な活用方法を備えています。デジタルツインや高度なシミュレーションの実現など、今後も多くの分野おにおいて活躍が期待できそうです。
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参考:
*1 ゼンリン「3D地図データ」
https://www.zenrin.co.jp/product/category/gis/contents/3d/index.html
*2 IoT News「ゼンリン、建設業界のBIM/CIMを支援する「ゼンリン3D地図データオンライン提供サービス」にて3D DXFデータを提供開始 」
https://iotnews.jp/archives/159878
*3 *1に同じ