月4万円〜全国住み放題のサブスク「ADDress」とは?サービス普及の課題を考察
次々と発表されて続けているサブスク型サービス、今回は定額制で全国住み放題というサービス内容が驚きの「ADDress(アドレス)」についてご紹介していきます。
この記事を読むと以下のことが分かります。
・全国住み放題のサブスク、「ADDress」のサービス内容
・ADDress普及の課題
・その他「ソーシャルグッド」な2つの事例
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全国住み放題のサブスク!「ADDress」とは
ADDressは、登録拠点なら日本全国どこでも住み放題になるサブスクリプション型の多拠点居住のシェアサービスです。サービスの利用手順は、年間or月間契約をする→会員専用サイトから利用したい拠点を予約する→拠点を利用する、という実にシンプルなもの。基本的にはどの拠点も個室+共有スペース(コワーキングスペース)という作りのため、拠点ごとの新たな出会いやそれぞれの地域との触れ合いもこのサービスの魅力の1つとなっています。
利用料金
こちらは年会員は月4万円・月会員の場合は月5万円(いずれも税別)という現実的な価格設定です。さらに、この利用料金には電気、ガス、水道、ネット回線料、予約されているベットなどの専有利用料金も含まれています。(キッチン、バス、トイレ、リビング、洗濯機等は共有スペース)
本記事執筆時点(2019/8/15)では新規会員の募集は行なっていないということですが、運営会社の株式会社アドレスは2019年7月9日~2019年8月20日まで、CAMPFIREにて新たな拠点開発と会員増枠を目的としたクラウドファウンディングを実施しています。200万円の目標金額に対し、本記事執筆時点で500万円を超える支援金が集まっていることから、新規会員の再募集もそう遠くないように思えます。
参考・引用:ADDress公式サイト
参考:【今夏続々オープン】定額全国住み放題ADDressの拠点開発本格始動&会員増枠!
拠点紹介
そんな勢いの止まらないADDressですが、本記事執筆時点では南房総、鎌倉、千葉県一宮、南伊豆、群馬県長野原、福井県美浜、徳島県美馬、徳島県三好、鳥取県岩美、東京上原、東京西品川、山梨県南部の12拠点の予約が可能となっています。
画像引用:ADDress公式サイト
公式サイトでは、上の写真のように一部拠点を写真つきで確認することができます。ちなみに、こちらの鎌倉の物件はガーデニングが楽しめる広い庭園がついていたり、リビングにはプロジェクタも設定されているそうです。その他にもウッドデッキ付きの拠点や杉風呂付きの拠点など、その選択肢はバラエティに富んでいます。
サービス誕生の背景
画期的なサービス形態のADDressですが、提供の株式会社アドレスは本サービスにより空き家問題の解決と、若者の地方への柔軟な居住の受け皿を広げたいと考えているようです。空き家の増加は社会問題となっており、平成27年に発表された「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)では、空き家数は820万戸で全国の住戸の13.5%を占め、過去最高となりました。
参考:空き家問題の原因は?深刻化する理由とリスク・解決策について
また、もう1つのキーワードである「若者の地方への柔軟な移住」が可能になれば、地方の人口減少や働き手不足にも貢献できることが考えられます。
画像引用:総務省HP
上の図から分かるように、三大都市圏への転出入は上昇の一途を辿っているのに対し、地方圏への転出入はここ数年で減少し続けています。相対的に、地方は賃金や安定性、やりがいなどの点で雇用が不足していることから、若者は良質な雇用を求めて三大都市圏に流出していると考えられています。地方の人口減少により地方経済に悪影響が及ぼされることからも、大都市圏からのUターン・Iターンなどによる人口流入が求められているのです。
参考:人口減少社会の課題と将来推計
ADDress普及の課題を考察してみた
手頃な価格で好きな場所を生活拠点にできることは魅力的ですが、それは「どこにいても仕事ができること」が前提にあります。昨今ではフリーランスとして活躍している若い世代も多いと言われていますが、一企業に勤める私のようなサラリーマンやOLにとっては、どうしてもまだ現実的な選択と思えない感が拭えません。場所にとらわれない働き方の実現には、企業単位でのリモートワークやテレワーク制度などの充実が必須ですが、その普及度の実情はどのようなものなのでしょうか。
画像引用:総務省HP
上の図は総務省による通信利用動向調査の結果を表したものですが、2017年度のテレワーク普及率は全体の13%とまだまだ少ない印象です。
別のデータ(IDC Japanが実施した国内テレワーク導入率に関する調査)では、2017年の推計を企業規模別に見ると従業員が499人以下の中堅中小企業のテレワーク導入率は2017年で4.7%、同500人以上の大企業では23.6%という結果になったそうです。
参考:国内テレワーク導入率、2017年は14万社と推計され、2022年には29万社になると予測――IDC発表
2020年の東京オリンピックに向けて、いたる企業でテレワーク拡充を目指す動きを耳にしますが、その普及は順風満帆には進みそうにありません。
テレワークが普及しない理由としては「上司がマネジメントの方法を変えられない」「在宅だと”働き過ぎてしまう”問題」などが挙げられるそうですが、個人的には「タスクの見える化」が社員レベルで可能にならない限りテレワークの普及は難しいのではないかという印象です。「上司がマネジメントの方法を変えられない」に通ずる話でもありますが、社員一人一人が抱えるタスクの進捗管理を「対面で」できなくなってしまう以上、それ(対面)に変わるタスク管理の手段が必須です。タスク管理ツールなどを上手に活用することでテレワークの普及が進めば、「今週は鎌倉で仕事します!」なんてことが可能になるかもしれませんね。
参考:希望は多くても在宅勤務が普及しない理由
「ソーシャルグッド」なその他の事例紹介
最後に、ADDress以外の「社会問題の解決を果たすサービス」をご紹介します。
米国ではWebサービスの潮流を表すひとつの言葉として、「ソーシャルグッド(Social Good)」という言葉が広まってきているようで、ソーシャルグッドとは「社会的課題をソーシャルとITの力によって解決」することを指します。
また、成功するサービスの共通点として「そのサービスが何らかの社会問題を解決できること」が挙げられるという話も耳にしたことがありますが、まさに、今回ご紹介したADDressも例外に漏れず社会問題の解決とビジネスを両立させようとしています。以下に、類似のビジネスモデルを展開するサービスをまとめました。
b-box
社会的課題:ハチの激減
解決方法 :誰もが簡単かつ安全にハチを飼育できる巣箱を家庭に設置
b-boxはイタリアのbeeingという会社が設計した巣箱で、家のベランダや庭などに誰でも安全に設置できることが特徴です。b-boxはクラウドファンディングサイトのIndiegogoで2019年8月8日時点で目標金額を大きく上回る2,600万円を調達しており、2019年11月の商品出荷を予定しています。国連環境計画(UNEP)の調査によると、1990年代後半からハチの数は世界的に激減しているといい、欧州ではミツバチの10~30%、米国では30%、中東では85%が死に絶えたました。その原因は農薬、環境破壊、養蜂家の減少、花の咲く植物の減少など様々な可能性が指摘されており、このb-boxによりハチの激減を食い止められることが期待されています。
・公式サイト
参照:ハチ激減をストップ。都会の自宅でできたての蜂蜜を収穫できる「b-box」
Clean air in a box
社会的課題:深刻な大気汚染
解決方法 :手軽に作れる空気清浄機を配布
深刻化する大気汚染問題。中国では特にPM2.5による大気汚染が進み、日本でもスモッグで真っ白になった光景が度々報道されました。この社会問題を改善しようと活動を進めている企業のひとつがフォルクスワーゲンで、同社は車から排出される温室効果ガスを減らす取り組みに力を注いでいます。市民にはなかなか手の届かない高額な空気清浄機を、わずか3つの材料で自作しよう!という同社の取り組みでは、小型の扇風機、車に使われるエアフィルター、丸く穴の開いたタンボールの3つの材料がひとつになった小箱が中国の小学校などに送られます。簡易的な作りではありますが、作成された空気清浄機で教室内のPM2.5の数値を空気清浄機を作る前としばらく空気清浄機を稼働した後で比べてみると、その差は歴然だったということです。子供たちの健康を守ることはもちろん、環境保護の大切さを身をもって学べるこのプロジェクトは今後中国の他の学校にも広げていく予定だということです。
参照:深刻な大気汚染から中国の子供たちを守るフォルクスワーゲンの試み『Clean air in a box』
まとめ
今回は、全国住み放題のサブスク「ADDress(アドレス)」のサービス内容と、サービス普及の課題として考えられる問題、そして最後にADDress同様に社会問題の改善を目指す「ソーシャルグッド」なサービスの事例をご紹介しました。世界中に存在するどのサービスも誰かの課題を改善していることは考えてみれば当然なのですが、改めて「社会問題の改善」という大きなテーマに取り組む企業の着眼点の鋭さに驚かされました。ADDressに限らず、サービスの普及には関連する様々な課題の改善が必要です。”社会問題を改善しようと考えると、他にも改善が必要な別の事象に気が付く”ものなのですね。
ADDress普及の課題はテレワークの拡充以外にもあるかと思いますが、昨今の働き方改革ムーブメントがADDressにとって大きな追い風になることは間違い無いのではないでしょうか。
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