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AIブームを生んだIBMのワトソン、今や多くの日本企業が導入している事例とは

現在のAIブームを作ったのはIBMのワトソンである、とご存知でしたか?2011年アメリカのクイズ番組でコンピューターが人間に勝利したのが、人工知能が注目されるきっかけとなりました。それから、進化、発展したAIワトソンは今や多くの日本企業が活用しています。

2011年2月16日がAIにとって歴史的な日

この日、アメリカのクイズ番組「ジョパティ」に全米が注目しましaた。IBMが開発したコンピューターが番組に出場し、人間に挑戦したのです。コンピューターにはIBMリサーチが4年にわたって研究してきた質問応答システム「ワトソン」が搭載されていました。
ワトソンは2ゲームで人間を退け、最高金額100万ドルを獲得しました。IBMは賞金全額を慈善事業に寄付しています。

歴史、文学、科学など広いジャンルのクイズ番組

人気のクイズ番組「ジョパティ」は幅広い知識を求められています。回答者は短時間の内に正確な回答を出さなければなりませんが、質問の文章には微妙な意味、風刺や謎かけなど複雑なニュアンスが含まれており、自然言語を正確に理解するのが苦手なコンピューターには難しいと言われていました。
IBMは自然言語処理技術を進化させるため、質問応答技術を向上させるよう設計されました。複雑な質問に対応するため、約100万冊の本を読むのに相当する自然言語で書かれた情報を分析し、短時間で最も適した回答を導くコンピューターシステムがワトソンでした。

テクノロジーの画期的開発

ワトソンの完成のためにシステム設計と分析技術が開発されました。複雑な質問の文章を瞬時に解析して正しい答えを導くために、ワトソンは同時に大量のタスクを処理できるようIBMのPOWER7サーバーで最適化されました。
情報分析と同時に莫大な量の並列タスクとデータを処理するため、独自の技術が多く採用されたほか、IBM POWER750サーバーのラック10本分、総メモリー容量1TB、総プロセッサー・コア数2880個で構成され、インターネットには接続されていない自己完結したシステムとして完成されたのです。
ワトソン・プロジェクトは自然言語処理だけではなく、非構造データ分析、ワークロード最適化などの進化をさせました。さらに医療診断支援、弁護士や裁判官による過去の判例参照、金融分野などへと応用されてゆきました。
まさしく2011年2月16日をきっかけに、AIが人間社会に幅広く浸透していったのです。

IBMの考えるAIとは

AIは一般的に人工知能(Artificial Intelligence)の略とされますが、IBMでは人間の知識を拡張・増幅するもの(Augmented Intelligence)と定義しています。つまり、AIは人間にとって代わるものではなく、人間の知識や知見を拡張し、増強してくれるもの、と捉えています。
IBMは1980年代から自然言語処理や複数プロセッサでタスク処理をする並列処理の研究を始めていました。これらの成果がワトソンでAIの可能性を示したことで多種多様な業界の企業と実証試験を繰り返し、今では多くの企業で当たり前のようにワトソンが起動しています。
ワトソンの優れた3点は、学習して人間本来のやりとりに近づけた質問応答システム、論理的な推論だけではない状況に応じた細かい判断、自然言語の言い回しの多様性に対応できることです。

日本でも多くの企業がワトソンを利用

ワトソンは膨大な情報からニーズにあった知見をえり分けるAIプラットホームです。現代は生活、社会構造が日々変わっていますが、ワトソンはIoT、モバイル、ソーシャルネットワークによって生み出される情報から新しい知識を学び、ユーザー毎の最適化された情報を提供するインテリジェンスを蓄積しています。
日本でも交通、保険、小売り、教育、製造など25以上の業種で活用され、既存のビジネスから新しいビジネスを構築するために取り組んでいます。

気象データから生まれるビジネス

IBMグループであるThe Weather Company(米ジョージア州アトランタ)は、日本における気象データをユーザー別に供給することで、ビジネスの支援をしています。メディアへはテレビやオンラインメディア、モバイルまでさまざまなサービスを提供しています。
精度の高い航空業界向け気象データを発信し、飛行に関する意思決定や運航と安全の効率化を計れるよう、航空に携わる企業を支援します。
太陽光発電や風力発電などのエネルギー産業従事者へ日照時間の推移、風速の細かな変化を伝えることで、エネルギーの産出量を計算し経営の指針とすることができます。

通販サイトへのサポート

無添加化粧品、健康食品を扱うファンケル(本社横浜)の通販サイトで、顧客がサイト上の操作を間違ったり、よく分からないといったクレームの処理について問題の分析が進まない事象が起こっていました。
通販サイトの問い合わせ対応の時間短縮とオンライン上で発生したトラブルの原因究明のため、ワトソンはサイト上の行動を可視化するツールを提供しました。日常ではエラーが発生した案件、顧客が途中で離脱してしまったケースを、社内メンバーが検討することで、通販サイトの改善に取り組んでいます。

クライアント管理の効率化

とぴあ浜松農業協同組合(JAとぴあ浜松)では、クライアント管理のため全拠点合計端末が700台、約1600名のユーザー登録、同時利用1000人のユーザーのライセンス契約をして利用してきました。ところが、同時利用ユーザー数がライセンスの上限に近づくと、ストレージの負荷が高まり、業務に支障が発生するようになりました。
システムの使い勝手は組合員からも好評だったので、バージョンアップして利用することにしてライセンス数上限を1500まで増強、ストレージの仕組みを大幅に見直し、オールフラッシュストレージと高速分散ファイルシステムを採用しました。
稼働後はシステム負荷を80%削減し、バックアップも短時間になり、システム運用管理の負荷が軽減することで、目に見えない運用コストの削減が図れました。
これらはワトソンによって、企業担当者と協議することで生まれたものです。

企業が陥っているトラブルには、なかなか内部の人間には客観的な分析ができない事象があります。ワトソンは多くの企業の問題点のデータを学習しながら、これらの解決策としてそれらの企業にあった解析を提供します。まさしく人間にとって代わるAIではなく、人間活動を幅広くするAIとして役立っています。

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