建設業界の夢・スマートシティ
はじめに
近年「スマートシティ」が注目されており、世界中の都市が実現に向けて動き出しています。少子高齢化を始めとした多くの課題を抱えている日本も例外ではありません。スマートシティがなぜ必要なのか、実際にどのような取り組みがされているかなどをお伝えしたいと思います。(注1)
スマートシティとは
スマートシティとは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」であると、国土交通省は定義しています。(注1)
ICT等の技術を活用することで、都市の様々なデータを収集・統合・分析し、利便性・快適性向上を目指すことを目的としています。
スマートシティが注目される理由として、急速な都市への人口集中が挙げられます。その結果都市によるエネルギーの消費が温室効果ガスの60~70%を排出していると言われており、都市部の効率的なエネルギー使用は急務であると言えます。(注2)その他にも交通渋滞・環境悪化・犯罪増加・労働力不足などが問題となっていて、これらの課題を解決するためにIoTやセンサ、ビッグデータのを始めとした技術を活用するスマートシティに期待が寄せられています。人々の暮らしが便利になるだけでなく環境問題の改善にも繋がります。
海外事例
海外ではGoogleやアリババなど様々な企業がスマートシティの事業化を進めています。事例は多数ありますが、今回はスマートシティ海外事例10選【2020年最新版】からいくつかご紹介したいと思います。
・ニューヨーク
2016年に「Smart City Expo World Congress」でベスト・スマートシティとして表彰されたスマートシティ先進地域です。市民によるデータ活用を後押しするオープンデータ法が制定されています。また、公衆電話を無料のWi-Fiのホットスポットへと変えるプロジェクトも存在し、地域の課題解決に役立つと期待されています。
・コロンバス
全米で最も先進的なモビリティ構想を持つ都市を選出するコンテスト「スマートシティ・チャレンジ」で優勝し、その資金で2017年「Smart Columbus」プロジェクトをスタートさせました。このプロジェクトは中小規模都市のスマートシティのモデルケースとして全米各都市への展開が期待されています。
・マンチェスター
スマートシティの促進に力を入れていて、2025年までに世界のスマートシティTop20に入ることを目標としています。過去には「医療・健康」「輸送・交通」「エネルギー・環境」「文化・コミュニティ」の4領域に特化した実証実験が行われました。
・ドバイ
UAEのドバイ政府は2014年、UAE第二の中心都市であるドバイをスマートシティ化するための2021年までのロードマップを発表しました。世界一のスマートシティを目指しており、都市全体をICTインフラで整備し、官民問わずあらゆる情報をインターネット上で利用できる「スマートシティ化」による都市の活性化を急速に促進しています。
スマートシティランキング
2019年10月、スイスのビジネススクールのIMD World Competitiveness Centre は、スマートシティランキング「IMD Smart City Index 2019」を発表しました。こ のランキングは今回初めて発表されたもので、世界の主要 102都市を対象に、都 市インフラや市民へのサービス提供などに対しての先端技術の活用度やその効果を数値化して評価したものです。(注3)
1位 シンガポール
2位 チューリッヒ(スイス)
3位 オスロ(ノルウェー)
4位 ジュネーブ(スイス)
5位 コペンハーゲン(デンマーク)
主に欧米の都市が上位を占めている中、シンガポールが1位という結果になりました。日本では東京が62位、大阪が63位となっており、これから上位進出に期待が掛かります。
国内事例
世界ランキングでは上位とは言えない結果となってしまいましたが、国内でもスマートシティ計画が進んでいます。スマートシティ国内事例10選【2020年最新版】からいくつかご紹介したいと思います。
・静岡県裾野市「トヨタ ウーブン・シティ」
CMでも話題のトヨタが発表したプロジェクトです。トヨタ従業員やプロジェクト関係者など約2,000人が暮すことを想定しています。自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能などの人々の暮らしを支えるあらゆる技術の導入・検証ができる実証都市をリアルな環境のもと作ることが目的とされています。
・東京都港区「ソフトバンクによるスマートシティ実証実験」
ソフトバンクと東急不動産による実証実験が計画されています。都市再生への貢献や産業振興などを目的として、共同で街づくりに取り組むことを発表しています。竹芝地区でデータ活用やスマートビルの構築、ロボティクスやモビリティ、AR・VR、5G、ドローンなどの幅広い領域でテクノロジーの検証を行う計画です。
その他に国内では千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」や北海道札幌市の「DATA-SMART CITY SAPPORO」、香川県高松市「スマートシティたかまつ」など各地で計画が進んでいます。
まとめ
今回はスマートシティとはなにか、国内外のスマートシティについて紹介しました。私たち人間の生活が便利になるだけではなく、医療や犯罪防止、環境問題のためにスマートシティ計画は今後進んでいきます。まだ日本は世界ランキング上位ではありませんが、今後日本政府・省庁・自治体・企業などが取り組み発展していくでしょう。
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参考文献
注1 国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000040.html
注2 スマートシティ国内事例10選【2020年最新版】
https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/technology/smartcity_20200331_1/
注3 スマートシティ海外事例10選【2020年最新版】
https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/technology/smartcity_20200331_2/
注4 初めて発表された世界のスマートシティランキング
https://arc.asahi-kasei.co.jp/member/watching/pdf/w_304-05.pdf