なぜGoogleは「Stadia」から自社ゲーム開発を撤退したのか?調べてみました
2021年2月1日、Googleが自社ゲーム開発から撤退するというニュースが報じられました。Googleが自作ゲームをリリースしていたのは、日本未上陸の「Stadia」と呼ばれるストリーミングゲームサービスです。「Stadia」とはいったい何なのでしょうか。なぜGoogleはゲーム開発から撤退することになったのでしょうか。この記事を読めば以下のことが分かります。
① 「Staida」とは
② なぜゲーム開発から撤退したのか
③ ゲーム開発に必要なコスト
「Stadia」とは
「Stadia」とはGoogleが運営しているストリーミングゲームサービスのことです。ストリーミングゲームサービスとは、ゲームのダウンロードをしたり、ゲームソフトを買ってこなくてもオンライン上でゲームをプレイできるサービスです。YouTubeがインターネットに繋がっているとダウンロードしなくても動画が見られるように、「Stadia」もインターネットに繋がっている端末はダウンロードしなくてもゲームを遊べます。
「Stadia」の凄い点は、ゲームの処理をGoogleのサーバーで行うためゲーム端末の性能によらずにさまざまなゲームをプレイできる所にあります。今まではゲームで遊ぼうと思っても、端末の性能や種類によって遊べるゲームに制限がかかっていました。しかし「Stadia」は違います。Googleが用意した高性能なサーバーを使うことで、低性能の端末でも負荷を感じることなく遊ぶことができます。それだけでなく、Google Chromeにアクセスできる端末があればパソコンでもスマホでも端末を問わずにゲームをプレイできます。これがストリーミングゲームサービスである「Stadia」の利点なのです。
それに加えてゲームプレイ時の画質も優れています。最大で4K/60fpsという高画質でプレイできます[1]。4Kに聞き覚えがある方がいても「fps」という言葉にはなじみのない方が多いと思います。「fps」とはフレームレートのことを指し、「frame per second」を略した言葉です。これは1秒あたりにどれだけ多くの画像を表示しているかを表す言葉で、60fpsなら1秒間に60枚の画像で動画にしています。これによって、滑らかな映像体験を得ることができるのです。
またGoogleがリリースしたということもあって、他のサービスとの連携機能も優れています。「Stadia」はYouTubeと連携しており、YouTubeでゲームのプレイ映像やデモ映像を見た時に、動画のリンクをクリックすることですぐにゲームをプレイできます[2]。また、ゲームデータを共有することもでき、他の人が途中までプレイしたゲームデータを引き継げます。「Stadia」はYouTubeと連携していることもあって、専用のゲームコントローラーについているボタンを押すと簡単にYouTubeでライブ配信を行えます。
しかし、「Stadia」はメリットばかりということではありません。インターネット上でゲームをプレイするということは、ゲーム自体のデータを端末に保有しないということなので「Stadia」のサービスが終了したときにプレイできません。また、ゲームの配信が何らかの理由で中断されたときも、同様です。このように「Stadia」にもデメリットは存在します。
ここからはどうしてGoogleは自社ゲーム開発を撤退することに決めたのか、見ていきましょう。
なぜGoogleはゲーム開発から撤退したのか
Googleは2月1日(米国時間)、ゲームストリーミングサービス「Stadia」のために自社に設置していたゲーム開発スタジオを閉鎖すると発表しました[2]。これはあくまでも、ゲーム開発からの撤退であり、「Stadia」を閉鎖するというわけではありません。Googleはこれから、自作ゲームを開発してリリースするのではなく、プラットフォームとしての「Stadia」を続けていくようです。
なぜこうなったのでしょうか。Googleは「クラス最高のゲームをゼロからつくるには、何年もの時間、多大な投資が必要であり、コストが指数関数的に上昇してしまう[3]」と、言っています。
ゲーム開発に必要なコスト
ゲーム開発は規模によってコストが大きく異なりますが、今回はGoogleの言葉にでてきた「クラス最高のゲーム」の開発費を見ていきたいと思います。「クラス最高のゲーム」ですが、これはゲーム業界では「AAAタイトル」と呼ばれます。現在、このAAAタイトルの開発に必要な開発費は8000万ドルから1億5000ドルであると言われています[4]。
平均してそれだけのコストになるということは、当然それを超えるものも存在します。例えば「グランド・セフト・オートV」の開発費は2憶6500万ドルであり、日本円にして約264億円ほどです。この開発コストはハリウッド映画を超えている[5]と言われてます。
このようにAAAタイトルの開発には莫大なコストが必要です。これは私の推測ですが、Googleは莫大なコストとゲームの売り上げが割に合わないと判断し、自作ゲーム開発から撤退したのだと考えられます。
「Stadia」のアプリはリリースから二週間で17万5千ダウンロードを記録しています[6]。ですが、これでは到底ゲームの制作費を補うことはできません。
「Stadia」には3ヵ月9.99ドルの有料プランと無料プランの2つのプランがありますが、もしアプリをダウンロードした全員が有料プランで契約してもAAAタイトルの制作費である8000万ドルを1年間の売り上げで確保する場合200万ダウンロードが必要です。
ただし、これは売り上げだけの数字を見た場合ですので実際にゲーム開発に使える8000万ドルを確保する場合、200万以上のダウンロードが必要です。また、全員が有料プランで契約するとは考えられないため、AAAタイトルの製作コストを「Stadia」だけで確保しようとする場合必要数はさらに増えます。
またそれだけの資金を確保できても、8000万ドルはAAAタイトルの中でも低コストなのでゲームの内容によって製作費はそれ以上になる可能性があります。これらから、AAAタイトルの製作費の高さが原因でGoogleが「Stadia」からの自社ゲーム開発から撤退したと考えられます。
最後に
Googleは自作ゲーム開発からは撤退しましたが、プラットフォームとしての「Stadia」は続けていく方針です。まだ日本には上陸していない「Stadia」ですが、ゲームの新しい在り方なので日本でリリースされた際にぜひプレイしてみてはいかがでしょうか。
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参考
[1]https://support.google.com/stadia/answer/9338946?hl=en
[2] https://stadia.dev/blog/the-magic-of-state-share-explained/
[3] https://news.mynavi.jp/article/20210202-1686099/
[4] https://www.gamespark.jp/article/2020/06/24/100086.html
[5] https://www.4gamer.net/games/036/G003691/20191214004/
[6]https://wccftech.com/google-stadia-app-got-downloaded-over-175k-times-in-the-first-two-weeks/