Googleが採用、ファーストプライスオークションの仕組み
平成から令和になりました。スマホの普及もあってWebサイトがかつてないほど増加し、いつでも誰でもWebニュースや様々なWeb記事を目にする機会が増えています。そんなWebユーザーにさりげなくしかし確実に見てもらえる、Webサイトに表示する広告を「プログラマティック広告」と言います。2019年3月、この広告取引のプラットフォームであるGoogle Ad Managerのプログラマティック広告オークションが、ファーストプライスオークション制へ移行することが発表されました。今回は、このファーストプライスオークションについて紹介します。
この記事でわかることは以下の3点です。
1.今までの業界標準であったセカンドプライスオークションの仕組み
2.対するファーストプライスオークションの仕組み
3.オークションで有利になるための戦略
まずは予備知識、プログラマティック広告の仕組み
プログラマティック広告とは、Web媒体で主にコンテンツの右側の欄外などに表示される、その媒体外の情報が載っている広告です。プログラマティック広告は、誰でも参加できるオープンオークションの形式で売買されているものがあります。オークション形式では広告主と媒体側が個別に価格交渉をするのではなくオークションで広告枠の落札ができるシステムが採用されています。
そうしたオークション形式の広告枠に対する入札は、GoogleやAmazon、Yahoo!などの大手企業はじめ、さまざまな業者がプラットフォームを提供し、媒体と広告主が広く参加しやすくなっています。
昨今のWebサイトの爆発的増加により、いちいちサイトに広告を埋め込んでから公開するのは媒体側にとって大変な手間となります。そのため、アドサーバーと呼ばれる広告配信サーバーが用意され、媒体側が用意した広告枠に自動的に広告配信がなされるようになっています。オークションも、そうしたサーバー群から成るシステムにより、ユーザーがWebサイトを訪問した瞬間に広告枠の入札が自動で行われ、落札者の広告が自動で埋め込まれて表示される仕組みとなっているのです。
セカンドプライスオークションとは?
2019年現在のプログラマティック広告取引においては、セカンドプライスオークションが標準として採用されています。最初に「セカンドプライスオークション」がどういう仕組みなのか整理してみましょう。
セカンドプライスオークションの仕組み
セカンドプライスオークションとは、以下のように価格が決まる形式のことを指します。
【オークションのやり方】
媒体側の広告枠に対し、広告主側は入札金額を提示する
【入札金額と落札者の決定】
A社が10万円、B社が11万円、C社が15万円であった場合はC者が落札者となる
【落札金額の決定】
この場合、広告の価格は1番目に高いC社提示の15万円ではなく、2番目に高いB社の提示額の11万円(プラットフォームにより、この価格にプラス1円など少し上乗せした価格となる)となり、C社はその金額を支払って該当する広告を購入する
セカンドプライスオークションでは、ヤフオク!などの一般ユーザーが手持ちの品を売り買いするオークションとは異なり、2番目に高い価格を提示した広告主の金額(上記のケースにより少し上乗せした金額)が実際の価格となります。
業界はファーストプライスオークションに移行しつつある?
こうしたちょっと複雑なセカンドプライスオークションが標準採用されていた理由は何でしょうか。
この形式では、より相場に近い価格での安定した売買とすることができるというメリットがあります。もし広告主側が相場を読み違えて高すぎる金額を提示してしまっても、そのままの不釣り合いな金額を支払わずに済みます。
また、支払額がセカンドプライスであることの安心感から、広告主のチャレンジングな入札姿勢を誘発して入札額が高くなるという説もあり、媒体側にとっても良いモデルだとして採用されていたという背景がありました。
しかし、オークションのモデルが複雑であることを利用し金額操作を行うプラットフォーム業者の増加や、オークション自体の増加によって広告枠の評価が複雑になりすぎてしまったことなど、デメリットが指摘されるようになりました。
そして、より透明性の高いファーストプライスオークションへの移行を期待する声が少しずつ出てきているのです。
ファーストプライスオークションとは
ファーストプライスオークションの仕組み
では、その「ファーストプライスオークション」とはどういう仕組みなのか整理してみましょう。
ファーストプライスオークションとは、以下のように価格が決まる形式のことを指します。
【オークションのやり方】
媒体側の広告枠に対し、広告主側は入札金額を提示する
【入札金額と落札者の決定】
A社が10万円、B社が11万円、C社が15万円であった場合はC者が落札者となる
【落札金額の決定】
この場合、広告の価格は1番目に高いC社提示の15万円となり、C社は15万円を支払って該当する広告を購入する
以上のように、非常にシンプルな過程で落札金額が決まります。ファーストプライスオークションでは、このシンプルなシステムにより取引の透明性が保たれるというメリットがあります。
プログラマティック広告の取引業界では、まだセカンドプライスオークションのシステムが多く、既存システムの移行にコスト面など課題があることからファーストプライスオークションへの移行はまだ一部企業で行われているのみとなっています。
オークションに有利になるための戦略
では、落札者側に立ってみてこうしたオークションでより安くそしてより確実に落札するための戦略とはどういうものでしょうか?
オークションのように、他人(この場合は入札を行う競合他社)の行動と関連した自分の行動や利益の結果を数学的に考察する理論を「ゲーム理論」といいます。ゲーム理論の観点から、ざっくりと戦略を考えてみましょう。
ファーストプライスオークションでもセカンドプライスオークションでも、「他社よりも高い金額で入札する」ことで落札できます。ですが、なるべく安く手に入れたいので、「他社よりもほんの少しだけ高い金額で落札する」ことが最善の結果ですよね。
いったいどうすればこの最善の手を打つことができるのでしょうか?
ゲーム理論で考えるセカンドプライスオークション
セカンドプライスオークションでは、自分の評価額と同等の金額を入札することが最適な戦略だといわれています。ざっくりいえば、他社より高い金額を提示すれば落札できるので、その広告枠に対して自身で行った評価額を正直に入札し、それが一番高かった場合はそれよりも安い価格で購入できるのでお得となるわけです。(自分の評価額を上回る入札者が他にいた場合は落札で負けるのでもともと縁がなかったものとあきらめられますよね。)自分が評価した金額まで支払うという意思表明により、最善の手が打てるということです。
ゲーム理論で考えるファーストプライスオークション
ファーストプライスオークションでは、入札側はもう少し複雑に戦略を考える必要があります。自分の評価額を正直に入札したところで、もしその価格が相場より高かった場合は、結果的に損をしてしまうことになります。かといって、評価額より低い金額を入札すると、もし他社が自分の入札額よりわずかに高い金額を入札していた場合は、評価が適正にできていたとしても落札で負けてしまいます。
ファーストプライスオークションでは、他社の入札金額がわからないため「ほんの少しだけ高い金額」がわかりません。しかし、自分の評価額が1番高いと仮定したうえで「2番目に高い評価額より少し高い金額」を考えて入札することが求められます。つまり、自分の評価額よりも少し低い金額を入札することが最善なのです。どのくらい低くするかは一概には言えず、相場の調査や評価の精度を上げるなどの努力を行うしかありません。
まとめ
・ファーストプライスオークションとは1番高い入札額を出した人がその金額で落札できる
・セカンドプライスオークションとは1番高い入札額を出した人が2番目に高い入札額で落札できる
・プログラマティック広告取引ではGoogle Ad Managerの移行表明に表されるように徐々にファーストプライスオークションへの移行の兆しが垣間見える
・ファーストプライスオークションでの最善の手は「自分の評価額よりも少し低い金額を考える」こと(それがちょっと難しい)
入札額を高くすれば落札できる確率が上がりますが、落札した後の利益は減ります。そして入札額を下げれば、落札できる確率が下がります。こうした入札側のジレンマはありますが、公平でクリアーな市場への移行へ過渡期が始まっているようです。
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