国交省も推進するスマートシティの市場規模について
都市開発の分野で、近年話題になっているのがスマートシティです。
現代の都市においては、公害や人口の過密、交通渋滞など、多くの課題を背負っており、それらの問題を個別に解決することは難しくなっています。
そこで誕生したのがスマートシティという考え方です。
特定の問題に対処するのではなく、街を丸ごとイノベーションすることで、問題解決に繋げていこうというアプローチを特徴としています。
今回は国土交通省も注目する、そんなスマートシティ化についての概要や、現在の市場規模などについて、ご紹介していきます。
目次:
① 国交省も推進するスマートシティ
② 市場規模は向こう数年で大きな拡大が予想される
③ 持続可能な社会の実現に貢献
スマートシティとは
スマートシティとは、IoTを基軸としたインフラの管理と、公共サービスの提供が行き届いた都市のあり方を指しています。
分野横断型の環境構築
各国における都市への人口の集中は非常に顕著で、都市の過密化、地方の過疎化は日本においても大きな問題の一つとなっています。
東京のように、極度に過密化が進んだ都市においては、効率よく人々を管理し、効果的なサービスの提供を進めていく必要があります。
例えば感染症の影響により、短期間に多くの人が病院へと押しかけてしまえば、病院はたちまちパンク状態となり、医療サービスを適切に届けることができません。
また、病院に向かう道中で公共の交通機関を利用すると、感染症の疑いのある人物が密度の高い場所を移動し、さらに多くの感染者を出してしまうリスクも生まれます。
こういった事態において、感染リスクを抑え、効率よく医療サービスを患者に提供する環境を創出するのが、スマートシティです。
スマートシティは、IoTやAI、ビッグデータを活用し、交通から医療、エネルギーなど、あらゆる業種のシステムを連携し、効率よく人を動かしていく仕組みを有します。
先の例を挙げれば、患者の位置情報を把握し、最も感染リスクの低い交通手段と時間帯を提示し、病院に来てもらうといったことがスマートシティでは可能になります。
生活をする上でのあらゆるデータが連動することで、低リスクで効率の良いライフスタイルの構築が、実現するわけです。
持続可能社会の形成にも力を入れる
スマートシティが目指すのは、効率よく社会が回るシステムの構築だけでなく、サステナビリティにも配慮した社会の実現です。
誰もいないビルに電力を供給し、乗客のいないバスや電車を走らせておくことは、エコフレンドリーとは言えません。
エネルギーを本当に必要とする人や組織に必要なだけ供給し、EVカーの導入など、化石燃料消費からの脱却も目指すのが理想のスマートシティです。
エネルギー効率の良い都市のあり方は、すなわち環境に優しく、末長く人が生活できる場の実現にも欠かせない要素なのです。
大きな拡大が期待されるスマートシティの市場規模
次世代の都市のあり方を示すスマートシティは、世界中で注目を集めているキーワードでもあります。
その注目度は、スマートシティを取り巻く市場の大きな成長が予測されていることからも、うかがうことができます。
世界市場は20兆円を超える試算も
リサーチ会社であるIDC Japanの発表によると、スマートシティに関わる支出額は2023年に1895億ドル、日本円にして20兆円を超える額になるという試算があります*1。
内訳として、エネルギーとインフラの改善、データ駆動型の公共安全確保、インテリジェントな輸送が優先分野となっており、支出額の半分以上を占めると言われています。
抜本的な都市システムの改革によってスマートシティ化を進めていくため、多くの支出が検討されているのです。
また、特にスマートシティ化が顕著に行われるのはアメリカ、西ヨーロッパ、中国の3地域で、支出全体の70%以上を占めると予想されています。
いずれの地域も経済成長が活発で、都市部における人口過密の問題を抱えている様子が窺えます。
この先5年ほどで、各地の都市の景観は、大きな変貌を遂げることになるかもしれません。
日本におけるスマートシティのポテンシャル
また、日本におけるスマートシティ化についても、大きなポテンシャルを秘めていると言えます。
都市別のスマートシティ化に向けた支出予測を見ると、1位にシンガポール、2位にニューヨークがランクインし、3位には東京が続いています*2。
また、国内のスマートシティ関連IT市場は2018年時点で4623億円となり、2022年には9964億にまで成長するという試算も発表されています*3。
中でも大きな支出の割合を占めることになるのは、交通関連の設備費用です。
高度な公共交通誘導や交通管制、画像データ解析システム、環境監視システムやスマート街灯など、既存の設備をアップデートする形での導入が予想されます。
どれほどの予算がインフラに投入されるかは定かではありませんが、東京はそれだけスマート化の余地が大きい状態が続いているとも言えるでしょう。
国交省が展開するスマートシティ計画の事例
スマートシティのプロジェクトには、国土交通省も主導的に取り組んでいる施策もあります。
大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ
例えば東京千代田区の大手町・丸の内・有楽町地区で進められているスマートシティ計画は、代表的なプロジェクトの一つです。
まちづくり協議会 公式サイト:http://www.otemachi-marunouchi-yurakucho.jp/event-info/1376/
就業人口28万人、集積企業は4,300社というこの地区において、効率性・快適性・創造性の3つの要素に絞ったアップデートを行い、価値創出を進めていくことが検討されています。
具体的な施策としては、プラ廃棄の削減による持続可能性の追求や、自動運転車両による省エネ活動、ヘルスケアアプリの導入による健康増進などが検討されています。
特に電動スクーターや自動運転タクシーなど、スマートモビリティへの注目度は高く、都内では最も早くこれらの導入が行われることになるでしょう。
宇都宮スマートシティモデル推進計画
東京都から離れた栃木県宇都宮市においても、スマートシティの推進が官民共同で行われています。
宇都宮市Uスマート推進協議会 公式サイト:https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/shisei/machi/1021495.html
このプロジェクトにおいて主眼が置かれているのは、少子高齢化社会における、持続可能性を持った都市の実現です。
宇都宮市は東京都内とは対照的に、若年層の流出が問題となっており、超高齢化社会が到来しようとしています。
そこで考案されたのが、様々な機関が連携し、移動効率と地域のネットワーク強化に特化した「ネット ワーク型コンパクトシティ」の形成です。
住民が暮らす集落を含む地域、産業拠点となる地域、観光拠点となる地域、市街地などをコンパクトにまとめあげ、互いにネットワークでつなぐというプロジェクトです。
その基軸となるのが、東西基幹公共交通(LRT)の整備です。
LRT沿線に地域を形成し、漏れなく確実な交通インフラを宇都宮市民に提供することで、省エネルギーかつ活発な人との交流を産むことが狙いです。
おわりに
スマートシティに関する市場規模は、これから大きな増加が進むことが見込まれています。
これは交通インフラやエネルギー、ロボットの導入など、大きな設備投資を必要とするためで、この先5年から10年ほどは盛んな支出が見込まれています。
日本においても、国交省がスマートシティ化を積極的に推進しているため、例外ではありません。
過密都市ならではのソリューションもあれば、少子高齢化社会でもサステナブルに生活できるような取り組みも見られます。
将来的には、地域を問わず各地でスマートシティの実現が日本でも見られることになりそうです。
出典:
*1IDC「スマートシティ・イニシアティブは2023年の支出が1895億ドルに拡大すると予測」
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ45347819
*2 上に同じ
*3 BCN 「国内スマートシティ関連IT市場のCAGRは21.2%、22年に2倍以上の規模へ」
https://www.bcnretail.com/market/detail/20190221_107776.html
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