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竹中工務店のBIM導入が、建設ロボットのさらなる進化を加速させる

建設業では、就労者の高齢化に伴う就労人口減少、あるいは女性作業者の積極的な採用を社会背景に、建設現場の効率化・労働軽減化といった働き方改革が焦眉の課題となっています。
中でも建設作業用ロボットの導入や施工の自動化は、その解決策として高い注目を集めており、数年前から各社による導入が積極的に推し進められていました。
そして近年、IoTやBIMといった新しい考え方が普及するに伴い、大手ゼネコンの建設ロボットはさらに一つ上の次元に足を踏み入れつつあります。
すなわち、これまで局所的・断片的だったロボット同士の連携や組織化、ビルの形状や構造に関するデータを利用した入力作業の省力化などの、以前では考えられなかった範囲での自動化・効率化が達成され始めているのです。

今後も目が離せない建設ロボットの潮流を掴むべく、この記事では竹中工務店の建設ロボットをモデルケースに、その進化の過程を追いかけてみたいと思います。

建設ロボットの導入過程

はじめに、2017年から2019年にかけて竹中工務店に導入された、BIMとは未連携だった頃の建設ロボットを紹介します。

①清掃ロボット

工事現場の清掃は、我々が想像する以上の重労働です。
例えば耐火被覆工事では床に落下した材料の清掃に、1日の作業時間の約20%を費やしていました。
そこで竹中は、愛知県の岡谷鋼機株式会社と共同で清掃ロボット「TOギャザー」を開発、2017年の7月にこれを公表します。
家庭用の清掃ロボの多くがゴミを吸い込む形式であるのに対し、このロボットはカラーコーンで区画したエリアにゴミをかき集めるもので、ゴミタンクを清掃することなく長時間稼働させられるシステムとしました。(*1)

さらに、2019年4月には、そのカラーコーン区画内のゴミを吸引する「AXキュイーン」が発表されます。
開発は、竹中工務店・豊和工業株式会社・株式会社カナモト・朝日機材株式会社の4社で、掃除能力は637㎡/h、ごみ集積タンク容量を70ℓというスペックを誇るものでした。(*2)

②資材搬送ロボ

工事現場のロボット導入と聞いて、最も想像がつきやすいのは資材の運搬用ロボットではないでしょうか。
数百キロもある重量物を人力で何往復も運ぶことは、たとえ台車があったとしても大変な重労働です。
そこで竹中工務店は2016年、建設機材のレンタル事業者であるニッケンと共に、「かもーん」と呼ばれる運搬ロボットを開発しました。
この装置はセンサーによる自動追従装置を備えており、複数のロボットを数珠つなぎに追走させることで、一人の作業者で複数台のロボットを牽引できる点が最大の特徴です。(*3)

また2019年末には、竹中工務店・岡谷鋼機株式会社にトピー工業株式会社も交えた共同開発である「クローラーTO」の開発が発表されました。
本ロボットは、重量物を載せながら縦横斜め全方位への移動ができる特殊な移動装置(OMNICRAWLER)と、幅54cm、長さ92cm、高さ24.6cmというコンパクトなボディを武器にします、。
そして、これまで人力でしか運べなかった狭い空間や入り組んだ空間でも小回りの効く資材搬送装置として注目を集めましたす。(*4)

③墨出しロボット

「墨出し」とは、木材やコンクリートに対して、切断したり穴を開ける位置に印をつける作業のことです。
寸法、角度、水平垂直、中心位置を正確に測量し、適切な位置に印をつけなければ、当然建物に隙間ができたり歪んだりしてしまいます。
そのため墨出しは、非常に神経をすり減らす責任重大な仕事といえるでしょう。
故に、この墨出しの一部分でも省力化できれば、建設現場の負担は大きく軽減されることが期待されていました。
2019年4月に発表された竹中工務店の自走式墨出しロボットは、事前に登録した墨出し位置のデータと、現場に設置した市販のレーザー測量機があれば、目的位置まで自走し式て文字や目印を記入してくれるものでした。
一つの墨出しをするたびに逐一指示を与え直さなければならなかった従来機と異なり、このロボットなら一晩中無人で稼働させることも可能となったのです。(*5)

建設ロボットとBIMの連携

しかしこうしたロボットの導入による省力化は、ある一つの大きな矛盾を抱えていました。
すなわち、ロボットの種類や数が増えるほど、それを扱うためのコストが増加する、という問題です。
いくら省力化のために建設ロボットを導入しても、その操縦方法を覚えたり、ロボットの維持メンテナンスに今まで以上の労力がかかってしまっては本末転倒です。

例えば上述したような既存の建設ロボットは、
「カラーコーンを設置する」
「人間が先導・操作する」
「墨出し位置の図面データを入力する」
というように、それぞれのロボットに対して個別の情報や指示を与える必要がありました。
日を追うごとに空間の形が変化する工事現場において、適切な作業範囲の指示を与える業務は、決してけして軽視できない負担です。
しかもその負担は、扱うべきロボットが増えれば増えるほど、掛け算で増加していくのです。
また、それぞれの機械の仕組みや稼働状況のモニターもロボットごとに独立しているため、その保守・運用業務さえも、ロボットの種類が増えるたびに複雑化する一方でした。
例えば自社が保管する建設ロボットのうち、バッテリーが切れそうなロボットが何台あるのかを調べるにあたって、一つの画面・一つのソフト上で一気にその残量を把握することなど出来なかったのです。

そこで竹中工務店は、各建設ロボットとBIMデータを連携させる「建設ロボットプラットフォーム」の開発を、ブレインズテクノロジー株式会社に委託しました。
このプラットフォームの登場により、上述した問題点を一気に解決しようと目論んだのです。

このプラットフォームのメリットは、大きく2つに分けられます。
第一に、各ロボットに与える指示の大幅な省略化のが実現です。
BIMデータには、工事の進行とともに刻一刻と変わる現場の空間情報が全て含まれていますから、それぞれの工事ロボットに
「いつまでに何をどの範囲で行うのか」
という情報を送ることが、極めてスムーズになります。
これにより、工事現場にカラーコーンを設置したり、QRコードを床に貼り付けたり、作業員がロボットの先頭を誘導するといった手間すら大幅に省略できるのです。

第二に、それぞれのロボットの状況の把握をが一元化できることです。
異常が発生したロボットや電池の切れかかっているロボット、ソフトの更新が必要なロボット、こうした保守作業の必要なロボットが、現場のどこに何台出動しているのかが、BIMモデル内で監視できるようになったのです。(*6)

本プラットフォームの開発には、2018年にAmazon Web Serviceが2018年11月に発表したアプリケーション開発システム「RoboMaker」などが利用されています。
その詳細については、下記記事などもご覧ください。

竹中工務店がAWSでBIMの運用を始めた理由

まとめ

以上、竹中工務店における建設ロボット導入の小史と、その集大成ともいえる「建設ロボットプラットフォーム」の特徴を紹介しました。
すでに下記の記事において取り上げた通り、竹中工務店のBIM導入は設計だけでなく施工とも密接な関わりを実現しており、今後のさらなる展開が期待されています。

竹中工務店による、設計施工一貫BIMの導入過程とその事例研究

他業界に比べて10年遅れているといわれる建築業界のIT化ですが、油断しているとその変革を見逃しかねない速度で日々進化していることがわかります。
2020年を境にますます加速するであろう建設テックの動向を、今後もチェックしていきましょう。

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参考記事

建設ロボットの導入過程
①清掃ロボット
(*1)https://www.takenaka.co.jp/news/2017/07/04/index.html
(*2)https://www.takenaka.co.jp/news/2019/04/04/index.html
②資材搬送ロボ
(*3)https://www.takenaka.co.jp/news/2016/11/09/index.html
(*4)https://www.takenaka.co.jp/news/2017/11/02/index.html
③墨出しロボット
(*5)htts://www.takenaka.co.jp/news/2019/04/03/index.html

建設ロボットとBIMの連携
(*6)https://www.takenaka.co.jp/news/2020/02/03/index.html

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