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CIM運用に向けた標準ワークフローの策定はどれほど進んでいるのか

土木に特化した新しいモデリング技術を総称してCIMと呼ばれていますが、CIMは元々建物の施工管理に使われる、BIMに着想を得た技術です。CIMとBIMは切り分けて考えたいというのがこれまで国土交通省が提示してきた方針ですが、近年はこの方向性も修正されつつあります。

CIM技術の本格運用に向けて、制度上ではどのような対応が行われているのでしょうか。今回はCIM運用に向けた標準ワークフローの策定状況について、ご紹介します。

目次:
①国土交通省が考えるCIMのあり方
②BIM/CIM運用における課題
③ガイドラインから読み解くBIM/CIMの標準ワークフロー

国土交通省が考えるCIMのあり方

Construction Information Modeling、通称CIMの呼称を定め、積極的な運用を提唱してきたのは、国土交通省です。建設と土木はテクノロジー活用が喫緊の課題として、2012年より促進に向けた活動が進められてきましたが、今日では当時想定していた運用プロセスとは少し異なるようです。

CIMからBIM/CIMへ

CIMを取り巻く状況として目立った変化の一つに、CIMからBIM/CIMへの呼称の変化が挙げられます。建物の施工管理に特化したBIMとは別個の技術として、独立的な立場のアピールが行われてきたCIMですが、BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling, Management)へと改称されています。

CIMがBIM/CIMへと変更されたのは、CIMもBIMの一部でありつつも、従来のCIMという呼称を使ってきたことで混乱を招かないための配慮と考えられます。土木分野も建築分野も、今後は全てBIMと呼んでも差し支えはないでしょう。

BIM/CIM統一の背景

国土交通省がCIMをBIM/CIMへと呼称の変更を行なったのは、2018年におけるBIM運用ガイドライン作成時の出来事です。*1
その要因としては、CIMという呼び方のガラパゴス化が挙げられます。

元々、BIMの概念は2000年代後半に海外から持ち込まれたもので、国外では先立って建築や土木におけるBIM運用が導入されつつありました。現地ではあらゆる活用法においても統一で「BIM」の呼称が採用されていましたが、2012年に国交省は建築BIMとの差別化を図るCIMという呼び方を採用しました。

しかし日本においてもBIMの運用が普及するとともに、その活用分野も多様化し、最近では海外でも日本企業がBIMを活用してプロジェクトを進行する事例も出てきています。

BIM運用のグローバル化が進む中、CIMの呼称は日本独自のものだったこともあり、グローバル展開の際に不要な混乱をもたらす懸念もされるようになったのです。

世界標準のBIM運用を進めるためにも、CIMという呼び方は廃止され、以降はBIMに一本化する方針が採用されています。

BIM/CIM運用における課題

BIM/CIM運用は確実に普及が進んでいるものの、完璧な導入環境が整っているとは言えません。導入を阻害する要因にはどのようなものがあるのでしょうか。

標準ワークフローの不在

一つは、標準化されたBIM/CIM運用のワークフローが存在していなかったことです。標準化された運用手順がないために、各企業で別個の導入方法と運用手段が採用されてしまうと、企業間のコラボレーションに支障をきたします。設計段階、施工段階、運用段階で別個のBIM導入がなされてしまうと、BIM/CIMの最大の特徴である情報共有能力の高さが半減してしまうのです。

ライフサイクル全体におけるBIM活用

また、BIM/CIM活用は設計から運用管理まで、統一して同じモデルを使うことができれば、建物やインフラの長寿命化にも役立ちます。どのような設計で構築され、老朽化が見られる場合にはどのような素材で補修すればいいのかなどが迅速かつ正確に把握でき、末長い運用を実現するためです。

現状、BIMの活用は設計と施工段階で完結しているプロジェクトも多く、プロジェクトのライフサイクルを支えられる技術としては改善の余地があります。

ガイドラインから読み解くBIM/CIMの標準ワークフロー

そこで国土交通省が新たに提示したのが、BIM運用に関するガイドラインと標準ワークフローです。国家主導で普及が進むBIM/CIMですが、運用手順を標準化することで、様々なメリットが期待できます。

フロントローディング前提のワークフロー

BIM運用の際には導入は必須とされてきたのが、フロントローディングです。BIMはその特性上、最初の設計段階に多くの労力と人員を要する一方、その下流では設計要因を必要としないというメリットがあります。設計段階に多くの負荷をかける手法をフロントローディング と呼ぶのですが、従来のプロセスでは均等に人員は配置されているため、これを抜本的に改変するのは大きな労力が必要でした。

しかし、今回のガイドラインの策定によって、BIM運用におけるフロントローディングは標準的なワークフローとして定められることとなっています*2。
これまでは各企業が独自に対処するものとして扱われてきたフロントローディングは、事実上スタンダードなシステムとして提示されています。

これにより、BIM導入に伴うフロントローディングの実装負担は絶対的なものとなり、本格的な制度改革が各企業に求められることとなりました。

「ライフサイクルコンサルティング」の登場

標準ワークフローが公開されたことで、もう一つ注目を集めたのが「ライフコンサルティング」という職業の登場です。これは建設生産プロセス全体における、最適なBIMモデルをアドバイスするという職務を担当する業種で、従来のBIM運用における総合職であった「BIMマネージャー」よりも少し細分化された形です*3。

これまで課題とされてきた設計から施工へのデータの受け渡し、施工から運用へのデータの受け渡しや、フロントローディングのサポートを行います。いわば、BIMプロへクトにおける潤滑剤のような役回りです。

標準ワークフローの登場により、BIM/CIM運用の方向性がより一本化され、新しい職業や運用機会の創出にも期待が持てるところです。

おわりに

BIMとは切り分けた形で紹介されてきたCIMですが、グローバル化に伴い、今後はBIM/CIMとしてBIMに一本化されていくことが予想されます。それに伴いBIM運用におけるワークフローの標準化も進んでおり、効率的なBIM活用に向けた取り組みが進みます。

BIM運用に向けた課題は少しずつ改称され、さらなる普及に向けて動き始めています。

 

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参考:
*1国土交通省「CIM導入ガイドライン(案) 」p.2
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001334802.pdf
*2 BUILT「標準ワークフロー記載のBIMガイドライン案がレイアウト変更や文章をスリム化」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2003/06/news026_2.html
*3 建設ITワールド「設計段階で清掃面積も入力!建築BIM推進会議が示したフロントローディング」
https://ken-it.world/it/2020/04/bim-promotion-guideline-issued.html

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