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1級建築士が語る!BIMモデルをiPadに入れて建物の維持管理

建築分野の生産性向上の要としてBIMが注目を浴びていますが、現状では設計者のみが恩恵を受けている状態です。本来、BIMを使用することで設計のみならず、施工・管理の業務効率も上がるはずですが、まだそこまでBIMが浸透していません。しかし徐々に施工・管理の現場でもBIMの有効活用が進んでいくと考えられます。そこで今回は、BIMをiPadで使用することで改善するであろう、建物管理に着目してみたいと思います。

 

 

BIMが誕生するまでの建物管理

 

まずは、現在の建物管理の現場について触れていきたいと思います。

現状、建物の維持管理業務は紙ベースの図面を元に行われています。設計にCADが使われていても、CADデータは設計者や施工業者が保管しているだけで、施主も紙ベースの図面しか持っていないのが通常です。CADデータは設計者や施工者の資産として捉えられることが多く、それを他社に引き渡すことが少ないのが慣習となっているのです。

そのため、何か改修作業が必要になった場合は、紙ベースの図面をCADで作図し直してから、改修設計を行う必要があります。CADデータを設計者や施工者が持っていたとしても、管理したり改修したりする業者に渡されることが無いため、一から図面を作成する必要があるのです。これは非常に非効率と言わざるを得ません。折角CADデータあるにも関わらず、それをうまく活用できてないと言えます。施主としては、設計図を紙ベースからデータに置き換える分の費用を無駄に払っていることになりますし、時間も余分にかかってしまいます。

 

 

設計・施工・管理の垣根を低くするBIM

 

そこで活躍するのがBIMです。BIMはそもそも設計から管理まで一貫して活用されることが想定されています。今までのように、設計・施工・管理の業務が分断して図面を作成することを想定していません。
また、今まで「図面」は、単に線の集合体に過ぎませんでしたが、BIMで作成するモデルの「柱」や「梁」といった部材には、詳細な情報を落とし込むことができます。「柱」であれば、材料や詳細な寸法、製造した工場、アフターサービスの連絡先といった「情報」を落とし込むことが可能です。そうした「情報」を蓄積することで、設計から解体まで、1つのデータでトータルに管理することが可能となるのです。

 

 

iPadでの現場管理を可能とする「BIMobile」

 

BIMで管理を行うツールとして着目されているのが、ゼネコン大手の大林組が開発した「BIMobile」です。BIMモデルをiPadに入れて現場に持ち運べるツールで、構造躯体や設備、仕上げ材、メーカー等をすぐに閲覧することが可能ですし、設備の取り扱い説明書や、過去の点検履歴、検査で撮影した写真などもリンクさせることが可能です。建物の情報を現場ですぐに取り出せるのです。非常に機動的に建物の管理が出来ること間違いなしです。

また、点検履歴はExcelを使って記載することができるので、BIMの専門的な知識は不要ですから、誰でも簡単に情報を追加できます。ただ、やはり一番の利点は、iPadで使用できるということです。現場にて紙ベースで点検を行い、事務所に持ち帰って作業を行うと、どうしても時間的なロスを生みますが、iPadで利用できることで、その場で解決できることが非常に多いです。

 

 

プロジェクト管理を容易にする「BIM 360 Glue」

 

「BIMobile」は建物管理を得意としていますが、オートデスク社製の「BIM 360 Glue」はプロジェクト管理を得意としています。

意匠・構造・設備の設計者および、施工者が作成したBIMモデルをクラウド上にアップロードすることで情報の共有を図ることができます。建物をウォークスルーで歩き回ったり、モデル内の寸法を測定したりすることができるので、現場で職人がiPadを横に置いて施工するなんてことも可能です。これまで、職人が図面データを触ることは少なく、疑問点があれば施工者や設計者に都度確認したり、自分で図面を書いたりする必要がありましたが、BIMを直接触れるのであれば、その必要は少なくなるでしょう。作業効率が改善されるはずです。

 

現在BIMは設計での作業効率向上ばかりに注目が集まっていますが、設計から施工、管理までトータルに活用することでBIMは真価を発揮します。設計段階で徐々にBIMが浸透することで自然と施工・管理まで広まると考えられます。これからの新しいソフトの発売や、サービスの拡充に目が離せません。

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