マイクロソフト以外でも使えるForgeとは?Autodeskが目指すAPIエコシステムについて
この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。
①Forgeの概要について
②AutoCADがマイクロソフト上でしか操作できない理由
③APIエコシステムの概要
Autodesk社は、Forgeという新しいWebAPIをリリースしました。Forgeがあれば、なんとCADに必要なソフトウェア「AutoCAD」がなくてもCAD操作が行えるのです。
クラウド上で操作できるForgeなら、マイクロソフト社以外のPCでも操作可能です。Forgeの概要とマイクロソフトのネットワークしかサポートしていない理由、APIエコノミーについてご紹介します。
AutodeskのForgeは何がすごい?概要とメリットについて
ForgeはWeb上で利用できるAPI
Autodeskが提供しているForge(フォージ)は、WebAPIサービスです。APIとはApplication Programming Interfaceのことで、簡単に説明すると、元は違うサービス同士をつなげる部品のようなものです。
Forgeは、Webブラウザでストリーミング配信する仕組みを提供しています。一般に公開されているAPIで、設計自動化APIや認証、Autodesk BIM 360プラットフォームというサービスとの統合など、さまざまな機能を持っているんです。(※1)
豊富なAPIを利用するためには、まずデベロッパーキーの取得からスタートします。無料トライアルも用意されており、期限は1年間(または100クラウドクレジットが消費されるまで)となっています。(※2)最長1年間使えるので、しっかりと見極めることができますね。
Forgeは工夫次第でさまざまな活用ができますが、メインとしているのはCADの開発サポートです。Autodeskの看板商品ともいえるAutoCADのコマンドをブラウザ上で出すことができ、現在のクラウド時代にマッチしたサービスとなっています。
Forgeの概要については、こちらの記事もご覧ください。
ForgeならOSに関係なく利用できる
WebブラウザでCADの操作ができるということは、開発者が使っているOSに関係なく操作ができるということです。
Autodeskの製品といえば、AutoCADやMAYA、3ds MAXなど、プロ御用達のCGソフトウェアがあります。MAYAはAppleやLinuxにも対応していますが、AutoCADや3ds MAXはマイクロソフトのOSのみをサポートしているため、OSについて制限があるんです。
MacユーザーがAutoCADや3ds MAXを使いたいなと思ったら、インストール用で別のPCを買わなければいけません。これはかなり面倒ですよね。
AutoCADはマイクロソフトのサポートがメイン
CADオペレーターや設計に関わる人に愛用されるAutoCADですが、マイクロソフトのネットワークしか使えない理由は通信プロトコルにあります。
AutoCADはServer Message Block(通称SMB)というプロトコルを使ってファイルを共有しています。(※3)SMBとはマイクロソフト製品を中心とした通信プロトコルなので、AppleやLinuxといったほかのOSはサポートできないのです。
AutoCADではiCloudやDrop Boxといったネットワークは利用できず、ネットワーク障害が発生する恐れがあります。この部分は、AutoCADのデメリットといえるでしょう。
マイクロソフトのネットワーク以外が利用できないAutoCADですが、OSに影響を受けないForgeがカバーしてくれます。
CADソフト不要でアクセスできる
WebブラウザでアクセスできるForgeは、自分のPCにCADソフトがインストールされていなくても、CAD操作を行えます。
AutoCADを購入する場合、スタンドアロン版で209,000円/年もかかります。ForgeだけならAutoCADの約20万円分が浮くという考えもできるので、大変お得です。
設計やCADオペレーションは専用のソフトウェアが必須だったので、今までは各工程で担当者が1人で作業することが普通でした。操作できるパソコンが決まっているので、自宅作業やノマドワークができないケースも多かったでしょう。
しかしクラウドという概念が登場した今、CADも場所を選ばず操作できます。ForgeならCADに限らず、別のAutodesk製品で作成したデータを取り込むことも可能です。
Forgeを導入すれば、関係者はリアルタイムでデータを閲覧できます。クラウド上で開発者たちが交流できるので、スマートなコミュニケーションでより業務を効率化できるでしょう。(※4)
パソコン以外からでもアクセス可能
Webブラウザ上でForgeが操作できるということは、もはやパソコンも不要になります。iPadなどのタブレットを片手にCAD操作ができるなんて、今まででは考えられないことです。
Aさんが図面をForgeにアップロードして、Bさんがその図面にコメントを加えて…と作業できれば、設計作業もかなりスムーズに進むでしょう。
デバイスを選ばないので重たいパソコンを持ち運ぶこともなく、タブレット片手にカフェで作業もできます。そうなればノマドワークが実現しますし、在宅で作業しても何の問題もないでしょう。
Forgeが注力しているのはBIM/CIM
ご紹介したようにCAD操作に長けているForgeは、BIM/CIM分野でもっとも採用が進んでいます。(※5)
BIM/CIMとは、建築業界や土木業界で使われる言葉です。3次元データを活用して、精巧なシミュレーションや進捗管理までを関係者全員が共有することで、もっと作業を効率化しようという流れが起こっています。
日本でも大きな産業である建築業界ですが、長時間残業や人手不足といった大きな課題を抱えています。専門的な知識や技術が必要なので、各工程が専門家だよりになってしまうのも、効率化を妨げる一因です。
そこで登場したのが、BIM/CIMという概念です。BIMはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)、CIMはConstruction Information Modeling/Managementが正式名称です。CIMは日本で作られた言葉で、建築業界の中でも道路やダムといった土木分野を指しています。
これらの工事は大規模であり、数年単位でプロジェクトが進みます。当然ながら関わる人も多数で、持っている専門知識もバラバラです。クライアントの厳しい納期や条件をクリアしなければならず、たくさんの人たちの協力が欠かせません。
そこで大事なのがコミュニケーションです。会話や挨拶だけではなく、プロジェクトの進捗管理や誰が見てもわかる完成予想図を共有することが、作業を効率化する要となります。
つまり、大勢の人と共有できない紙媒体の情報ではなく、デジタルのデータが必要なのです。Forgeはデジタルデータを共有できるので、建築業界の作業効率化に大きな期待が寄せられています。
Autodeskが目指すAPIエコシステムとは
APIの普及は進んでいる
他のサービス同士をつなげるAPIをリリースする企業は増えました。たとえばネットショッピングをする時、ログインでGoogleやFacebookのアカウント認証画面に切り替わったことがないでしょうか?
それは、ネットショップがGoogleやFacebookのAPIを利用しているからなんです。そのほか、企業の公式WebサイトのアクセスマップにGoogleのAPIを導入して、Google Mapで表示するケースも増えました。
他社のAPIを導入した企業は、自社の開発費用は工数を使わずに新しい技術が手に入ります。そしてAPIをリリースした企業は、自社のサービスでは獲得できないユーザーに利用してもらえます。
こうしてお互いの会社に利益を与えあってビジネスを成長させていくことを、APIエコノミーというのです。
日本では金融業界が顕著
APIエコノミーによる変化は日本でも起こっていて、特に銀行アプリなどの金融業界で活用が活発になっています。
今では国内メガバンクも銀行アプリを開発して、若い世代を中心に利用されています。スマートフォン1台で振り込みや残高照会ができるので、大変便利ですよね。
しかし銀行アプリはハッカーなどに狙われやすく、とくに高いセキュリティ要件が求められます。そこで銀行は、Fintech企業など別の企業のAPIと連携させて、安全な仕組みを作るのです。
たとえば三菱UFJフィナンシャル・グループでは、MUFG APIポータルというサイトで開発者向けにAPIを紹介しています。(※6)銀行・証券・投信情報と3種類のAPIがリリースされており、開発者は専用のアカウントを作りAPIキーを発行すれば、利用可能です。
Autodesk社のForgeと、APIの概要についてご紹介しました。クラウドの時代となった今、ついに専用ソフトウェア無しでCAD操作までできるようになりました。これから建築業界がどのように効率化されていくのか、楽しみですね。
(1)https://forge.Autodesk.com/
(2)https://forge.Autodesk.com/pricing
(3)https://knowledge.Autodesk.com/ja/support/AutoCAD/learn-explore/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/Support-for-non-Microsoft-networks.html
(4)https://adndevblog.typepad.com/technology_perspective/2018/05/about-Autodesk-forge.html
(5)https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/static.auj18.eventcloudmix.com/forge.html
(6)https://innovation.mufg.jp/api/
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