Amazonがリヴィアン社のEVを10万台導入!背景とEVの今後の見通し
Amazonが10万台のEV(電気自動車)を配送用に導入することが話題となっています。なぜこのタイミングでの導入なのか、Amazonが目指すところはどこなのか電気自動車の未来はどのように動いていくのかについて読み解いていきます。
リヴィアンからEVを10万台導入
AmazonがEVを導入したのはリヴィアン社という新興の電気自動車メーカーです。驚くべきことにリヴィアン社は創業から現在に至るまで一台の車も市場に送り出していません。電気自動車メーカーとしてはテスラが現在唯一の大手ということになりますが、それを差し置いて大規模な受注に成功したことになります。
もっとも、2019年には4回に渡ってアマゾンを中心に資金提供を受けており、総額では3000億円に達します。2019年12月24日には1400億円を調達しました。これらの資金を元に2020年後半から量産を開始する予定ということです。*1
現在に至るまでEVはあまり一般的になっていません。企業では自社の車両をEVに継続的に差し替えているケースもありますが、一般消費者にとってはニッチな車となっています。
例えば世界最大の物流企業であるUPSは12万3000台の車両を保有していますが、そのうちの1万台程度で「先進技術を駆使した代替燃料」を使用しているということです。この代替燃料にはEVも含んでいると考えられますが、それでも1割に満たない割合です。Amazonの車両保有数は公開されていませんが、10万台のEV導入というのが世界最大の物流会社の車両数に匹敵する規模というのはわかります。*2
Amazonがこの規模のEV導入を進めることで、インフラの側面からもEVを使用できる環境が整うことが期待できます。
導入理由
今回AmazonがEVの大量導入を決めた理由というのは何でしょうか。環境面とコスト面が重要な要素になっているようです。
CO2削減
Amazonは企業として気候変動対策に取り組んでいます。2040年まででに事業で発生する二酸化炭素の排出量をゼロにするという計画を発表しており、今回のEV導入はその走りと言えるでしょう。*3
2019年9月に「2021年からEVでの配送を始め、2024年までに10万台のEVを導入する」と発表しており、リヴィアンへの発注数と合致します。
CO2削減や気候変動対策は企業の社会に対する責任として重要度が年々増しています。日本は出遅れている感がありますが、海外においてはしっかり行わないことで非難の対象になることから、イメージ戦略の一つとして環境問題に取り組むことは企業にとって必須です。
Amazon以外にも米国郵政公社などが大量導入を予定しているようです。日本国内では、2019年からヤマト運輸が500台、日本郵便が1200台のEVを導入と発表されましたが、Amazonの台数と比べると何とも寂しい限り。取り上げられ方も小さいものです。もちろん国内のみ、全世界という違いはありますが、環境に対する意識が国内と欧米各国とで大きな差があることを端的に表していると言えます。45
コスト削減
さらに、EV導入によって大幅なコスト削減を実現できます。100km走行した場合のランニングコストを比較するとEVは310円程度なのに対し、ガソリン車は800円程度と格段にEVが安くなっています。また、国にもよりますがEVを導入することで補助金が出るケースも多く、例えば日本だと国の補助金と地方自治体の補助金が両方支給されるため最大100万円程度安くなることもあります。10万台導入した場合のコスト削減は大変大きなものです。*6
Amazonでは導入運用に関するコスト削減に加えて最終的には全自動運転のEVを導入することで人件費の削減を見込んでいるようです。Amazonは従業員から環境対策をしないことへの批判が大きく、EV導入を早めたという見方もありますが、EV導入によって従業員の首が切られるとは何とも皮肉な話です。
リヴィアンとはどんな会社?
Rivian(リヴィアン)は2009年6月にマサチューセッツ工科大学で機械工学を学んだRJ Scaringeによって創設された電気自動車メーカーです。何度か社名を変更しており、創設当初はクーペタイプの電気自動車の製造を計画していたということです。*7
リヴィアンではスケートボードと呼ばれる共通の車体をベースに開発を進めています。スケートボードにはバッテリーなどの駆動部分が組み込まれており、あとは企業から受注した車体を上に乗っける方式で量産を進めるようです。
今回Amazonが発注したEVの1台あたりの価格は明らかにされていません。現在一般販売が決まっているピックアップトラックのR1TとSUVのR1Sは日本円にして600〜700万円程度での提供となる予定です。これらの車はオフロード対応したハイエンド向けのリリースとなるため、Amazonに提供するEVはもう少し価格が抑えられるはずです。
日本でのEV導入事情
2017年度の調査によると、日本国内ではEV新車の販売シェアは全体のわずか0.5%にすぎません。一方、充電スポットは国内に3万箇所設置されておりこれは中国の21.3万、米国の4.5万に次ぐ世界第3位。国土面積を考えるとEVに対するインフラはかなり整っているという印象です。EVを使用できるインフラはあるのにEVが普及しない原因は価格によるものです。*8
現在国産EVの代表格といえば日産リーフですが、バッテリーの大きい62KWhで416~472万円、これはメルセデスベンツのAクラスよりも高価格となります。小さい40kWhでも324万円以上と従来のガソリン車と比べて割高感は否めません。
このような高価格を軽減するために補助金がありますが、正直焼け石に水です。高価格の原因はEVに搭載された電池が非常に高価であることが原因です。一説にはリーフのバッテリーの価格は62万8000円に工賃と消費税が加算されたものと言われています。しかも、ガソリン車と比べてEVのバッテリーの寿命はまだ未知数と言われており、メーカーでもいつまで使用できるかは不明。そのため保証期間が長くはなっているものの、冷静に価格を見たときに「よくわからないものに支払う額ではない」と判断する消費者が多いのは当然です。
企業ではヤマト運輸や日本郵便、タクシー会社などでEVの導入を進めているところはありますが、どちらかというと環境に配慮しているアピールのための導入であり、全体の割合としては微々たるものです。コストの問題が解決されない限り普及は進まないでしょう。
今後世界的にEV導入は進むか
とはいえ、世界全体で見れば環境問題対策としてEVの導入は進む方向であり、日本だけが流れに乗らないのは限界があります。2020年以降AmazonのEVが日本でも走るようになればより認知が進み、EVが車購入の選択肢に入る消費者が増えることは間違いありません。Amazonの取り組みが世界を動かす事例の一つになる可能性は非常に高いのです。
*1https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53723510U9A221C1000000/
*2https://wired.jp/2019/10/17/amazon-all-electric-future-fleet-vehicles/
*3https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50018950Q9A920C1000000/
*4http://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/pressrelease/2019/news_191119.html
*5https://www.asahi.com/articles/ASMCF4RRPMCFULFA016.html
*6http://www.cev-pc.or.jp/what_ev/price/
*7https://wired.jp/2019/06/04/future-of-transportation-rivian-auto-tech-boom/
*8http://www.mlit.go.jp/common/001283224.pdf
建設・土木業界向け 5分でわかるCAD・BIM・CIMの ホワイトペーパー配布中!
CAD・BIM・CIMの
❶データ活用方法
❷主要ソフトウェア
❸カスタマイズ
❹プログラミング
についてまとめたホワイトペーパーを配布中
デジタルツインと i-Constructionについての ホワイトペーパー配布中!
❶デジタルツインの定義
❷デジタルツインが建設業界にもたらすもの
❸i-Constructionの概要
❹i-Constructionのトップランナー施策
▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!