大成建設がマイクロソフトとAI・IoTで協業!建物運用や保守を効率化
この記事を読むと、以下の3つの事がわかります。
①大成建設がマイクロソフトと協業して行うソリューションの詳細
②Microsoft AzureとWindows 10 IoTの概要やメリット
③大成建設がなぜ新しいビジネスを行うことにしたかという背景
大成建設がマイクロソフトと協業して、新しいビジネスソリューションを始めると発表しました。AIやIoTを駆使してIT化したシステムで、建物や人を守ることを目指しています。
そして大成建設の新しいソリューションでは、企業が導入しやすいMicrosoft AzureとWindows 10 IoTをメインシステムとするようです。
「あの大手ゼネコンの大成建設がなぜIT化を進めるのか?」「なぜマイクロソフトの技術を使うことにしたのか?」という点をわかりやすく解説します。
大成建設がマイクロソフトと協業して新ビジネスを展開
日本の大手ゼネコンである大成建設が、マイクロソフトと協業してAI IoTを活用したソリューションビジネスを展開すると発表しました。
大成建設はゼネコンですから、中心はビル管理や不動産が中心となります。しかしこれからは「建てること」だけを目的とするのではなく、建物の維持管理や利用者満足度を向上させるなど、「建てたあと」にも注力するようにしたのです。
TAISEI AI IoTプラットフォームを構築
大成建設は新しいソリューションのために、パブリッククラウドなどを活用して独自のプラットフォームを構築していくことを宣言しました。
その名も「TAISEI AI IoTプラットフォーム」というもので、マイクロソフトの基盤を利用します。※1
このプラットフォームでAIやIoTを活用する方法や運営方法について、マイクロソフトがアドバイスする形で協業していきます。
大成建設はプラットフォームを構築して何をするのか?
今では世界中でAIやIoTが浸透しており、モノとインターネットが繋がっている世界が当たり前となりつつあります。Appleやマイクロソフトも次々と新しいガジェットやサービスをリリースし、医療機器やクルマまでがインターネットとつながりはじめています。
大成建設も独自プラットフォームを構築して、AI IoTによってよりよいサービスを創り出そうと考えているのです。例として、大成建設は以下のような構想を練っています。※2
・コネクテッドホスピタル(病院とプラットフォームをつなげて、患者サービスを向上させる)
・コネクテッドファクトリ(工場に高性能ロボットを導入する、エネルギーを最適化させる、作業環境を向上させる)
・コネクテッドシティ(デジタルプラットフォームによって、応答性の優れた店舗をつくる)
大きなプロジェクトの中、大成建設はまず以下の3つを順次事業展開していきます。
・地震発生直後に建物の状況を把握
地震が起きた直後、大成建設のプラットフォームが建物の状態を評価して、所有者や管理者にタイムリーに通知を行います。
地震をはじめ自然災害やテロといった非常事態が起こった時、企業や建物の管理者はいち早く安否確認や人命救助を行わなくてはいけません。しかしノープランでは動けないため、非常時の対応マニュアルとしてBCP(事業継続計画)を作成します。
この「非常時の対応マニュアル」は状況に合わせて変える必要がありますが、非常事態にはその状況が見えないために混乱が起こりがちです。
そこで登場するのが、大成建設が開発を進めるプラットフォームです。地震が起こった直後から、大成建設が構築したプラットフォームであらゆる情報を集めて処理を行い、管理者にいち早く状況を届けることを目指します。
・建てた後の運営管理
ビルや商業施設は、建てたら終わりではありません。実は設計や施工といった初期費用よりも、建てた後に建物を運営したり安全性を維持したりといった運営費のほうが高いといわれています。
そこで大成建設のシステムで、建物の運営管理業務を効率化するためのサービスを提供します。すでにマイクロソフトでは「スマート・ビルディング・ソリューション」という建物運営管理サービスがあるので、大成建設はそのサービスを足掛かりとしてソリューションを展開していきます。
AIとIoTを活用した大成建設のシステムで、建物オーナーの負担を減らせるよう取り組んでいくのです。これはいわゆる「BIM」といわれる取り組みの一環ともいえます。
建築業のIT化ともいえるBIMについては、ぜひこちらの記事もお読みください。
BIMの取り組み事例を知りたい!国内事例と使えるソフトについて
・従業員の作業状況を「見える化」
建築業をはじめ生産施設では、人手不足が深刻になっています。高齢化や長時間残業による従業員の事故や急な体調不良など、肉体作業を伴う労働にはとくに不安が尽きません。
そこで大成建設が開発するAIソリューションで、従業員の体温や心拍といった健康状態をチェックしたり、作業環境の状況をITでモニタリングしたりするソリューションを開発します。
大成建設が活用するMicrosoft AzureとWindows 10 IoTとは
「AI IoTビジネス推進部」を設置してシステム構築に注力する大成建設は、Microsoft AzureとWindows 10 IoTを基盤とします。この2つには、企業が使いやすい仕組みが整っています。
Microsoft Azureとは
マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azure(アジュール)は、大成建設が構想するソリューションの基幹部分を担うものです。※3
Microsoft Azureは仮想サーバーやストレージといったインフラをインターネット上で使う「IaaS(イアース)」や、アプリを稼働させるための環境を提供する「PaaS(パース)」といったサービスを提供するものです。
Microsoft Azureは分単位の従量課金制であり、企業向けの料金プランもあります。そのため大成建設側としても導入コストを抑えられるというメリットがあるのです。
またMicrosoft Azureには災害復旧サービス「Azure Site Recovery」があり、万が一の事態にも対応しています。
Windows 10 IoTとは
Windows 10 IoT名前通りIoTのためのOSであり、パソコンやタブレットといったいわゆる「普通のOS」ではありません。Internet of Things(モノのインターネット)時代のために開発されたOSであり、ATMや防犯カメラといったIoT機器に搭載されます。
通常のOSと違う点はいくつかありますが、まずセキュリティアップデートの違いがあります。
基本的に通常のOSアップデートでは、バグ(不具合)や脆弱性を修正する「セキュリティアップデート」と、機能追加などを行う「大型アップデート」を行います。しかしWindows 10 IoTの場合はセキュリティアップデートのみを行う「固定化モデル」の選択ができます。
通常のOSでも大型アップデートがかかると若干要件が変わり、インストールしていたアプリや外部システムとの間に不具合が起こることがあります。一般のPCでも困ったことですが、大成建設のように災害対応などを見据えた機器では甚大なトラブルになりかねません。
そのためOSを安定稼働できるWindows 10 IoTは、専用機器に欠かせない機能です。この安定性は多くのIoT機器メーカーに評価されていて、医療機器のIoTにも採用されています。
Windows 10 IoTは一般向けにはリリースされていません。リリースする際は専用機器にインストールされた状態なので、よりセキュアに稼働させられるというメリットもあります。※4
大成建設の未来を見据えたビジネスプラン
大手ゼネコンとして数多くの建設を行ってきた大成建設ですが、今回のようにマイクロソフトと協業して新しいソリューションを構想した背景には「サステナビリティ」があります。
サステナビリティとは持続可能性ともいわれ、社会や環境が持続していけるように取り組むことをいいます。ユニクロをはじめ多くの企業がサステナビリティを取り入れ、自分たちの企業に限らず、世界中が発展していくことを目指しているのです。
大成建設のプレスリリースでも、以下のように書かれています。
*
”将来の持続的成長を見据え、グローバル化の推進とともに、新たな収益機会の創出をはじめとする建設業のバリューチェーンにおけるビジネスモデルの転換が求められています。”*
引用元:AI・IoTを活用した施設運用・保守事業の変革に向け協業を開始
大成建設は「建てて終わり」ではなく、建てた後も見据えたビジネス戦略に切り替えたのでしょう。ITが浸透したことでデジタルトランスフォーメーションが行われ、さらに便利な社会が実現するかもしれません。
※1:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2019/191015_4811.html
※2:https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1910/16/news080.html
※3:https://azure.microsoft.com/ja-jp/overview/what-is-azure/
※4:https://ascii.jp/elem/000/001/783/1783853/
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