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IaaS/SaaS/PaaS/DaaSで変わるERP

ERP(Enterprise Resources Planning)は、企業のあらゆる資源(リソース)を管理するシステムです。企業の資源とは、いわゆる「ヒト・モノ・カネ・情報」にあたります。

「ヒト」の管理には人事管理システム、「モノ」としては会議室など設備の管理システムや物流・在庫管理システム、「カネ」は財務会計や購買・販売管理システム、「情報」はメールやグループウェア、CRM(顧客管理)、ストレージによる情報共有などのシステムがあります。これらを総合的に管理するシステムがERPです。

そして、BI(Business Intelligence)のダッシュボードを使って、経営者が必要な企業の情報などを可視化してリアルタイムで見渡せます。一元化した情報管理により、迅速な経営の意思決定を支援します。

「基幹システム」とも呼ばれるERPは、経営の基幹業務である、総務、人事、会計部門を中心に、購買や営業部門、物流部門など、企業のあらゆる部署で利用されます。したがって、企業規模に合わせてシステムも大規模になります。

代表的なERPベンダーはSAP、Oracle、Microsoftの3社です。特にSAPはグローバルで圧倒的なシェアを誇るリーディングカンパニーとして地位を築いています。国内にも株式会社富士通マーケティング、株式会社オービックなどの企業があります。

この巨大なシステムは、従来オンプロミス(社内サーバー)で運用されていました。しかし、急速にクラウド化が進展しています。

金融業界のクラウド化が急速に進展

基幹系システムがオンプレミスで運用されていたのは、個人や企業の財務会計など重要な情報を管理するため、情報漏えいなどコンプライアンスの面で社外の運用が危惧されていたからです。ところが、最近では金融業界でもクラウド化に注力するようになりました。

三菱UFJファイナンシャル・グループでは積極的にクラウド化を進め、AmazonのAWS(Amazon Web Services)の採用を決めました。従来はメインフレームの大型汎用コンピュータで運用していましたが、保守のための膨大に膨れ上がっていた維持コストの削減が目的として背景にあります。

参考:三菱UFJがITシステムをクラウド化、アマゾンに移管の衝撃

ERPのクラウド化によって、これから5年間で100億円ものコスト削減が可能であると、三菱UFJファイナンシャル・グループでは試算しています。

トレンドはSaaS型ERP

クラウドの形態には、主にインフラ提供するIaaS、クラウド上でソフトウェアを提供するSaaS、開発環境などのプラットフォームを提供するPaaS、個人のデスクトップ環境をクラウド上で提供するDaaSなどがあります。

ERPの分野で現在注目を集めているのは「SaaS型ERP」です。SaaS型ERPでは、いままでオンプレミス上で行われてきた財務会計処理や顧客情報管理を、クラウド上で行います。つまり、システムのすべてを企業内で物理的に所有しません。極端にいえばサーバールームが不要になります。

実際には「2層ERP」という方法を取る場合があります。たとえば本社で導入されている既存のERPを活用しながら、支店などの各拠点でクラウドERPを導入する方法です。コスト削減とリスクの回避を行いつつ、本社と支店などの拠点間でシームレスな運用が可能になります。

これまでERPでは「シングルインスタンス」が重視されてきました。シングルインスタンスとは、本社や支社などのあらゆる拠点で、同じERPで財務処理をはじめ経営の意思決定を行うことです。理想的ではありますが、物理的に同じ環境を整備しなければならないため、導入費用も運用費用も巨額の予算を必要としました。

しかし、クラウドERPで2層ERPを実現すれば、物理的コストを低減しながら統一した環境で処理を行うことが可能になります。

クラウドERPの可能性

クラウドERPが注目を集めているとはいえ、その実現には、IaaSつまりクラウド基盤も無視できません。具体的には堅牢なセキュリティ、バックアップ、トラフィックの増減に合わせた柔軟な拡張性などインフラの機能です。

クラウドERPはさまざまなメリットがあり、中小企業に門戸を拡げる可能性があります。ERPというと「大手企業向け」「膨大なコストがかかる」「導入してもうまく動かない」などの先入観がありましたが、より短期間かつ低コストでERPを導入できます。

開発会社にとっては、クラウドERPのPaaSを利用することで、実際の稼働環境と同じ環境で開発できるメリットもあります。さらにDaaS的な利用が可能になれば、営業部員は端末にソフトウェアをインストールしなくても、クラウド上のアプリケーションやデータを利用して、打ち合わせ先で営業活動を行うことが可能になるでしょう。

クラウドERPは始まったばかりです。しかし、クラウド化の潮流は業界を問わずに、もはや止められない状況になりました。

 

 

 

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