AppleとGoogle 特許戦争とその後
今や世界のトップ4(Gang of Four)企業といえばAGFAと呼ばれるApple, Google, Facebook, Amazonです。これらの企業の「次の一手」が何かを予測する時、”どんな特許を出願しているか?”が一つの指標になります。
今回はAppleとGoogleが2010年前後に繰り広げた特許戦争について振り返り、現在は特許に関してどのような戦略をっているかについてまとめてみたいと思います。
2010年前後のアップルとグーグルの特許を巡る争い
2010年前後の状況
Googleは1998年設立された新興企業であり、2010年当時は特許ポートフォリオがまだ弱い状態でした。特に検索に関する特許には優位性がありましたが、スマートフォンなどの通信に関する技術については一歩出遅れていました。そのため、自社の研究開発だけでは間に合わないと判断し、他社の特許の買収に意欲的に乗り出しました。
一方Appleについても、GUIやマウスなどを実用化したパソコンで市場を開拓し、マイクロソフトとの特許紛争を繰り広げていましたが、スティーブ・ジョブスの復帰を機にライセンスの相互供与などを通じて以前ほどの対立はなくなっていた時期でもあります。2007年にiPhoneの発表でモバイル通信分野に進出しますが、やはり新規参入組でありOSの操作性やデザインに関しては独自性を出してはいましたが、通信の基本特許に関してはまだ十分ではありませんでした。
<2010年前後の各社のスマートフォンへの参入状況>
2005年 Google がAndroid社を買収
2007年 AppleがiPhoneを発売
2008年 Googleがandroid正式リリース(台湾HTC社の端末)
2014年 マイクロソフトがノキアを買収 → 2016年売却
今や、androidというとGoogleのイメージが強いですが、元々は別の会社(Android社は2003年に創業したベンチャー企業)が開発していたものを2005年にGoogleが買収したものだったんですね。
Apple VS Google 前哨戦
2011年になってカナダのノーテルネットワークス社が経営不振に陥り、保有特許6,000件をオークションに出しました。Appleはマイクロソフト他数社と協力し、Googleとの入札競争に勝利します。Appleとしては後発のGoogleがandroidの無償提供を始めたのを見て、特許の取得に負けるわけにはいかなかったのでしょう。
一方のGoogleもこれを機にIBMから特許を買い取ったり、ノキア社を買収するなどの戦略で急速に特許ポートフォリオの強化をしていきます。
2010年 Apple VS HTC
2010年3月に最初の戦いの幕が切って落とされます。Appleがandroidを搭載する通信機器のメーカーであるHTCを、ユーザーインターフェースなどの特許を侵害するとして訴えを起こしました。これに対してHTCの反撃は同年の5月と素早く、Googleの支援を受けてAppleを自社の特許を無断使用しているとして、iPhoneの製造中止を求める訴えを起こします。この時にGoogleはモトローラから基本特許を調達し、HTCに対して供与することでバックアップをしています。
2014年 Apple VS サムスン
この争いについては日本国内でも訴訟が行われたので、当時耳した方も多いのではないでしょうか。アメリカ・韓国・EU・ドイツ・イギリス・フランス・イタリア・オランダ・スペイン・オーストリア・日本などに展開され、さながら世界戦争の様相を呈してきます。Appleは主にデザインや画面操作技術、意匠、商標(トレードドレス)の侵害でサムスンを提訴し、サムスンの方は3G必須特許の侵害で提訴し返すという内容でした。
HTCの時も今回も、GoogleはAppleの直接的な訴訟相手ではありません。もちろん、AppleのターゲットはGoogleだったのですが、Googleはandroidを無償提供しているので直接損害賠償請求ができなかったと言う理由があります。これはいわば「代理戦争」とも呼べるでしょう。ところが次の争いではGoogleも望まない形ではありましたが、直接戦うこととなりました。
Apple VS モトローラ・Google
Googleがモトローラの事業を継承したのを契機に、訴訟も引き継ぐこととなりました。これはGoogleも望んでいたことではなかったようで、最終的には携帯事業部門を売却し、OSであるandroidの提供だけに戻ったことからも、この時期の事業戦略は二転三転していた様子が伺えます。
特許をめぐる情勢の変化
このように2010年前後に世界中で繰り広げられたApple VS Googleの特許を巡る争いは、2014年になって両社が和解することで決着しました。この辺りの事情についても少し振り返ってみましょう。
プロパテントからアンチパテントへ
やや時代は遡りますが、1980年代に出されたヤングレポート(知財による競争力強化など)を契機として、米国ではプロパテント政策が進みます。外交においては相手国への経済政策を含む圧力を武器とし、国内では知財専門の連邦裁判所の設置やアンチトラスト法の運用基準の緩和などによって、特許がもたらす利益の保護政策を強化します。
ところが、あまりに特許に関わる訴訟が増加し、事業に用いる目的ではなく単純に企業を攻撃し、利益を得ることだけを目的としたいわゆる「パテントトロール」と呼ばれる特許ブローカーが暗躍するようになります。また、パテントトロールだけでなく、これまで紹介したような大企業同士が特許紛争のために時間と利益を消耗するようなケースも多くなりました。
特許侵害を理由に製造差し止め請求が認められると、企業にとっては致命傷となりえます。このままでは産業の健全な発展に強く悪影響が出るということで、世の流れはアンチパテントへと進むようになります。また、業界の標準特許として広く普及させることを目的に、通常の特許使用料に比べて十分に安価なライセンス料で、ライバル会社などを区別せず公平にその使用を認める「フランド宣言」などがなされるようになりました。
Gooleの特許に対する戦略
もともと、Googleははオープンソースという考え方に強い親和性を持つ企業です。そのため、Appleとの特許紛争を繰り広げた時期もありましたが、2013年には「特許を使った攻撃を行わない」ことを宣言し、特許訴訟の抑制のためのロビー活動も活発に行なっています。2015年には一般からの特許買取推進プログラムを期間限定で実施するなど、ユニークな戦略も展開しています。「世の中の全てをデータ化する」という目標を持っているGoogleは、最終的には全ての特許をデータ化し、AIを使った検索機能などを実装した上で、不要な紛争が起こらないようにするという方向に進んで行くのかもしれません。
現在は各社とも訴訟による消耗を避け、停滞よりもお互いの得意技術を活かした戦略に軌道修正をしています。必要な特許はライセンスもしくは企業買収により取得、必須技術はフランド宣言で標準化という方向が確立してきました。
最近になって、Googleは自動運転技術など自動車関連特許を数多く出願しており、その数だけを比較するとトヨタに迫る勢いです。一方のAppleはAR技術、音声操作技術、入力デバイスに関する技術など、自社の得意とする「ユーザーの操作性とデザイン、新たな利用体験」といった分野でのユニークな出願が話題になることが多いですね。
Appleの場合 は、先行する技術をブラッシュアップすることで魅力的な製品に仕上げて提供してきた文化がありますので、これからどのような技術を持った企業を買収してくるかなども注目したい点です。
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