睡眠トラッキング機能の強化が明らかに!「Apple Sleep」について
Apple製品の情報サイトであるMacRumorsの記事によると、iOS13のソースコードの解析によって新たな睡眠トラッキング機能である「Sleep」の存在が明らかになりました。Apple Watchと連携することで、現在よりも詳細なデータを取得することができるようになりました。*1
この記事でわかること
・Sleepで実現される睡眠トラッキングとは
・ヘルス関連の機能強化がウエラブル端末のシェアに影響
・最高の身体情報計測機器であるApple Watchの優位性
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睡眠トラッキング機能を充実させるSleep
記事によると、Apple Watchを装着したまま眠ることによって、睡眠時間の記録や睡眠状態のデータ取得が可能なだけでなく、「静かに目覚めることができる」となっています。「静かな目覚め」という記述ですが、おそらくはアラーム代わりに振動などの方法が選択できるのではないかと思われます。
また、腕に装着することによって心拍数や呼吸数の正確な記録から、iPhoneと連携することによってマイク機能を使ったいびきや寝言の記録などもできるようになりそうです。他社製品ではすでに実現されている機能でもありますが、このようなきめ細かいデータを取得・記録・分析・比較できるようになれば、より充実した睡眠の実現が期待できます。
最高の心拍数記録計であるApple Watch
もともとApple Watchは「最高レベルの心拍数記録計」という評価があります。これは2017年のスタンフォード大学の研究により明らかになりました。当時市販されていたApple Watchを含む7つのリストバンド型デバイスの精度を調査したもので、心拍数の記録に関してはApple Watchが最高の精度という結果が出ています。*2
7種類のリストバンド型デバイスを比較する調査について
60人のボランティアによって7種類のリストバンド型デバイスを対象に、80項目の調査が実施されています。これは、現在多くの人が利用しているリストバンド型デバイスが、FDA(アメリカ医薬品局)の認定機器と比べて、どの程度の性能があるかを比較することを目的としています。測定誤差が5%以内であれば許容範囲と設定していましたが、Apple Watchは誤差2%と非常に優秀な成績を残しました。
消費カロリーの計測については残念な結果
一方、消費カロリーについてはどの端末についても誤差が大きく、信頼できる数値は得られないという残念な結果も明らかになっています。運動時の消費カロリーについては、利用者の身長や体重、基礎代謝や環境など複雑な要因が影響するため、なかなか正確に数値を出すことが難しいようです。フィットネスジムのサイクリングマシーンで表示される消費カロリーなども一定の目安にしか過ぎないというのがわかりますね。
より大規模なフィールドテストも実施
スタンフォード大学とAppleは、2017年11月から8ヶ月にわたって全米40万人が参加する大規模な調査を実施しています。Apple Watchの心拍センサーで不規則な鼓動が感知されたユーザーに対して、心房細動の危険があることを通知するというフィールドテストがその調査の内容です。実際に参加者の0.4%がこの通知を受け取り、そのうちの84%が医師の診断を経て心房細動を起こしていると判断されました。*3
”Apple Heart Study”と言われるこのフィールドテストからも、Apple Watchの心拍計としての性能の確かさが証明されていると言えます。Appleとしてもこうした実績を積み上げることで、フィットネストラッカーとしてのウエアラブル端末市場での信頼性を確保し、競合他社の製品に対する優位性を確立したいのでしょう。
一部機能が充実している他社製品も
このようにApple Watchは、フィットネストラッカーとしての機能は非常に高いものの、実は競合製品と比べて弱い部分もあります。例えば、「fitbit inspire」という製品は、Apple Watchに比べてバッテリーの持ちが良く、最大5日間充電なしで利用することができます。他にもサイレントアラーム機能や、より良い睡眠が得られるためのアドバイスなどの機能も充実しています。
本来、睡眠状態を記録するためには、端末を装着して寝る必要があります。Apple Watchは、バッテリー持ちがそれほど良くないので就寝中に充電する人も多く、それでは睡眠トラッカーとして利用することができません。これについては、バッテリーの性能を向上させるしか根本的な解決方法はありません。今回、新しく「バッテリー残量残充電量が30%になったら通知する」という機能を追加し、睡眠中の電池充電切れ防止をはかるなどの対策も取られるようです。
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スマートウォッチの利用状況調査
MMD研究所が実施した2019年のスマートウォッチの調査によると、スマートウォッチ所有者は「通知」「歩数計」「消費カロリー」をよく利用しているということです。これに次いで、「心拍測定」「睡眠計測」利用があげられます。筆者としては「モバイル決済」機能は非常に便利だと思うのですが、実際の利用者割合はまだそれほど多くないようです。*4
この調査は項目を細分化していますが、大きく「コミュニケーション(通知など)」「ヘルス関連」「ホビー関連」「その他」ぐらいに分類すると、ヘルス関連の情報取得を目的として、日常的に利用している人が多いことが予測できます。手首に常時装着し、24時間体制で身体情報を記録することができるわけですから、一番合理的な利用方法ではないでしょうか。
ヘルス・フィットネス関連の機能が今後のシェアに影響
当然、スマートウォッチをはじめとするウエアラブル端末メーカーでは、運動・睡眠・健康状態の記録、分析、それに基づくアドバイスなどの機能を充実させ、ユーザーのニーズに応える製品の開発に力を入れているところです。これは、スマートフォン市場でいまだに圧倒的なシェアを持っているAppleでも例外ではありません。
睡眠トラッキングのベンチャー企業を買収
Appleは2017年5月に、睡眠トラッキング製品を開発していたフィンランドのベンチャー企業である「Beddit」を買収しました。薄型のセンサーをベッドに設置することによって、睡眠状態を記録する製品を開発していた企業であり、現在はAppleのサイトから新しいバージョンを購入することができます。ただし、Apple Watchと違い常時装着するタイプではないため、例えば寝相が悪くセンサーの設置場所からずれてしまった場合などは正確な記録ができないという欠点があります。
何より、せっかくiPhoneとApple Watchを持っているのに、わざわざ別売のセンサーを購入しないといけないというのはAppleユーザーにとってデメリットでしかありません。Bedditで実現できる機能が、Apple Watchで可能になればユーザーにとって一番望ましい事であるはずです。今回明らかになったSleepという機能は、iPhoneとApple Watchを連携させることによって、より効果的できめ細かい睡眠トラッキングを実現させようとするものでしょう。
【まとめ】
今回の記事でご紹介したSleepは、Apple Watchに置けるリストバンド型デバイス市場でのヘルス・フィットネス関連のトラッカーとしての性能の強化をはかり、現在その分野で優位性を持っている競合他社製品に対抗することを目的としています。スマートウォッチ市場では、まだ圧倒的な優位性を保っているApple Watchですが、将来にわたってシェアを維持しその影響力を保てるかどうかは、ユーザーの多様なニーズに応える製品であり続けることができるかにかかっていると言えます。
これまで「プロダクトアウト」型の製品開発で自ら市場を創造し、ブランドを確立してきたAppleですが、成熟期を迎えてマーケットの要求に応える「マーケットイン」型の機能強化に軸足を移すことで、安定したシェアを維持する戦略にシフトしてきているのかもしれません。ユーザーとしては、これまで見たこともない新しい製品に心踊らされる経験も捨てがたいですが、自分の利用しているデバイスがより使いやすいものにブラッシュアップされていくことも現実的には重要です。Apple製品を使い続けることで得られる快適さを、どれだけのユーザーに訴求できるかが今後のAppleにとっても大事な部分となるのではないでしょうか。
*1
MacRumors
“Apple Watch Sleep Tracking, Schooltime Mode, AR/VR Headset Icon, and More Revealed in iOS 13 Code”
*3
Stanford Medicine News Center
“Apple Heart Study demonstrates ability of wearable technology to detect atrial fibrillation”
*4
スマートウォッチの所有率は18.0%、よく利用する機能は「通知、歩数計、消費カロリー」、スマートスピーカーの所有率は14.7%、よく利用する機能は「音楽視聴、天気予報、アラーム」
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