AppleのAR向けOS「glassOS」はなぜ期待されているのか
毎秋発表される新型iPhoneの発表に加え、現在密かに登場を期待されているのが、Appleの手がけるARグラス、そして専用OSの存在です。
AppleはPCからスマートフォン、さらにはスマートウォッチと、次世代のスタンダードとなるハードウェアをいくつも発表し、成功させてきました。
次なるフロンティアとして注目されるAR業界への参入も周囲では非常に期待されており、デベロッパー向けのARツールの提供は数年前より始まっています。
今回はAppleのAR向けOSとして期待されている、「glassOS」についてご紹介していきます。
目次:
①期待が寄せられるAppleのARグラス
②AppleのAR向けOSである「glassOS」
③周辺技術は徐々に公開されている
glassOSの概要
glass OSは、Appleが水面下で開発しているとされるAR(拡張現実)の技術を取り入れたゴーグル向けのOSで、向こう数年間の間に公式発表されると考えられている製品です。
2022年までに発表予定のglassOS
コミュニティの間では便宜上名付けられたApple謹製のAR向けOSのglassOSですが、正確な名前はまだ発表されていません。
2015年、AppleはVRとARに特化した開発チームである「Technology Development Group(TDG)」を社内で組織し、2つのARヘッドセット開発を行っていました*1。
軽量モデルを採用するか、ゲームプレイにも耐えうるハイスペックなモデルを主軸とするかで紆余曲折があった後、前者が採用されることになったというAppleのヘッドセット。
AppleのARハードウェアに関する公式発表は一切なく、これらはあくまで噂レベルの話題ではあるものの、多くのファンの心を捉えているエピソードです。
そんな長い年月をかけて開発されているAppleのARグラスは、2020年内の発表もあり得るという声もあり、少なくとも2022年にはアナウンスがあるだろうと言われています。
そして、このARグラスの発表に合わせて注目されているのが、専用OSであるglassOSというわけです。
iOS14をベースのコンセプトが発表
glassOSについての情報もまた、あくまで噂レベルに留まっており、公式からの発表はまだ行われておりません。
しかし、とあるデザイナーがiOS14をベースにしたglassOSのコンセプトデザインを独自に発表し、コミュニティの間で大いに話題となりました*2。
軽量なARグラスに見合う、普段使いに最適なミニマルデザインが予想されますが、iPhoneやApple Watchとどのように差別化していくのかに注目です。
なぜglassOSに注目が集まるのか
すでに多くのARグラスが開発されてきましたが、AppleのAR技術がなぜ注目されているのか、そしてどのような層に期待されているのかについて、見ていきましょう。
ARは今や実用的な技術に
一昔前では近未来の技術とされていたARですが、今や多くの業界において、ARは標準的な技術として普及が進んでいます。
ARの活用が進むのは、Webサービスや広告業界ではもちろんですが、建設業界や医療業界といった、私たちの生活に身近な業界においても導入が進んでいます。
建設物を実際の予定地へ仮想的に表示する技術や、患者の幹部をARグラス越しに正確に患者の身体上へ投影する技術など、その運用方法は様々です。
ソフトウェア開発から、ハードウェアの開発まで、ARは産業分野における注目度が、非常に高まっていると言えるでしょう。
AR開発に力をいれるApple
Appleもまた、ARの開発にかねてより力を入れてきた企業の1つです。
これまでハード面では大きな動きを見せることはなかったものの、以前からARKitシリーズと呼ばれる、開発者向けのARツールを提供してきました。
ARKit公式:https://developer.apple.com/jp/augmented-reality/arkit/
ARKitは、iPhoneやiPadなどのApple製品のカメラと親和性の高いモーションキャプチャ機能や、フェイストラッキング機能など、Appleに特化したツールに仕上がっています。
Apple製品はいずれもハードウェアの価格が高価である一方、非常に優れたポテンシャルを備えるプロダクトでもあります。
ARKitはそんなApple製品のさらなる普及を進めていく上でも重要なツールで、開発者の数が増えれば増えるほど、業界におけるApple需要の高まりも期待できます。
合わせてARKitはデベロッパーにとって魅力的な機能も備え、サードパーティのARKitベースでの開発を促進する役割を果たします。
Apple製ARグラスの登場や、glassOSのリリースは、このようなApple圏内のAR開発をさらに拡大していく可能性を秘めていると言えるでしょう。
登場が期待されている「Apple Glass」
ARKitの普及や5年以上もの歳月を費やして行われてきたAppleによるAR開発は、近々一区切りを迎えることになりそうです。
周辺技術は徐々に整う
ARグラス本体の公表こそ未だ行われていないものの、ARを支える周辺技術は着々と固められつつあります。
例えばAppleが開催した、開発者向けのイベント「WWDC20」では、同社が販売するワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」向けの立体音響技術を発表しました*3。
「Spatial Audio」と呼ばれるこの技術は、AirPodsの加速度センサーやジャイロセンサーを活用した音が聞こえる方向の調節を正確に行うことを可能にします。
頭の向きが変われば景色も変わり、音が聞こえてくる方角も変わるのが自然なインプットです。
ARの没入感をより深めるため、Appleはこういった新技術を組み合わせることで、最高のAR体験をユーザーに提供することを望んでいるのでしょう。
Google Glassの失敗から何を学ぶのか
ARグラスは大いに注目の集まる技術である一方、その取り組みがいつも前向きな結果を残してきたとは限りません。
例えばGoogleが2013年にリリースした「Google Glass」は、現実空間とスマホが一体化したような体験を届けてくれると話題になったものの、失敗に終わりました。
開発者向けに販売され、消費者には行き渡らなかったこの製品は、あくまでスマホをゴーグルに搭載するにとどまり、ARならではの体験を届けることはできなかったのです*4。
また、開発者向けのツールは評判が悪く、サポート体制もずさんであったことから、消費者はおろか開発者にも見放されたハードとして、Googleの歴史から消えていきました。
今の所、AppleのARツールは定評を集めており、周辺テクノロジーの充実も進んでいます。
前述の通り、やはり課題となるのがその他のスマートデバイスとの差別化になってくるのでしょう。
おわりに
Appleがハードウェア業界にもたらしてきた衝撃はいつも大きく、人々のライフスタイルを刷新するインパクトを届けてきました。
AppleのARグラスやそのOSの実態こそ不明ですが、私たちの期待通りか、それ以上の感動を伝えてくれることになるかもしれません。
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出典:
*1 iPhone Mania「Appleが開発中のARグラスはジョナサン・アイブ氏のデザイン哲学を反映している?」
https://iphone-mania.jp/news-297057/
*2 I build my ideas from Jordan Singer「glassOS How the new iOS 14 UI translates directly to Apple glasses」
https://ibuildmyideas.substack.com/p/glassos
*3 日経クロステック「「Apple Glass」への布石着々、アップルが立体音響やAR新機能」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04232/
*4 WIRED「アップルのARメガネは「カメラ非搭載で499ドル」という情報から見えた、グーグルの“失敗“から得た教訓の価値」
https://wired.jp/2020/06/29/apple-glass-ar-rumors/