住まいだって人工知能が生み出す時代。建築分野の舵をとるのはAI
建築や不動産業界でVRの活用が相次いでいることからも分かるように、テクノロジーをうまく組み込み、作業プロセスの効率化したり、顧客とのコミュニケーション密にしていこうとしたりする動きが広まっています。そして、そうしたテクノロジーの中で今最も注目を集めていると言っても過言ではないのがAI(人工知能)です。
AIは、「人間が行う行動を人工的に再現するもの」で、うまく活用することで作業効率が各段に向上します。その効率の高さから、しばしば人間そのもののパフォーマンスと比較されることがありますが、AIの使い方について選択肢を持つことができるのは私たち人間だけです。ですから私達は、AIと人間のパフォーマンスの高さを比較するのではなく、今後どのようにAIを活用すべきかを考えることが重要になります。そこで今回は、「建物」にテーマをあてたAIの活用方法に注目していきたいと思います。
①AIを利用した建築設計のメリット・デメリット
②AIの活用事例と今後の展望
③AIとの連携が期待されるBIMソフトどは?
AIが建物を生み出すことのメリット・デメリット
AIが建物を生み出すと聞くと、やや違和感を覚える方も多いかと思いますが、ここでいう「生み出す」とは、詳細な設計を始める前の基盤や方向性を導き出す作業のことを指します。AIで「生み出す」作業には、メリットとデメリットが存在しますので、まずはそれらを紹介していきたいと思います。
メリット:膨大なデータで顧客に見合った緻密な設計が可能
AIを用いることで、顧客の要望と過去の設計データに基づいて、建物の動線を考慮した無駄の少ない設計が可能になります。これまで設計者が感覚や感情で設計していた部分が数値として可視化されることで、論理的かつ緻密な設計を行うことができ、顧客のニーズに最大限応えることができるようになるのです。住宅レベルの規模の建物であれば、限られた敷地の中で、顧客の過大な要望を詰め込む「パズル」を解くような設計プロセスを行うことが多々ありますが、「パズル」の正解を解くことは、人間よりもコンピューターの方が早いですから、設計効率を大幅に向上させることに繋がります。
デメリット:人間の成長が止まることで斬新な発想が生まれにくくなる
AIが作業の中枢を担うようになると、人間が「考える」プロセスが省略される為、人間そのものの実力向上を妨げる可能性があります。今現在設計業務を行っている現役世代にとっては作業の能率アップになりますが、これから設計を学ぼうとする人間にとっては、成長の妨げになってしまいます。AIは「人間が活用するもの」という観点に立つと、人間そのものが、AIの導き出した答えの精度を判断できないというのは、非常に由々しい問題だと考えることができます。人現の実力が向上しなくなった時点でAIの精度の向上も見込めなくなるでしょうし、新しい発想を生み出すことも出来なくなるからです。
現状のAI活用事例と今後の展望
現在、建築分野でのAI活用は非常に軽微ですが、徐々に普及しつつあります。そこで、どの分野でどのように発展していくかについて紹介していきたいと思います。
建築企画
土地活用の有効性を瞬時に判断する必要のある建築企画の分野で、徐々にAIが浸透しています。土地の面積、建蔽率・容積率といった情報を入力するだけで、その土地にあった収益性の高いマンションの設計プランを作ることができます。賃料や収支も算出されるため、瞬時に事業に着手することができます。
現状の建築企画の手法は、現地や役所に調査に行った後に、いくつものプランを検討してようやく最善のプランが計画できる非常に時間のかかるものです。1週間程度の期間を要するものもあり、その間に土地が他人の手に渡り事業機会を失うことが多くありますが、AIが導入されることで迅速に意思決定を行うことができるようになります。今はまだ、AIが未熟ですから、精度の高いプランを計画できるわけではありませんが、今後情報が蓄積されることで、提案力の高い計画が瞬時に作成されるようになることが予想されます。
建築AIの最前線「AIさくらさん」
商業施設や駅のインフォメーションで活躍する「AIさくらさん」は、建築設計の分野でも活躍が期待されています。具体的には、老朽化した商業施設の建て替えや改修での使用を想定されています。商業施設内に来ているユーザーの行動履歴を調査することで、どのようなレイアウトであれば、商品が売れやすいか、どこに何の店を配置すればいいのかを、データに基づいて導き出すことができます。操作方法も非常に簡単で、クライアントの言葉を認識できるため、会話形式で希望に合った事例を導き出すことができます。
無人施工システム
建築機械を自動化するシステムにも注目が集まっています。製造業においては自動化が進んでいますが、建築分野では、一品生産という特徴があることから自動化で遅れをとっています。しかし、AIを導入することで、建築機械を自律走行させることが可能となり、一気に自動化が進むと予想されています。熟練作業員が行う操作情報を蓄積し、自律走行を可能とすることで無人で施工を行うことができるようになるのです。また、建築機械のカメラからの情報を基に、作業員の身体の向きから進む方向を予測し、危機を回避する技術も開発されています。
工程管理
工程管理は、技術者が現場を目で見て確認することが通常です。しかし、AIを使用することで、工場の写真から自動的に完成割合を算定してくれるので、容易に工事の進捗状況を把握することができます。人間の感覚に基づかない正確な測定を行うことができるので、工程を見誤らず、発注や人員配置を的確に行える利点があります。
住宅ローン
営業マンに変わって顧客に最適な住宅ローンを提案する機能としてもAIは活用されています。既に現時点の技術で、家族構成や勤続年数から住宅ローンの借り入れ限度額を試算することが可能となっています。住宅の借り入れローンは、条件と結果に因果関係が強く、過去のデータが非常に有効になる分野ですから、比較的AIの導入が進みやすい分野と言えるでしょう。
今後AIとの連携が期待されるBIMソフトとは
現状、建築設計の最前線とされているBIMでもAIの搭載は非常に軽微ですが、今後搭載されていくことが確実視されています。そこでAIの搭載が期待されているBIMソフトを紹介したいと思います。
「Revit(レビット)」
Revitは、アメリカのオートデスク社製の開発した3次元で設計を行うBIMソフトです。同社の手掛ける2次元ソフト「AutoCAD」の互換性が良く、意匠のみならず、構造・設備の設計も行うことができます。解析用ツールの開発が進んでいるので、今後データが蓄積されることで、AIとしての機能が追加されていくものと予想されています。
「ARCHICAD(アーキキャド)」
ハンガリーのグラフィック社が手がけていることで知られる、Windowsの建築用ソフトのアーキキャド。新国立競技場の作業プロセスでも活用されたことで知られるこのツールは、曲線を使った設計を得意としており、2次元と3次元の両方で作業を進めることのできるソフトになっています。
まとめ
AIは今後進化を遂げることで、建築分野のあらゆる場面で、確かなサポートとなる重要な機能です。AIに全てが任せきりになるということではなく、人間の思考を別の作業に移行ことを目的としてAIを活用していくことが重要になります。
(2019年2月8日アップデート)
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