建築BIMのマーケットサイズが拡大中!関連分野をご紹介
生産性向上や働き方改革の一環として、建築業界に取り入れられるICT技術に多くの期待が集まっています。BIMのマーケットサイズに関する予測は全世界的に上向きであり、BIMは建築業界でよりいっそう定着化していくでしょう。
この記事では建築業界のマーケットサイズに着目し、今後のBIMの展開予測とあわせてご紹介します。
建築業界は成長市場
まず、建築業界の投資規模やBIMのマーケットサイズに関する数値データをご紹介します。
国内の建設投資は活況
国土交通省がまとめた令和元年度建設投資見通しによると、建設投資の国内総生産に占める比率は9.8%です。令和元年度の建設投資は全体で62兆9,400億円、そのうち建築投資が41兆2,700億円となる見通しです。これは前年度の平成30年度と比べて3.4%増であり、成長が続いている業界といえます。(*1)
東京オリンピック以後も需要が続く見込み
なかには東京オリンピックに関わる建築案件のある時期がピークであり、その後は「建設バブル」がはじけて不況になるのではといわれる場合もあります。
しかし実際は、オリンピックにリソースが割かれて着手しきれていない手持ち工事が増加していることや、老朽したインフラの維持修繕、補修などの工事、オリンピック以外の大型インフラ工事も複数控えています。今後も建築需要が低くなることは考えにくい状況です。
建築業界におけるBIMのマーケットサイズ
BIMのマーケットサイズを世界規模でみると、2019年は推計49億ドル、2024年は89億ドルへと急成長すると予測されています。
北米では2007年から2012年のあいだにBIMの普及率が28%から71%にのび、ほぼ普及した状態になっています。また、日本におけるBIM導入の投資収益率(ROI)は97%です。同様にドイツ、フランスも97%、カナダが87%、ブラジルが85%と続き「BIMを導入すると効果がある」と捉えることができます。
BIM投資のROIが最も高いのは日本、ドイツ、フランスの建設会社で、国内ではBIMに大きな期待が集まっているのです。(2)(3)
建設現場はスマート化が加速
建築業界におけるBIMのマーケットサイズが拡大傾向とはいえ、急に対応できる人員が増えるわけではありません。人手不足の解消にはさまざまな対策が必要ですが、国はICTを活用して、現場作業者不足を補うことに大きく期待をしています。
以下は建設現場のスマート化として期待が集まっている技術です。また、これら用いるには、シミュレーションやプログラムする建物の情報としてBIMのデータが欠かせない分野も多くあります。BIMマーケットサイズが拡大するのは、以下のような技術の開発、現場への定着推進の動きがあるからといえるでしょう。
現場作業支援:タブレットサービス基盤の活用
工事現場にタブレットを持ち込むと、さまざまな用途に使えます。
・資料、図面の参照
・仕上げ検査などの結果撮影、記録
・BIMデータの確認、活用
タブレットは無線LANやBluetoothを搭載しているため、必要な情報や管理すべき情報が逐一管理サーバーに送られます。ノートパソコンよりも持ち運びやすくバッテリーのもちもよいため、工事現場での長時間使用に向いています。カバンのように紐をつけて肩から下げてしまえば両手をふさぐこともありません。(*4)
現場作業支援:自動化技術/ロボット開発
建設生産の分野で自動化やロボットの開発が進められているのは以下のような分野です。これらの技術を活用・シミュレーションするには、BIMのデータが欠かせません(*5)
・災害時の無人、遠隔操作による調査・施工
・繰り返し作業の自動化、ロボット化
・危険・苦渋箇所への新しい機械の導入・自動化
・マシンコントロールやガイダンスを活用した測量等施工品質の操作簡易化
・GIS(地理情報システム)、CAD等を用いた調査結果の一元管理や施工のトレーサビリティによる調査・施工の品質向上
・構造物の解体撤去の効率化や清掃、騒音・粉塵の防止、通行止め期間の短縮など建設現場周辺の住民利用者への不便、不快の軽減
生産性向上:「i-Construction」の推進
国は2016年から「i-Construction」として、働き方改革や生産性向上のために調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新という建設に関わるプロセス全体へのICT活用を推進しています。
目標は建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることであり、以下のような取り組みが行われています。(*6)
・パソコンとBIMデータなどを用いたペーパーレス化
・検査・書類の削減
・ドローンを用いた3次元測量
・新しい積算基準である「ICT土工用積算基準」を導入し、施工ICT建機の普及・施工を促進
生産性向上:BIM/CIMを活かした施工管理業務
設計時のBIM/CIMデータは見るだけのものではなくなってきています。たとえば従来は施工状況の確認する場合は、施工図から必要内容を転記したチェックリストを作成し必要な情報を記入、管理していました。
ここにBIMデータで一元管理するようプロセスを構築して実証を行ったところ、以下のような施工管理業務の効率化が図れたのです。(*7)
・BIMからチェックリストを自動作成する手法
・BIM上から検査のチェック済・未了の見える化
・複数の部材で構成された系統を一括で確認結果を記録
生産性向上:AIを活用した工事の事前シミュレーション
たとえば土木分野でトンネルシールド工事を行う場合、事前に地質・切刃など複数の条件を踏まえて検討をしないと思わぬ事故を引き起こします。切羽作業にAIを活用する場合「強度」「風化変質」「割目間隔」「割目状態」「走向傾斜」「湧水量」「劣化度合」など複数の要素でディープラーニングを行うと、高精度に切羽評価のシミュレーションが可能になり施工の安全確保に役立ちます。(*8)
作業者の健康管理:バイタル情報収集と活用
ヘルメットや手首、シャツなどに小型デバイスを設置すると、作業者の体温や脈、活動量、温度、湿度などの情報をもとに健康管理が行えます。(9)(10)(*11)
作業者の健康管理:アシストスーツ活用
アシストスーツは、主に介護や農業、運搬作業などで重量物を運ぶ際の負荷軽減に使われています。住宅建設にアシストスーツを用いると、以下のような上向き作業の負荷軽減に活用可能です。(*12)
・軒裏取り付け
・天井石膏ボードなどの重量物の持ち上げ
・天井付近のビス打ち
BIM/CIMは2025年度に全事業で原則適用が目標
国土交通省は、2020年に行われた第3回「BIM/CIM推進委員会」会合で、原則として2025年度には全事業でBIM/CIMの適用することを目標に掲げました。今後はBIM/CIM関連の規格等の標準化、高度利用の促進などが検討されて、BIM/CIMの普及・活用促進がすすめられていくでしょう。(*13)
2018年時点でのゼネコン各社におけるBIMの導入率が約76%、2019年時点での建築士事務所におけるBIMの導入率が約30%です。国の目標達成に向けてさらにマーケットサイズが拡大することが予測されます。
まとめ
BIMのマーケットサイズは、2019年が推計49億ドル、2024年は89億ドルと予測され、全世界的にBIMの普及が加速しています。建築業界のスマート化にはBIMの技術が欠かせません。国の施策に後押しされ、BIMのマーケットサイズは今後も拡大を続けていくでしょう。
参考URL
*1 https://www.mlit.go.jp/common/001302510.pdf
*2 https://www.dreamnews.jp/press/0000204102/
*3 http://bim-design.com/catalog/img/Smart_Market%20Report-Business%20value_of_BIM_%28JP%29.pdf
*4 https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/mikata/column/ieiri/001.html
*5 https://www.mlit.go.jp/common/000995047.pdf
*6 https://www.mlit.go.jp/common/001149595.pdf
*7 https://www.takenaka.co.jp/news/2017/11/01/index.html
*8 https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/ict/entry/002982.html
*9 https://www.toda.co.jp/news/2019/20190603.html
*10 https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2015/2015033.html
*11 https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/leading_edge/tech073.html
*12 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/16/20180516_3.pdf
*13 https://www.mlit.go.jp/common/001327974.pdf
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