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建設業で必須の工事請負契約とは?業界の特徴も解説します

建設業の大きな特徴として、着工前に工事請負契約を交付する点が挙げられます。建設業では民法のほかに建設業法があり、契約には書類の交付が義務付けられています。

この記事では、建設業界の特徴と工事請負契約の基本、作成者が知っておきたいポイントを解説します。

建設業における契約の特徴

建設業の契約は、他業界といくつか違いがあります。まずは建設業の主な特徴から見ていきましょう。

建設業は公共事業案件が多い

建設業は、政府や地方公共団体の依頼による公共案件事業が多い点が特徴です。中でも橋梁やダム、道路といった土木工事が圧倒的に多くなっています。平成28年度の建設投資見通しでは、公共事業の建設投資のうち87%にあたり19.0兆円が土木工事となっています。(※1)

公共事業案件が多い分、建設業では契約書を始め多くの書類を取り交わします。

着工前に工事請負契約書を取り交わす

建設業では、工事を始める前に必ず工事請負契約書を取り交わす必要があります。工事請負契約書の取り交わしは建設業法によって定められており、この点は建設業の大きな特徴といえるでしょう。

工事請負契約書とは、「期日までに約束した金額で、このような建物を建てます」と約束したことを明記する書類です。このほか、契約時には約款や設計図書、見積書といった書類も一緒に取り交わします。

多くの業界でも当たり前の契約書ですが、基本的に契約自体は「口約束」でも成り立ちます。有事の際でなければ、契約書の出番は多くありません。しかし建設業の場合は民法のほかに建設業法の定めがあるため、工事請負契約書が絶対に必要となります。

「請負」と「委任」の決定的な違い

契約には請負と委任がありますが、建設業では請負契約が一般的です。混同しがちな請負と委任ですが、法律上この2つは大きく意味が異なります。

まず請負契約の場合は仕事の「完成」を約束するもので、依頼主は成果に対して報酬を支払います。つまり工事請負契約書を取り交わしたら、建設事業者はミスなく工事を完遂させなくてはいけません。成果が果たせなければ、その責任は依頼先である建設業者が負うことになります。

請負契約が一般的な業務としては、建設業以外にもクリーニング業や洋服の仕立て、運送業などがあります。

一方で委任契約は、法律行為を約束するものです。仕事の完遂が目的ではなく、依頼先は結果に対して責任を持ちません。依頼先が努力した結果成果が出なかったとしても、問題はなく責任問題にはならないのです。

代表的な委任契約は弁護士業です。裁判に勝っても負けても、委任契約をした依頼者は弁護士に対して報酬を支払う必要があります。

上記のように、請負と委任は約束する内容が大きく異なるのです。法律行為ではない建設業は、請負契約が一般的となります。

事業者が知っておきたい工事請負契約の基本

建設業において、工事請負契約書は大変重要な契約書です。なぜ書面が必要なのかを解説します。

工事請負契約の作成は建設業法の義務である

前述の通り建設業界では工事請負契約書の取り交わしが必須ですが、その根拠は建設業法の第19条にあります。

建設業法では、以下のように明記されています。

<引用>(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。<引用ここまで>
引用元:建設業法(昭和二十四年法律第百号)より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100

上記の建設業法により、どのような工事でもまず工事請負契約書を取り交わさなくてはいけません。(契約書に記載する必要事項については、「必須となる14項目」にて解説します。)

工事請負契約書を取り交わさないリスク

建設業者が工事前に工事請負契約書を取り交わさないと、業務自体が危ぶまれるリスクがあります。

工事請負契約書を取り交わしていないと、建設業法違反となり行政処分の対象となります。行政処分には最も軽い業務改善命令のほかに、1年以内の営業停止処分、最も重い建設業許可の取り消しの3段階があります。

工事請負契約書の取り交わしを数回忘れただけでは、建設作業許可が取り消される可能性は低いかもしれません。しかし違反内容やその常習性によっては、厳しい処分が下される可能性もあるのです。

また、契約書を取り交わしていなければ「言った言わない」の水掛け論になり、関係者を巻き込むトラブルに発展する恐れもあります。

工事請負契約書の作成者が知っておきたい事

建設業で工事請負契約書を作成する担当者が知っておくべき、必須項目と作成方法を解説します。

必須となる14項目

工事請負契約書の様式はある程度自由ですが、以下の14項目は必須です。

1.工事内容
2.請負代金の額
3.工事着手の時期及び工事完成時期
4.請負代金の全部または一部の前金や出来形部分に対する支払いを決めるときは、支払いの時期とその方法
5.設計変更や工事着手の延期、工事の全部または一部の中止申し出がどちらかからあった場合、変更した工期や請負代金、損害の負担や金額の算定方法
6.天災など不可抗力による工期の変更や損害負担の金額や算定方法
7.物価が変化した場合の請負代金の額や工事内容の変更
8.工事の施工によって第三者が損害を受けた場合の賠償金負担について
9.注文者が工事に使用する資材を提供したり建設機械などを貸与したりするときは、その内容や方法について
10.注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための、検査時期や方法と引き渡しの時期
11.工事完成後の請負代金の支払い時期や方法
12.工事の目的物が契約内容に適合しない場合、その不適合を担保すべき責任。または当該責任の履行で講ずべき補償保険契約の締結やその他措置に関する定めを行う時はその内容
13.各当事者の履行遅延や債務不履行の場合について、遅延利息や違約金、その他の損害金について
14.契約に関する紛争が起こった場合の解決方法

参照:政府資料
https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/kensetugyo/pdf/08.pdf

工事請負契約書の作成方法

工事請負契約書を作成する場合、以下の3つのパターンから自社に合った方法を選びましょう。

エクセルやワードで1から作成する

必要事項を盛り込み、自分でエクセルやワードで作成することも可能です。文面も自分で考えられるので、より自社やその案件に適した契約書を作成できます。

テンプレートを使用する

工事請負契約書を自分で1から作成するのが面倒なら、テンプレートを活用する方法があります。インターネット上では様々な工事請負契約書のテンプレートが公開されており、無料でダウンロードできます。また、国土交通省の各地方整備局で公開されているテンプレートもおすすめです。

外注する

工事請負契約書の作成を楽に、そして確実に行いたい場合は、弁護士などに外注する方法もあります。費用はかかりますが、専門家が作成してくれるので初心者の方も安心です。

工事請負契約で事業者が注意しておきたいポイント

最後に、建設事業者が工事請負契約で気を付けるべきポイントをまとめます。

建設業の許可がなくても工事請負契約書の作成は必須

小規模の工事で建設業許可を受けていない場合でも、工事請負契約書の交付は必要です。

下請けや元請け、工事の規模や種類を問わず、どんな小規模な工事であっても契約書は欠かせません。万が一工事請負契約書を取り交わしていないことが公になれば、行政処分の対象になる可能性があります。

テンプレートを使う際は事業者の有利性も要チェック

工事請負契約書をテンプレートから作成する場合、内容はしっかりチェックしておきましょう。テンプレートの場合、内容は発注者側に有利な内容になっているケースが少なくありません。

そもそもテンプレートはあくまでも一般的なケースを想定しています。当然ながら案件ごとの工事に最適とは限りませんから、テンプレートを使う場合も1から作成する気持ちで、内容を隅々まで把握しておきましょう。

  

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参照
※1 https://www.mlit.go.jp/common/001149561.pdf(P.3建設投資の内訳より)

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