ユーザビリティーを評価する5つの視点
ユーザビリティー(usability)の意味には、さまざまなものがあります。一般的に「使いやすさ」と考えられることが多く、使いやすさは「操作性」という言葉で置き換えられます。
操作が簡単なだけではなく「利便性が高い」こともユーザビリティーのひとつとして考えられます。ユーザーに利用価値をもたらすからです。
たとえば、ECサイトのレコメンデーション(おすすめ)機能や、ニュースサイトなど関連記事へのリンクは、操作性に関連がありません。しかし、それらがあることによって、ユーザーは価値のある情報を得られます。広範な意味ではユーザビリティーとして重要ではないでしょうか。
ユーザビリティーの評価は、国際標準化機構(ISO)による項目と、工学博士ヤコブ・ニールセンが著書『ユーザビリティエンジニアリング原論』で提示した項目の2つが代表的です。
ISO 9241-11では、次の4つを挙げています。
・有効性 (Effectiveness)
・効率(Efficiency)
・満足度(Satisfaction)
・利用環境(Context of use)
一方、ヤコブ・ニールセンは、5つの特性を挙げています。
・学習しやすさ(Learnability)
・効率(Efficiency)
・記憶しやすさ(Memorability)
・エラー(Errors)
・主観的満足度(Satisfaction)
共通項目は「効率」と「満足度」です。つまり、時間や手間をかけずに満足した結果を得られることが最も重要であると考えてよいでしょう。
このような一般的に知られているユーザビリティー評価を前提に、あらためてユーザビリティーを考察して5つの視点でまとめてみました。
1. 目的を達成できるか
ユーザビリティーというと、一般的に注目するのはデザインと操作性です。ECサイトで商品をすぐに購入できるボタンや、ストレスのない画面遷移をユーザビリティーとしてとらえがちです。
しかし、ユーザーの目的は効率だけではありません。
「詳しい情報が知りたい」ユーザーに、情報量の少ないコンテンツを提供すると、ユーザーはさらに別のコンテンツを探さなければなりません。これでは非効率です。
スピードを求めているユーザーにはスピードを、情報の深さを求めているユーザーには詳細な情報を、エンターテイメントを求めているユーザーには面白さを提供することが、目的を達成するユーザビリティーです。
2. 使用者の時間的・心理的負荷を下げられるか
ユーザーの満足度を上げる前提条件は、ストレスをかけないことです。ストレスには時間的な負荷、心理的負荷があります。
時間的負荷は、求めている情報に辿り着くまでに何度も画面遷移やクリックやタップをしなければならないときに生じます。また、最後まで読まなければ有益な情報が得られなかったり、最後まで読んでも何ひとつ役立つ情報がなかったりした場合には負荷になります。
心理的負荷は、アプリを利用するのに必要以上の個人情報を入力させたり、退会する方法が分かりにくい場所に隠されていたりするような場合です。
3. プラスαの体験をもたらすか
顧客満足度は、マイナス要因を取り除いても向上につながるとは限りません。アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した動機づけの理論では、満足度を上げる要因は不満足の要因とは別物であると指摘しています。
カイゼン好きな日本人は、ユーザビリティー調査の結果から、不満のある項目を修正や改良すれば満足度が上がると考える傾向があります。
しかし、満足度を上げるためには、ユーザーにとってプラスαとなる体験を用意すべきです。サプライズやスペシャルな体験の提供が、結果的にユーザビリティーを飛躍的に向上させることがあります。
4. シンプルか
アップル社はiPhoneの操作ボタンをたったひとつにしました。徹底的にシンプルにすることで洗練された操作性を実現します。
設計当初はシンプルでも、開発や制作の段階で「こんな機能があったら便利じゃないか」「このコンテンツは入れたい」という要望をすべて盛り込んでしまうと、結果的にユーザビリティーは著しく低下します。
シンプル・イズ・ベストです。
5. デファクトスタンダードになり得る品質か
iPhoneの登場以降、タッチパネルのインターフェースはスマートフォンの常識になりました。
優れたユーザビリティーは、デファクトスタンダード(事実上の業界標準)になります。開発者やデザイナー世界標準になるほどの高品質のユーザビリティーを目標とすべきです。
ユーザビリティーは時代の変化に端末の進化によっても変わります。今後、IoTやロボットの普及により、ユーザビリティーを評価する視点を変える必要があるかもしれません。
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