3次元CAD「CATIA」の特徴や最新動向について解説!
CATIAは製造業よく使われているCADシステムです。しかし名前は聞いたことがあっても、なんとなく敷居が高いイメージがあって具体的にどんなCADかよくわからないという場合も多いでしょう。この記事では、製造業で多く使用されているCATIAについて特徴や普及しているCATIA V5、最新の3DEXPERIENCE CATIAとはどういったものなのかについて紹介します。
CATIAはヒストリーCADで設計変更に強い
CADには、ノンヒストリーCADとヒストリーCADがあり、CATIAはヒストリーCADに分類されます。
ノンヒストリーCADは手軽に形状が作製できる
ヒストリーとは作業履歴のことであり、ノンヒストリーCADの場合、3次元の形状は粘土をこねるように少しずつ変形させ作り込んでいきます。
データの構造がシンプルで、自由に形状を作製できるものの、曲面を使った場合など、形状が複雑になってくると「あそこの場所をもう一度編集したい」といった作業がやりづらい特徴があります。
ヒストリーCADは設計変更に強い
ヒストリーCADは、画面の周囲に操作履歴(ヒストリー)が表示されています。CATIAの場合、画面左側にあるツリーの該当箇所をクリックすると定義されている形状や寸法を任意に変更することができます。
任意のタイミングで設計変更できるので、開発途中で形状を適宜作り変えたい場合に便利です。一方、各機能がどういった働きをしているのかや、どういう順番で作業するかにより完成形状が変わるため、履歴をどのように作製するかのルール決めや、どこの部分に寸法を定義すべきか設計スキルが求められます。
CATIAはハイエンドCADのひとつ
CATIAはフランスのダッソーシステムズ社で開発されています。アメリカのPTC社が開発したCreo、ドイツのシーメンスPLMソフトウェアが開発したNXとならぶ、ハイエンドCADのひとつです。
ハイエンドCADの場合、複雑な曲面や多くの部品を取り扱うのに優れています。CATIAの場合は、ワークベンチと呼ばれるたくさんのツール群があり、多くの製品の複雑な形状が作れます。
製造業でのユーザー数が多い
CATIAは航空機・自動車・家電業界・宇宙産業など多くの製造業で使われていて、日本ではトヨタ自動車などで使用されていることが知られています。また、食品業界や医薬品、ダムなどの建築業界でも使われています。
CATIAは設計の全行程に対応している
CATIAの開発元ダッソーシステムズでは、CATIAに限らず以下のように多くのソフトウェアを開発しています。(*1)
それぞれのソフトウェアを組み合わせると、デザイン面の作製から設計、開発、評価、解析、生産工場と、製造にかかわる複数の工程に対応できます。高度な形状作成能力、詳細な設計検証ができるところがCATIAの強みのひとつです。
・CATIA:3DCAD設計ソフトウェア
・SOLIDWORKS:3DCAD設計ソフトウェア
・ENOVIA:データ管理に特化したソフトウェア
・DELMIA:製造ライン向けソフトウェア
・SIMULIA:解析ソフトウェア
たとえば、熱解析や強度解析、照明、塵埃、など開発時にはさまざまなシミュレーションを行う必要がありますが、同じ開発会社のソフトウェアは、基本的なデータ構造に共通部分が多いです。
CATIAを使っているユーザーが解析にSIMULIAを使うのであれば、CATIAで作製したデータをSTEPなどの中間ファイルなどに変換せず直接CATIAのデータが使えるため、データの互換性に注意する必要がありません。
各メーカーのソフトウェアは特徴が異なるため、一概にダッソーシステムズのソフトウェアを使いさえすればよいとは言い切れません。しかし、同じ開発元のソフトウェアを使うことは、データの連携面を考えると非常に使い勝手がよいといえるでしょう。
CATIAのワークベンチとはどんなもの?
CATIAの機能をグループ化したワークベンチは、各設計シーンに特化していて、企業ごとに必要なワークベンチを選び分けて使用します。
以下はワークベンチの一例ですが、デザイン面や必要な形状を作製し、適宜解析を行うというデザインから設計(製造)までの工程が1つのCATIA上で完結できることがわかります。(*2)
デザイン面関連
・フリースタイルシェイパー:複雑なデザインサーフェスが作製可能
・ジェネレーティブ・シェイプ・デザイン:サーフェス作製する際に使用
部品作製関連
・パート・デザイン:基本となる3D形状を作製する際に使用
・ファンクショナル・モールド・パート:樹脂部品の作製に特化
・シートメタル・デザイン:板金形状の作製に特化
・アセンブリ・デザイン:各3D部品を組み合わせる際に使用
・3Dファンクショナル・トレランシング・ オートメーション:3次元データに直接寸法や公差を入力し、3D図面データを作製可能
回路基板関連
・サーキットボードデザイン:プリント回路基板の機械的形状が作製可能
・エレクトリカルワイヤールーティング:スプライン曲線よりも適格にワイヤーの形状作製が可能
解析・シミュレーション関連
・ノンリニア・ストラクチャル:アナリシス:非線形構造解析用ワークベンチ
・サーマル・アナリシス:熱解析用ワークベンチ
CATIAの主力はV5、3D EXPERIENCE
CAITAは1980年代ごろから継続して開発されてきたCADで、大きな仕様変更にともないV1、V2と名前が変更されてきました。現在は「CATIA V5」と「3DEXPERIENCE CATIA」が主力のソフトウェアです。
CATIA V5とは
CATIA V4からV5になるにあたり、UNIXベースからWindowsベースになったため、よりたくさんのユーザーから指示されるようになりました。
バージョンはCATIA V5-6R2019(R29)のように示され、CATIA V5の29回目のリリースである、ということが示されます。都度機能改善が進められて、R29のさらに下位バージョンアップとして、サービスパック、ホットフィックスなどが発行されることもあります。
3DEXPERIENCE CATIAとは
3DEXPERIENCE CATIAは、CATIA V5の後継であるV6を更に進化させたソフトウェアです。CATIA V6では設計CADであるCATIAと、CADデータのファイルやリビジョンを適切に管理するPDM(Product Data Management)ツールであるENOVIAとが統合されました。
CADのデータは作製に時間がかかるものの、さまざまな情報を盛り込むことができます。そのため、設計する形状を製造にかかわるすべての工程で使えるようにするというPLM(Product Life cycle Management)の考えがもとになっています。
3DEXPERIENCE CATIAは、ここまで紹介してきたCATIA以外のSIMULIAやDELMIAなどさまざまなツールと連携が可能。軽量化されたCADデータやクラウド処理なども活用しながら、ユーザーの視点やユーザー体験の検証ができます。
車を運転した場合の視界の変化をユーザー体験したり、実際に衝突した場合のシミュレーション結果をさまざまな角度からバーチャル評価したりなど、実際使ってみてどうかという評価までが行えます。設計だけにとどまらず、CADデータを使いVR体験ができるツールへと進化してきています。(*3)
まとめ
CATIAはフランスのダッソーシステムズ社で開発されているCADで、複雑な形状が作れることから航空機や自動車業界など多くの開発部門から指示されてきました。
最新のソフトウェアである3DEXPERIENCE CATIAは、ダッソーシステムズの複数のシステムを統合。形状データの作成と解析にとどまらず、ユーザー体験やバーチャル評価などより直観的に理解しやすい具体的な評価ができるCADへと進化を続けています。
参考URL
*1 https://www.3ds.com/ja/products-services/
*2 https://www.3ds.com/ja/products-services/catia/products/v5/portfolio/
*3 https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1806/08/news003.html
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