Googleが実施した新型コロナ対策のまとめ
現在、世界中を席巻し産業や生活に大きな影響を及ぼしている新型コロナですが、Google・Facebook・TwitterなどのIT企業も、矢継ぎ早に各種の対策を実施しています。国内では、中国や台湾での生産の停滞からiPhoneが入手しにくくなっている状況などもあり、このような巨大IT企業も影響は避けられない状態です。今回は特にGoogleが最近発表した対策についてまとめてみます。(本記事は2020年3月11日時点の情報に基づき作成しています。)*注1
この記事でわかること
・Googleが発表した新型コロナ対策のための対応
・猛威を振るう新型コロナに対するGAFAの対応
・G Suite for Educationの概要
Googleが発表した新型コロナ対策のための対応
日本での新型コロナの状況と政府の対応
日本の政府は、新型コロナウィルス対策本部において第2弾となる緊急対応策を決定しました。医療関係・学校休業に伴う対策、事業活動や雇用への対策などが含まれます。
◯感染拡大防止と医療提供体制の整備 486億円
・保育所、介護施設の感染拡大防止
・総合的なマスク対策
・ウィルス検査体制の強化
・医療提供体制の整備
・治療薬の開発加速
◯学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応 2463億円
・保護者への休暇取得支援
・放課後児童クラブの体制強化
・給食休止の対応
◯事業活動の縮小や雇用への対応 1192億円
・雇用調整助成金の特例措置の拡大
・資金繰り対策
・観光業への対応
◯事態の変化に即応した緊急措置 155億円
・WHOによる感染国への緊急支援への拠出
これらの予算措置に加えて、日本政策金融公庫では個人事業主や中小・小規模事業者向け実質無利子・無担保の融資、1兆6000億円規模の資金繰り対策を実施します。また、マスクの転売防止の対策も取られるとのことです。大規模イベントへの自粛も、今月19日に開かれる予定の専門家会議での判断が出るまで継続するよう要請が出されました。*注2
人・モノの移動制限に伴う産業や生活への影響が続く
新型コロナの影響は、人の移動やモノの流通にも深刻な影響を与えています。日本では中国・韓国の発給済みビザの効力を停止するなどの対応に加え、新たにイタリアの一部地域からの入国についても制限が実施されます。欧州では際立って感染者の多いイタリアでは、世界で二番目に多い、新型コロナによる死者が出ていると報告されています。*注3
連日のニュースでも取り上げられている通り、観光業や飲食業、各種エンターテイメント系の産業などはすでに大きな影響が出ています。現代における製造業についても、サプライチェーンが全世界に広がっていることも多く、実際にAppleのiPhoneなど生産が停滞するなど、今後の長期化が世界経済への深刻なダメージを与えることが懸念されます。国内では学校の休業に伴い、学習機会の喪失や子供の世話で仕事を休むことによる経済的な損失も心配されます。
Google Japanが発表した新型コロナへの支援と対応
3月9日にGoogle Japan Blogにおいて「新型コロナウイルス感染症に関する対応と支援について」と題される各種対策が発表されました。*注4
【Googleの対策】
1 有用な情報を見つけられるよう支援する
2 間違った情報から人々を守る
3 つながりを保ち、生産性を維持するために
4 救援活動と政府機関を支援する
震災時にも経験したことですが、私たちが日常的に利用しているSNSや各種ネットサービスが、デマを拡散する媒体として働いてしまうという事実があります。直近では「トイレットペーパーが不足する」というデマに踊らされて買い占めに走る人が多く出たため、店頭では品薄になるという事態が発生しています。Googleは信頼できる情報を正しく伝えるための対策として上記の1・2に取り組むこととしました。具体的には次のような内容となります。*注5
1.有用な情報を見つけられるよう支援する
◯Google検索
・SOSアラートで最新のニュースを掲載
・内閣官房新型インフルエンザ対策室や世界保健機関(WHO)が提供する情報のリンクを表示
◯Youtube
・「新型コロナウィルス」などのキーワード検索を行うと、内閣官房新型インフルエンザ対策室へのリンクを表示
2.間違った情報から人々を守る
◯Google広告
・間違った情報からユーザーを保護するための対策を実施
・Trust and Safetyチームが24時間体制で稼働
・新型コロナウィルスの状況を利用した広告を過去6週間で数万件ブロック
◯Google Play
・配慮が求められる事象(自然災害、残虐行為、紛争、死、その他悲劇的な事象)を利用したアプリの開発を禁止(制限されるコンテンツ)
・「医療や健康に関連する機能を備えたアプリのうち、誤解を招くものまたは有害な可能性のあるもの」の禁止(コンテンツポリシー)
3.つながりを保ち、生産性を維持するために
◯G Suite / G Suite for Education
・世界中のすべての G Suite / G Suite for Education ユーザーに向け、高度な Hangouts Meet ビデオ会議機能へのアクセスを無料で提供
4.救援活動と政府機関を支援する
・世界保健機関(WHO)と各国政府を対象に、2500万ドルの広告クレジットを提供
検索サービスを提供するGoogleとしては、このような世界レベルの問題が発生した際に、多くの人が利用する情報収集に対して正確で正しいソースを示すことが求められます。そのため、専門チームを配置し24時間体制で、監視と修正を加えるなどの対応を取っているとのことです。多くのSNSサービスでも同様の措置を実施し、誤情報や悪意のある情報が出回らないように注意しています。*注6
・Twitter トレンド機能の悪用禁止措置
・Facebook 虚偽の投稿の制限、人に害を及ぼす可能性のあるコンテンツの削除
・Instagram ハッシュタグの制限
プラットフォームにも正しい情報を提供することが求められる
SNSの普及やインターネットへのモバイル端末でのアクセスが容易になった現代では、一般の人々が自由に情報を共有することで、玉石混合のさまざまな話題がネット上を飛び交っています。そこから正しいものを選択し、自分で判断できるだけの情報リテラシィが重要となります。以前はSNSサービスを提供する事業者は、あくまでプラットフォームとして機能するだけで情報の正誤については利用者が責任を持つことが普通でした。
しかし、その影響力の大きさや実際にTwitterやFacebookなどのSNSから流れてくる誤情報が、災害発生時などにデマとして拡散されたこともあり、事業者としてもデマや誤情報を防止する努力が求められるようになっています。Google・Twitter・Facebookなどが、このような対策に素早く取り組んでいるのも、そのような背景があるものと考えられます。
しかし、全ての悪意ある情報を完全に遮断することはできませんので、やはり情報の受け手である私たちにとって、信頼できるソースであるか自分で判断することの重要性はこれまでと変わりはありません。
猛威を振るう新型コロナに対するGAFAの対応
コロナ対策によって、通常営業を停止し在宅勤務を進める企業にとって、オンライン会議システムが重要さを増しています。前述した通り、Googleが全世界のG Suite・G Suite for Education利用者に無償でHungout Meetの上位サービスを、またマイクロソフトも同社のチームコラボレーションアプリ「Teams」のフル機能版を6ヶ月間無償で提供します。もちろん、これを機会にそれぞれのサービスに触れることで、新型コロナ収束後も有償版のユーザーを増やしたいという思惑もあるとは思います。
虚偽情報の制限と取り締まり
アマゾンでは虚偽の効果をうたった商品や、コロナウィルス陰謀説などの書籍の削除に取り組んでいます。Facebookは価格吊り上げを防止する目的で、医療用マスクの広告を全面禁止しました。
在宅勤務とギグ労働者への給与支払いの保証
新型コロナは企業だけでなく、労働者にも深刻な影響を与えています。GAFAでも例外ではなく、感染の拡大防止を目的として在宅勤務を実施しました。Googleが10万人、マイクロソフトが5万4000人、アマゾンが5万人ということですから、地域経済への影響は計り知れません。
アメリカの場合、時間給で働く人や短期・臨時の契約で働くギグ労働者と呼ばれる人も多く存在します。このような労働者の場合、「在宅勤務」イコール「無収入」となってしまい、非常に不安定な状態です。この問題に対してマイクロソフトは、ギグ労働者に対しても在宅勤務とみなし、給与を保証すると発表しました。アマゾン・Facebook・Googleがこれに続くことで、労働者の不安解消につとめています。*注7
G Suite for Educationの概要
国内では小学校から高校まで長期の休業となり、学習機会の喪失や家庭での過ごし方などへの対応が求められています。Google Japanでは、特にこの問題に対するサポートとして、G Suite for EducationやChromebook LTEの無償提供などのプログラムをスタートさせました。経済産業省が運営する「未来の教室」では、「新型コロナ感染症による休業対策」(#学びを止めない未来の教室)としてその内容を紹介しています。
1)Chromebook LTE(SIM付き)端末またはWi-Fi端末の無償貸出※ただし、貸出台数に制限あり
・学校や自治体単位で申し込み可能
使用者は端末やWi-Fi環境のない生徒とその教師
・無料(春休みが終わるまでの期間)
2)G Suite for Education アカウントの新規登録サポート
・学校、クラス単位(無料)
3)G Suiteの使い方サポート(オンライン研修)
・学校単位(無料)
G Suite for Educationは、豊富な教育ツールを使って時間と場所にとらわれずコラボレーションできるサービスです。教師向けに充実したリソースがあり、容易に拡張が可能でTeacher Centerでトレーニングも受けられます。多層セキュリティが施され、24時間365日のサポートがあり、安全にも十分な配慮がなされています。
Gmail・ドライブ・カレンダー・ドキュメント・スプレッドシート・スライドなど豊富なソフトがあり、無料の範囲でも充実した作業環境があるのも大きな特徴です。
特に自宅学習する学生とオンラインでのコミュニケーションを可能にする「Hangouts Meet」は、有料版と同じレベルでのサービスを解放していますので、制約を気にせず自由に利用することができます。学生の学習状況を管理しながら、共同作業を可能にする「Classroom」も、自宅学習をサポートするのに最適なツールであり、これを機会に教育現場での活用が進む流れになるのかもしれません。
【まとめ】
新型コロナによる経済や生活への影響が懸念される状態になっていますが、見方を変えるとSlackやZoomなどのコラボレーションサービス、ビデオ会議サービスを提供する事業者、自宅で過ごす人が多く利用するNetflixやDisney、出前サービスのUber Eatsなど、多くのIT企業にとって顧客を拡大するビジネスチャンスとも考えられます。暗い話ばかりでなく、このような機会をチャンスと捉え、新しい形での働き方や学習など発達したITサービスを上手に活用しながら取り組んでいきたいものです。
■参考文献
注1 Yahoo! Japan ニュース 「新型コロナウイルスの感染拡大が「iPhone」の生産体制に及ぼす影響」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kokuboshigenobu/20200307-00166558/
Key Walker 「新型コロナウィルスがiPhoneのサプライチェーンに与える影響とは?」
https://www.keywalker.co.jp/blog/effects-of-coronavirus-infection.html
注2 NHK WEB NEWS 「大規模イベント自粛要請「今後10日間程度は継続を」首相」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200310/k10012323711000.html
注3 日本経済新聞 「人の動き滞る世界 新型コロナ、日本は入国制限を発動」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56542260Y0A300C2MM8000/
読売新聞 Digital 「イタリアの5州など入国拒否へ 新型コロナで、欧州は初」
https://www.asahi.com/articles/ASN397KZBN39UTFK038.html
注4 Google Japan Blog 「新型コロナウイルス感染症に関する対応と支援について」
https://japan.googleblog.com/2020/03/blog-post.html
注5 東洋経済 「「震災時のデマ」が善意を元に広がるカラクリ」
https://toyokeizai.net/articles/-/237289
日本データ通信協会 迷惑メール相談センター
「新型コロナウイルスに関するチェーンメッセージ(チェーンメール)の相談が多く寄せられています。」
https://www.dekyo.or.jp/soudan/contents/eq/
注6 ITmedia NEWS 「新型コロナのデマ撲滅へ Googleなどが検索に特別措置」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2003/10/news081.html
注7 ビジネス+IT 「新型肺炎にGAFAらはどう動いた?無料提供、社員への指示、イベント自粛など対応まとめ」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/37768
So-net ニュース 「【襲来!新型コロナウイルス】これぞ「世界基準」! GAFAが見せた「時給労働者」への「神対応」」
https://news.so-net.ne.jp/article/detail/1929932/
Bloomberg ”White House Meets With Tech Firms on Coronavirus Response”
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-03-11/white-house-meets-with-tech-companies-on-coronavirus-response
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