A.I. Experimentsで体感 – AIが犬を認識するまで
今回は昨今注目されているAI(人工知能)をテーマに、Googleが公開したAIを体験できるWebサービス『A.I. Experiments』を紹介したい。
そもそもAIとは?
AIは、1950年代に本格的な研究分野としてスタートし、当時の研究者たちは楽観的に人間の知能をコンピューターで再現できると考えていた。しかし、当時のアルゴリズムや計算能力では再現できないことが判明すると、AI研究は、1970年代〜2000年代半ばまで”冬の時代”を過ごすこととなる。そのAIが2005年以降、脳のニューラルネットワークが学習するプロセスからヒントを得た”ディープラーニング”と共に再度注目されることとなった。
「脳のニューラルネットワークが学習するプロセス」を簡単に説明すると、このようになる。職場で上司が、部下にこんなことを言っているところを想像してみてほしい。
「今日の夜までに、明日のミーティングの資料を仕上げて、僕に”きゅうり”しておいてね」
当然部下は、「”きゅうり”しておいてね」という予測していなかったことを言われ驚くだろう。なぜだろうか?そもそも脳はパターンを学習することによって言語を習得している。そして、その学習したパターンを活用して、会話の中で次の文章を予測しながら理解する。
つまり部下の脳は、「”メール”しておいてね」と予測していたにもかかわらず、”きゅうり”という全く予想外の単語が出てきたので驚く。これは、意識的にコントロールするものではなく、日本人であれば小さな時から膨大に学習したパターンを元に脳が自動的に行なっている。決してひとつひとつの単語の意味や文法、論理を意識的に考えながら会話をしてるわけではないことは、自分自身の感覚として理解できるのではないだろうか。
人間の脳のように学習する、ディープラーニング
なお、ディープラーニングとは、大まかに言うとコンピューターが人間の脳のように、ある事柄についてそのパターンを学習することを指す。元となる情報を大量にディープラーニングが学習することで、その精度は高まる。
ディープラーニングを使った犬の画像認識を例にすると、ディープラーニングは犬の画像を大量に学習することで、こんな形で、ここに目があって、鼻はこんな形で、こんな色をしているのは犬だと学習する。サンプルとなる犬の画像が少ないと、犬顔の人間を”犬”と認識することもあるそうだ。
AIが冬の時代を迎えてしまった理由にも挙げられた当時のアルゴリズムや計算能力では再現できないこととは、膨大なデータのパターンを認識できるほどの洗練されたアルゴリズムもサンプルとなる膨大なデジタルデータも当時はなかった、と言い換えられる。
AIを体感
最後に、これまで説明したことを念頭にGoogleがAIを体験できるように公開しているA.I ExperimentsというWebサイトにあるQuick Drawというアプリケーションを試してみたいと思う。
Quick Drawは、ブラウザ上にお絵描きをするアプリケーションである。画面上に、「犬を描いてみよう」という指示メッセージが出て20秒でお絵描きをするというもの。
絵を描き始めると、描いた線、出来上がる形に応じて、「それは、円ですね」「アイロンに見えます」「トンカチですか?」とリアルタイムで色々と声をかけてくる。最終的にうまく描けると「わかりました!それは犬ですね」と答えてくれる。
このアプリケーションでは、新たなユーザが挑戦するたびに、その絵を学習し続けている。人間が”犬”というものをどのように描くかということを、ディープラーニングが自動的に学習し、犬というものを認識する精度を高めていっている。
まとめ
AIやディープラーニングが期待されている理由は、膨大な情報の中から、自動的にパターン認識をして、結果を導き出すところにある。そして、それを実現できるだけのコンピューティングリソースや、膨大な情報が現在揃い始めているというところが背景にある。GoogleやFacebook、Amazonといった企業がAI分野において先行しているのは、このような理由からだと言える。
<参照>
A.I. Experiments (Quick Draw)
<画像>
Shutterstock