負け犬になる前に勇気ある撤退を。市場シェア・マトリクスの考え方
「市場シェア・マトリクス」はボストン・コンサルティング・グループによって開発された、事業戦略策定のための分析ツールです。
このマトリクスの活用は、枝分かれしている自社事業の現状確認を行うとともに、将来的な事業の成長スピードのアップにつながっていくものです。
多種類の製品、複数の事業を展開する企業にとって、その経営資源の配分を適正化し、最も効率的かつ効果的な製品・事業の組合せを決定していく必要があります。
マトリクスは2軸、4つに区分され、それぞれ「問題児」「スター」「カネのなる木」「負け犬」とそれぞれ命名されています。
このうち、市場成長率がもっとも高く、相対的なマーケットシェアがもっとも大きい製品が、花形です。
スター(花形製品)(事業・サービス)は市場の成長に合わせて資金投下を続け、マーケットシェアの維持とスターであり続けることが重要なタスクとなります。
ほかの3区分については以下の通りです。
「カネのなる木」は市場成長率は低いものの、マーケットシェアが大きいため、追加投資が相対的に少なくても一定の利益やキャッシュフローを生み出します。
「問題児」は市場成長率は高いか未知数ですが、マーケットシェアが小さく、これから積極的な投資をして市場の成長に合わせた成長をしていくか、もしくは追加投資をせずにそのまま撤退するかの判断が必要になります。投資によってシェアを拡大できればスターに変化しますが、シェアを拡大できなかった場合、負け犬となります。
「負け犬」は市場成長率も事業自体の成長率も見込めず、マーケットシェアも小さい事業・製品です。生き残りのためだけに多額の投資が必要になる点が大きなマイナスです。成長とシェア、二重の意味で将来性がないため、基本的には撤退が必要になります。
この2軸4区分のマトリクスの原則は、効率的かつ効果的なキャッシュフローの誕生にあるとすれば、費用対効果の高いカネのなる木で得た資金を、成長が期待できるも投資が不足している問題児に投下することが重要になります。その結果、問題児をスターに育てあげることができれば、まさにシンデレラストーリーの完成となるでしょう。
マトリクスは市場や産業自体の成長性などの外部変数と、自社のポジショニング優劣、競争力・ポテンシャルなどの内部変数2つの視点から、事業や製品・サービスごとに収益性、成長性、キャッシュフローを評価します。その結果を持って事業の拡大や維持、縮小または事業撤退などの決定に至ります。
たとえば、通販事業、フランチャイズ事業、リサーチ事業、レンタルルーム事業という4つの事業を展開する場合、事業ごとに比較で4つのマトリクスを作り、花形、負け犬等、内部変数で区分わけをすることもできます。事業や製品が多くなる場合は、「問題児」「スター」「カネのなる木」「負け犬」の4区分をベースに、それぞれの事業や製品を振り分けていくフローになります。
とはいえ、やはり図化してみないと関係性が見えてきませんよね。
こちらが成長率・市場シェア・マトリクスです。
まずは自社事業や製品・サービスのマトリクスを作っていきましょう。
個人の方でも、キャッシュフローの発生する事業を展開している場合、このマトリクスを利用し、効果的な資源の配分フローが確立することもできます。当初はスターとカネのなる木をいかに作っていくかが重要な課題となりますが、一旦強みを作れば、チャンスは広がっていきますので、そこからがマトリクスの出番ですね。
まとめ
問題児をスターに育てるとともに、どうにもならない負け犬は切り捨てていく。
やはり経営資源は限りあるものだけに、早急な市場シェア・マトリクスの作成とそこで得た知見の実践、そしてマトリクスの更新を継続的に行うと、経営資源はもっと生かせるのではないでしょうか。