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大和ハウスのRevit導入事例に見る、次世代の建築業界の姿とは

日本でもBIM運用は少しずつ普及が進んでいますが、建設業界の中で今最も意欲的なBIM活用に取り組んでいるのが、大和ハウス工業です。主に住宅建築を担ってきた同社は、Autodesk社のBIMソフトであるRevitを中心に改革を進めてきたということでも注目を集めています。

今回は、そんな大和ハウスがRevitを活用して進めてきたBIM運用のあり方について、導入事例をご紹介します。

①大和ハウスの建築イノベーション「D’s BIM」の概要
②大和ハウスが描くDXのシナリオ
③大和ハウスはRevitをどのように活用したのか

大和ハウスの建築イノベーション「D’s BIM」の概要

大和ハウスがRevitを活用するにあたり、一貫して掲げてきたのが独自の建築イノベーションである「D’s BIM」の存在です。

Revitを使った全物件のBIM化を掲げる

「D’s BIM」は大和ハウスが掲げている全社的な取り組みの一環で、BIMを活用した画期的なワークフローを同社に採用するというものです。「文化・人・物・絆」という4つの柱を掲げ、2020年度中に低層集合住宅と建築系建物、戸建住宅の主力商品の設計を、完全BIM化してしまうことを目標に据えていました*1。現在、BIM運用を実践している会社の多くは、実験的なBIM運用に留まっています。小規模なプロジェクトでのBIM活用など、部分的な導入に留まっているのに比べると、大和ハウスは大胆な活用方針を立てていると言えるでしょう。

そんなイノベーティブなBIM活用の推進に貢献しているのが、Autodesk社のRevitです。大和ハウスとAutodeskは2018年10月包括的なパートナーシップ契約を締結しており、Revitの全面的な導入を宣言しています*2。本腰を据えて一つのソフトを使い切るという決定は、全社的な運用を進める上では欠かせないステップであったのではないでしょうか。

社員の働き方改革実現にも貢献

Revitを使った抜本的なBIM運用の実現は、顧客満足度の向上や業務効率化に貢献するだけでなく、社員の多様な働き方を実現する上でも役立ちます。ICTの活用によって、負荷の大きな作業を自動化し、社員の健康と安全を守ることに活躍します。また、データ活用の機会が増えたことにより、直接現場やオフィスに赴く必要性も現象し、リモートワークの実現やフレックス制の導入にも貢献できます。一人当たりの生産性を高められたことで、人材不足の解消や、業務負担の軽減を実現可能です。

大和ハウスが描くDXのシナリオ

大和ハウスではRevitをはじめとするBIMソフトを活用するにあたって、デジタルトランスフォーメーションを進めていくためのシナリオを4ステップに分けて描いています*2。ここで、それぞれの段階における取り組みを確認しておきましょう。

建築業務のデジタライゼーション

まず大和ハウスがDXを進める上の大枠として用意したのが、建築業務全般のデジタライゼーションです。従来の人力に頼った建築現場を刷新し、デジタル化を推進していくことで、働き方改革の実現と現場課題の解決、そしてオープンイノベーションを実践していくというものです。多くの企業が参画している建築業界の中でも前衛的な取り組みであるため、今後の業界改革におけるメソッドを提示できるような枠組みであることが重視されています。

DC戦略

建築業務のデジタライゼーションを支えているのが、デジタルコンストラクション、いわゆるDCに関する戦略です。建設現場をどのようにデジタル化することで、省人化と無人化を進めていくのかを検討し、実践に移します。また、人がいなくなった建設現場を、どのように可視化し、安全と品質を管理するのかという問題や、企業ガバナンスを向上していくのか、というテーマにも着手する必要があります。

BIM転換

同シナリオの中でもRevitが大きく関与するのが、設計業務のBIM転換です。設計図書のデジタル化、建築情報のデータベース化を推進し、設計から施工、維持管理までの業務を効率化します。また、BIMを効率よく扱える環境を整備することで、BIM設計に伴うフロントローディングの負荷を軽減したり、業務間、そして企業間で発生するBIMデータ連携環境の構築にも力を入れる必要があります。

DfMA+IC 技術構築

大和ハウスでは「次世代の工業化建築」を掲げており、製造業で先行しているDfMA(Design for Manufacturing & Assembly)とIC (Industrialized Construction)を組み合わせた独自の取り組みである「DfMA+IC」に取り組んでいます。DfMAは製造家庭における建材の作りやすさや、建設現場での組み立てやすさを考慮したBIM設計手法で、ICはデータを元に施工を工場で実施し、建設現場の負担を軽減するというものです*4。

これらの実現により、リードタイムの圧縮と建物の品質安定と向上、現場作業の負担改善を目指すというのが、大和ハウスのDXです。

大和ハウスはRevitをどのように活用したのか

このような取り組みの中で、大和ハウスはRevitをどのように活用しているのでしょうか。具体的な取り組みについても、事例を見ていきましょう。

Revitを基盤とした設計プロセスの刷新

大和ハウスがRevitを使って実現しているのは、新しい設計プロセスの導入です。BIMデータを使ったデータ共有の円滑化が行われたことで、設計作業と設計データのチェックは効率化が進みました。また、データの共有から承認、データ公開に至るまでの手続きもスムーズになり、フロントローディングの負荷は大きいとはいえ、全体で見れば大幅な効率化が進んでいます。

DWP環境の構築

BIMデータ活用の環境が整備されたことで、デジタルワークプレイス(DWP)の導入も進められています。これは、ハイエンドなPCと5G通信のような高通信環境を整備することで、テレワーク環境でも円滑な遠隔管理やBIM運用、社員同士のコミュニケーションなどを実現できるというものです。
Revitを使ったデータ活用のさらなる可能性を引き出す上でも、DWP環境の整備は重要です。大和ハウスではテレワーク環境でも技術者が快適な動作環境で仕事や研修ができるよう、1000人以上の技術者に向けて DWP環境を提供する計画を持っています*5。

おわりに

大和ハウスはRevitを全社的に採用することで、抜本的なDXと新しい建設プロセスの導入を進めることに成功しています。

まだまだ試験的な導入に留まっているケースも他社では見られるものの、今後大和ハウスが大きな成果を生み出すことができれば、BIMやRevitを活用する企業は増えていくことになるでしょう。


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*1 大和ハウス「建築イノベーション「D’s BIM」始まる」
https://www.daiwahouse.com/innovation/soh/vol11/
*2 Autodesk「BIM 未来図・大和ハウス工業「成長の道筋」」p.2
http://bim-design.com/catalog/pdf/Final_DAIWA_HOUSE-CaseStudy-ja.pdf
*3 上に同じ p.1
*4 BUILT「大和ハウス式「DfMA+IC」でAutodeskと目指す、次世代の“工業化建築”」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2010/07/news057.html
*5 *2に同じ p.4

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