Facebookの顔認証ってどうなの
Facebookから8,700万人分のデータが流出し、不正に利用されました。CEOマーク・ザッカーバーグ氏は、4月10日と11日に米議会の公聴会で謝罪しました。スーツ姿の彼は、いつもと違って頼りなく感じました。個人的な印象ですが。
事件の経緯としては、Open Graphというユーザー情報をシェアできる機能を活用して、ケンブリッジ大学の心理学者が「thisisyourdigitallife」という個性診断アプリで調査を行いましたが、このとき収集した個人情報が漏えいしたことが報じられています。漏えいした情報は、2016年の大統領選挙に影響を与えた可能性があるとも言われます。
あってはならない事件でしょう。Facebookのユーザーには、不安に感じた方も多かったはずです。
信用を失ったFacebookとGDPR導入
結果としてFacebookの株価は下落し、Appleの共同設立者スティーブ・ウォズニアック(67)がアカウント消去を宣言、歌手のシェール(71)も約240万人がフォローしていた個人アカウントを消去しました。イーロン・マスク氏もSpaceXとTesla のFacebook の公式アカウントを削除するように指示しています。
このように「#DeleteFacebook」が盛り上がっていますが、退会して情報を消去するとゼロからのスタートになります。多くのユーザーは利用頻度を減らしてFacebook離れを進めているようです。
この不祥事を受けて、Facebookはプライバシー保護を強化しています。EU加盟国のプライバシーデータ保護規則「GDPR」を導入。ユーザー自体がプライバシーをどこまで公開するか管理できるようになりました。広告表示、プロフィールの公開範囲、顔認証技術のON/OFFをみずから設定可能です。
この中から、顔認証に焦点を当てて考察します。
スマートスピーカー発売も控えていたFacebook
もともとFacebookの顔認証は、たとえばパーティーの写真を投稿した場合、投稿者が「これはユミちゃん」などとタグ付けすることによって、本人(この場合はユミちゃん)に通知されていました。
しかし、2017年12月から機械学習の画像認識によって、タグ付けしなくても自動的に誰か推測し、通知する人工知能型のシステムを導入しました。「ユミちゃん」のまぶたや鼻、唇のサイズなどの情報をデータベースに格納し、「ユミちゃん」の顔と照合して通知します。自分の写真が不正に使われていた場合「なりすまし」を防止できる面ではメリットがある機能です。
iPhone Xの「Face ID」で顔認証でログインできるようになり、顔認証は身近になりました。2020年の東京オリンピックでも、選手や関係者のチェックに顔認証システムが使われる予定です。Facebookでも、IDのやパスワードを入力しなくても、カメラで顔を認証することによってログインし、友達申請や広告作成、広告料金の支払いに使えることをめざしていました。
このことに関連して、Facebookは昨年の8月から、ビデオチャット用の広角レンズのカメラやディスプレイ付きのスマートスピーカー「Portal」の開発に着手したことも報じられています。かなり遅れをとったものの、GoogleやAmazonと同様の事業展開を考えていたわけです。この端末に顔認証が搭載されたはずですが、今回の事件によって「Portal」の発表は延期されました。
顔認証以外の生体認証の現在
ところで、現在さまざまな生体(バイオメトリクス)認証システムが生まれています。顔認証以外を整理してみましょう。
指紋認証
指の指紋の模様を認証に利用します。銀行のATM(現金自動出入機)に備え付けてある、お馴染みのシステムです。スライドさせて指紋をスキャンさせるタイプが主流ですが、押し付けるタイプもあります。ノートパソコンやUSBメモリにも利用されています。
虹彩認証
黒目の瞳孔の周囲にある部分の模様をスキャンして認証します。指紋以上に複雑なパターンであり、高速な認証が可能です。空港の入国審査、会社の入退室管理などに使われています。
静脈認証
装置から近赤外線を手のひらに照射し、静脈中の還元ヘモグロビンによって描かれた静脈で認証します。手をかざす非接触型なので、住宅などで高齢者や子どもなど年齢に関わらず簡単にできることがメリットです。
その他にも声による「声紋認証」もあります。IDカードなどの認証と比べて、カードを忘れて認証できない状態がなく、IDやパスワードを盗まれる危険性も低減します。しかし、現状では装置自体が高価で、認証の精度に個人差があることが課題です。
SNSに危惧すること、自己防衛の必要性
しかし、認証データがセキュアな状態で保管されるかどうかが大きな問題になります。今回のFacebookのデータ流出も同様でしょう。そして、どれだけシステムとして堅牢だったとしても、悪質な「人的」問題によって簡単に情報が外部に漏れてしまうことがあります。
あらゆる個人データをクラウド上で管理できる時代。むしろSNSが完全ではないこと、リスクがあることを理解して、安易に個人情報をアップロードしないリテラシーが自己防衛につながるかもしれません。
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