仮想世界はどのように進化するか?将来のVR開発の方向性を考える
VR、バーチャルリアリティの世界が盛り上がりを見せています。Oculus Rift、HTC Vive、Windows MR、PlayStation VRなど、様々なメーカーがヘッドマウントディスプレイの販売、開発に力を入れています。VRデバイスを使うことで映画やゲームが立体的になり、より迫力が増しました。VRの普及は黎明期から成長期に入り、小型化、軽量化、低価格化が進んでいます。
解像度やリフレッシュレートなどの性能も向上し、数年前とは比べ物にならないほど進化しました。市場も成長し続けており、これからも規模が拡大していくと予想されます。進化するVRの将来は、どこに向かおうとしているのでしょうか。その開発の方向性を考えていきます。
▽関連記事はこちら
VRが人間の目に追いつく日はくるのか
ヘッドマウントディスプレイは、確かにリアルになりました。十数年前の3Dグラフィックと比べれば一目瞭然で、その美しさと臨場感に驚きます。しかし現実の世界と比べてしまうと、まだまだ見劣りするのも事実です。人間の目は、ヘッドマウントディスプレイの画質よりも格段に優れています。
ヘッドマウントディスプレイの解像度は人間の目より低く、現実よりも荒い画面となります。視野角も狭いため、見える範囲全てを映し出すことはできません。さらに焦点の深度が固定されており、全てがはっきりと見えてしまいます。人間の目の場合、見ているものははっきりと見えますが、焦点の合っていないものはぼやけて映ります。
ヘッドマウントディスプレイで映像を見ると、VR酔いを起こす人がいます。VRの映像が目の情報よりも劣り、平衡感覚が狂ってしまうためです。しかし現在、VRの技術はものすごいスピードで進化しています。焦点の深度の問題も数年以内に解決できると予想されています。徐々に人間の目の性能に近づけば、VR酔いを起こすこともなくなるでしょう。
「シンギュラリティ」という言葉を聞いたことはないでしょうか。日本語では「技術的特異点」と訳され、人工知能の性能が人間の脳を超えることを指します。このまま技術が進化していくと、シンギュラリティは2045年頃に起こると予想されています。遠い将来に感じるかもしれませんが、あと30年を切っており今50歳以下であれば現実に体験できる可能性が高い未来です。
ヘッドマウントディスプレイの技術も、シンギュラリティが起こる頃には人間の目を超えているはずです。思い通りの世界を現実と同じように体験できる未来を想像してみてください。現実と仮想世界の差は、限りなくあいまいになっているのかもしれません。
盛り上がりを見せるソーシャルVR
現在、VRを利用したツールの中で盛り上がりを見せているのが「VRChat」と呼ばれるソーシャルVRです。3Dの世界が構築されたネットワーク上で、世界中の人々とコミュニケーションを取れます。音声だけでなく、身振り手振りの動きも伝えられます。最高同時接続数は2万人を超え、多くの人が楽しんでいます。
VRChatの特徴は、ユーザーが主導となって盛り上がりを見せている点です。アバターと呼ばれる格好や、人が集まるワールドを自分で作成できます。たくさんのワールドができることで、また集まる人が増えるという好循環が見られます。
VRChatは自由度が高く、中には攻撃的な人々も存在します。2018年5月には、マナー改善のためにトラストシステムと呼ばれる「信用度」が導入されました。マナーが悪いユーザーは信用度が下がり、制限を受ける仕組みです。VRChatが友好的な場所になるよう、徐々に改善が進んでいます。
このような、仮想世界で多人数とコミュニケーションができるシステムを「ソーシャルVR」と呼びます。Facebookの「Facebook Spaces」、Microsoftの「AltspaceVR」など、「VRChat」以外にも様々なソーシャルVRが存在します。爆発的に普及したSNSのように、ソーシャルVRも普及するのか、これからの動向に注目です。
▽関連記事はこちら
広がるVRの使い道
現在、最もVRが利用されているのはゲームの世界です。仮想世界の中でキャラクターになりきり、高い臨場感を体験できます。VRとゲームはとても相性が良いと言えるでしょう。さらに映画の世界でもVRの導入が始まっています。2018年には日本初のVR映画館が誕生して話題になりました。さらにVRの技術開発が進むと、他にどのような使い道が考えられるでしょうか。
まずは、ショッピングへの応用です。既にVRを利用したサービスは多数提供されており、ネット通販最大手のAmazonも期間限定でブースを出展しました。仮想空間を歩き回ることで、実際の店舗のようなワクワク感を味わえます。買い物に不便な地方に住む人々でも、都会と同じように買い物できるようになるでしょう。
次に考えられるのが、VRを利用した旅行です。「Google Earth」も既にVRに対応し、世界中の様々な場所を見られます。ヘッドマウントディスプレイの性能が向上すれば、まるでそこにいるかのような感覚を味わえるでしょう。実際に行くことが難しい場所でも、VRの世界なら一瞬で移動できます。移動時間や費用を気にせずに、世界旅行できる時代が来るかもしれません。
スポーツ観戦も、VRを利用すれば臨場感が大きく変わります。選手の視点で見れば、まるで自分がプレイしているかのような体験を味わえます。家族や友達と音声チャットをしながら、大いに盛り上がることも可能です。自由な視点で観戦できる点では、実際に見るよりも迫力があると言えるかもしれません。
他に、教育分野への応用も考えられます。例えば、タイムスリップして恐竜がいる世界を体験する、宇宙へ行って太陽系を見るなど、より感覚的に勉強できるようになります。実際に見ることで興味がわき、学習に対する意欲も向上するはずです。さらに、学校自体を仮想空間上に作り、VR上で授業を受けられる時代が来るかもしれません。登校の必要がなくなり、僻地に住む人々でも最高の教育を受けられるようになります。
VRが普及した未来の姿とは
これからVRが進化していくと、仮想世界は限りなく現実の世界に近づいていきます。例えば、VRを利用して仕事をすれば、通勤時間は無くなります。職場を仮想世界に構築し一緒に仕事をすれば、コミュニケーションも取れます。誰がどこに住んでいても、力を発揮できる時代がやって来ます。
さらに、VRは外見を自由に変えられます。洋服だけでなく、肌の色や性別を選ぶことさえ可能です。仮想世界では、容姿、人種、性別などで差別されることはありません。外見的な差別を受けず、誰もが内面的な魅力を発揮できます。
また、身体的なハンディキャップからも解放されるので、障碍者や高齢者も自由に動けます。VRにより、買い物や旅行といった様々な面で生活の質を向上させられます。現在、問題になっている高齢化社会を解決する一つの方法となるかもしれません。
VRは様々な場所に自分の居場所を作れるので、孤独化からも解放されます。たくさんの人と一緒に食事をしたり、趣味を楽しんだり、旅行へ行ったりする体験を、現実のように感じられます。住んでいる場所が意味を持たなくなり、現実と仮想世界は限りなく融合していくでしょう。
まとめ
例えば、インターネットは世の中を大きく変えることになりました。オンラインで買い物できるようになり、一瞬で情報を得られ、自宅で仕事ができるようになりました。同じように、VRがもたらす世界の変化も非常に大きなものだと感じます。
近い将来、VRを誰もが使っている世界がやってくるでしょう。新技術がもたらす変化を予想し、どのように生活に取り入れるかを考えることはとても大切です。VRについても、私たちが楽しむことで仮想世界がより進化していくでしょう。
▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!