Google Maps ARは世界を変えるか?〜可能性と課題に迫る〜
みなさんは、スマートフォンのナビアプリを使ったことがありますか?
日常的に使っているという方は少ないかもしれませんが、恐らく多くの方が一度は使われたことがあるのではないでしょうか?
位置情報を元に行き先を音声で教えてくれるなど、紙の地図には真似できない機能が多彩なスマホナビ。
しかし、結局の所、ディスプレイに映るものは紙の時代からあまり変わっていません。
今回は、そんなスマホナビを「紙の延長線上」から解放するかもしれない、新たなサービスをご紹介したいと思います。
この記事では次の3つのことがわかります。
1. Google Maps ARとは?
2. 他のサービスとは何が違うのか?
3. Google Maps ARの抱える課題
はじめに:ARとは何か?
ARはAugmented Realityの略称で、日本語では拡張現実と呼ばれることが多い技術です。
具体的にはカメラで取り込んだ現実世界の映像に情報を付加し、それをディスプレイ等のデバイスに表示するというもので、現在はスマートフォンアプリを中心にさまざまな分野で活用が進んでいます。
身近な例の1つが、iOS/AndroidのGoogle翻訳アプリ。
このアプリには、カメラに映った文字を読み取った上、翻訳後の文字で上書きして見せるという機能がありますが、これもARの一種です。
また、ゲームアプリではPokémon GOのARモード(ポケモンの捕獲画面等で、背景にその場の風景を合成できる機能)なども、多くの方が使われたことがあるのではないでしょうか。
ARと聞くと難しい未来の技術に思いがちですが、実は意外にも、私達の身近で既にたくさん使われているのです。
Google Maps ARとは?
Google Maps ARは、スマートフォン向けのGoogle Maps用に開発されている新機能で、ARを使い実際の風景に沿ったナビが可能となるものです。
通常のGoogle Mapsでは、地図データと位置情報を組み合わせ、ちょうどカーナビの地図に近い雰囲気で使う事が出来ます。
しかし、当たり前ですが地図は地図なので、人によっては分かりづらく感じることもあるでしょう。
一方、Google Maps ARは、スマートフォンのカメラから得た映像に、リアルタイムで進行方向の矢印などを表示してくれます。
ナビの地図が実際の風景に変わるので、地図を読むのが苦手な方や、そもそも地図の読み方を知らない小さな子供でも扱えるのがポイント。
目的地周辺までは行けるけど、そこから先でいつも迷ってしまうという方にも、まさに打って付けのサービスなのです。
既存サービスと何が違うの?
実のところ、AR機能を使ったナビ自体は、Google Maps ARが初めてではありません。
これまでも様々な開発者が、同種のアプリをリリースしてきました。
例えば、MapFanは少なくとも2014年からARナビアプリを公開していますし、Yahoo! Mapでも2018年3月より(試験的にですが)AR機能を実装しています。
Yahoo! MAP、ナビゲーションをAR(拡張現実)でサポートする機能 「ARモード」を試験導入-ヤフー株式会社
では、これら既存のアプリとGoogle Maps ARとの違いは、一体何処にあるのでしょうか。
Google Maps ARの要はストリートビュー
Google Mapsを使う上で、意外と役立つ機能の1つがストリートビュー。
日本だけでなく、世界中の多くの道の画像をピンポイントで見ることが出来る為、出発前の下調べにも大変助かる便利機能です。
こうしたストリートビューの画像は、サービス開始以降Googleが地道に集めてきたもので、現在も定期的に更新されています。
撮影したデータを位置情報と結びつけ、Googleのサービスで使えるようにする。
作業の大半はコンピューターで自動化されているとは思われますが、画像を撮影するGoogleカーの運転は人間がしているのですから、やはりその地道な努力には頭が下がる次第です。
さて、Google Maps ARでは、そんなストリートビューのデータを、位置情報の補正に活用しています。
これまでのナビアプリでは、Google Mapsも含め、スマートフォンのGPSと基地局情報、そして周囲に飛んでいるWi-Fiの位置情報を総合してユーザーの位置を判断していました。
しかし、こうした電波をベースとした位置の特定は、電波が届きづらい場所では十分な精度を発揮出来ない弱点を抱えています。
屋内はもとより、屋外でもビルの谷間など、GPSを受信しづらい場所は案外多いもの。そんな場所で位置情報を正しく得る為には、電波に頼らない方法で得たデータが必要です。
そこで白羽の矢が立ったのが、ストリートビュー。ストリートビューのデータには位置情報が付加されていますから、Google Maps ARで撮影した周囲の映像と突き合わせれば、ユーザーのより正確な位置を特定できるという訳です。
ストリートビューのデータはGoogleの持ち物ですから、競合他社は太刀打ちすることが出来ません。
さらに、画像データの突き合わせにはAIの利用が欠かせないので、その点でもGoogleレンズなどの画像照合技術を開発してきたGoogleが有利。
遅れてきたGoogleがこれだけ注目されているのは、実はこうした理由もあるのです。
ナビの精度アップも見込める
実際の風景とストリートビューの画像を照合すると言うことは、Googleはやろうと思えば、
・ユーザーがどのようなルートで目的地に辿り着いたか
・道を間違えた場合、どこでどのように間違えたか。
・その場合、どのようにリカバリーしたか。
といった情報を、これまでより詳細に知ることが出来ます。
また、同じ目的地に向かった多くの人の道順を比較することで、道を間違いやすい箇所を特定したり、それに応じてナビの仕方を変えるといったことも技術的には可能です。
実際にGoogleがそこまで考えているかは分かりませんが、彼らが本気になれば、殆どの歩行者向けナビは廃れてしまう事でしょう。
それだけの可能性が、Google Maps ARにはあるのです。
Google Maps ARが抱える課題とは?
大きな可能性を秘めたGoogle Maps ARですが、当然弱点も抱えています。
ここからは、現時点でこのサービスが抱える課題をご紹介しましょう。
スマートフォンのバッテリー消費の増加
AR機能を使うためには、使用中はカメラを起動しておく必要があります。
また、当たり前ですが使用中はディスプレイも表示したままとなる為、カメラとディスプレイという消費電力の多いパーツを、ARナビの間ずっと使い続ける事になるのです。
現在のスマートフォンのバッテリー容量を考えると、正直なところ、メインのナビとして長時間AR機能を使うことは、現実的ではないでしょう。
Googleもその辺りは分かっているのか、ARはあくまで補助と割り切っているようです(少なくとも現状では)。
ストリートビューデータの限界
「こんな路地まで写ってるの!?」とビックリすることも多いGoogleストリートビューですが、もちろん世の中の全ての道を網羅している訳ではありません。
日本でも都市部では割と細い道や生活道路まで写っている事が多い反面、郊外に行くと同じような規模の生活道路でも写っていないといケースは少なくありません。
当然、ストリートビューのデータがない場所では、Google Maps ARの位置情報補正も利用できませんから、その点ではGoogle Maps ARも決して万能とは言えないのです。
まとめ
今回は最近少しずつ話題になっているGoogle Maps ARについて、現状や他のサービスとの違い、そして将来に向けた課題を解説しました。
まだまだテスト段階のサービスではありますが、今月からはいよいよPixelシリーズへの提供も始まり、今後他のスマートフォンへも順次拡大していくものと思われます。
ただ、ARナビが補助から主役の座へ進むためには、解決すべき課題もあることは事実。
ARナビが未来のナビゲーションとなるのか、それとも脇役に甘んじるかは、今後のGoogleと地図業界に掛かっていると言えるでしょう。
参考
https://itunes.apple.com/jp/app/mapfan-ar-global/id820093646?mt=8
https://app-liv.jp/820093646/
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2018/03/05d/
https://www.gizmodo.jp/2019/05/google-ar-maps-pixel.html
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