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ブロックチェーン技術はBIMにどう活用されるのか?

ICT(情報通信技術)が建築業界にも普及しているなかで、仮想通貨をネットワーク上で適切に運用するために用いられていたブロックチェーン技術(*1)に注目が集まっています。

仮想通貨自体はBIMなど建築にかかわるソフトウェアとは関連しませんが、膨大なデータを複数名で管理するというブロックチェーン技術が活用できるという点では共通です。ある情報を確実に保存、追跡できるトレーサビリティ性などが、産業界のさまざまな分野で応用されることが期待されています。

この記事ではブロックチェーンとはどのようなものなのかをはじめ、他の業界での導入事例、BIMにブロックチェーン技術を盛り込んだ場合の活用法などについてご紹介します。

ブロックチェーン技術は仮想通貨の管理からスタート(*2)

ブロックチェーンの技術は、保存している電子データが確実に正しいと言える状態でデータを管理できるデータベースの形式です。ブロックチェーン技術が使われ始めたのは、2009年から稼働しているビットコイン(仮想通貨)のシステムです。ブロックチェーンの技術は「分散型台帳技術」とも言われ、2008年に発表された論文がもとになっています。(3)(4)

一般的な紙の書類であればサインや収入印紙、取り引き先の角印が押してある、然るべき金庫に保管されているなど、さまざまな方法で正しい情報であることが証明できます。

しかし、ブロックチェーン技術が確立する前は、ネットワーク上にある電子データが絶対に変更されていないと証明するのは難しいことでした。たとえ一定のサーバーにデータを保存していたとしても、万一メインとなるデータサーバーに不正アクセスされ改ざんされてしまうと、保管していた内容が本当に正しいとは言い切れなくなってしまいます。

ブロックチェーン技術ではいつ誰が情報にアクセスしたか、何の処理を行ったかなどの情報が保持できます。また、不正アクセスなどのサイバー攻撃に強く、データトレーサビリティ(追跡可能性)とアカウンタビリティ(説明責任)が高い技術といえます。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは一定期間にやり取りされた情報を暗号化しつつブロックに区切り、全員が同じブロックデータを持つということでデータの確かさを確保しています。

もしある情報を変更しようとした場合には、特定のブロックを保持している個人すべてから暗号キーを入手しなければなりません。全く不可能ではありませんが、実行するのはかなり難しいことでしょう。このようにブロックチェーンでは正しいデータを共有できることから仮想通貨の支払い処理など、信頼性が高い複雑な処理に活用されています。

他業態での応用事例(*5)

ブロックチェーンの技術は汎用性が高く、自動車・流通・小売・食品・不動産・医療などさまざまな業界での活用が始まっています。ここでは、一例を紹介します。

金融業界

ブロックチェーン技術はもともと金融にかかわる技術(財務情報工学:フィンテック)として生まれたものであり、ブロックチェーン技術を活用している代表といえば金融業界です。(*6)現在は銀行の送金システムや証券会社の本人確認技術などでブロックチェーン技術の実証実験が始まっています。将来的にはこれらの業界でもブロックチェーン技術を用いたシステムが稼働することが予想されます。

自動車業界

自動車業界ではデータのトレーサビリティ確保に向けて、ブロックチェーンの活用が検証されています。部品メーカーや組み立てメーカーはもちろん、公的機関を含めたブロックチェーンを構築しておけば、もし車両に不具合や問題があった場合に関連するサプライヤーやロットなどをすばやく抽出することができます。仮にリコールとなった場合でも、スムーズな情報公開に役立つと考えられています。

食品業界

ある食肉がどのような流通経路をたどって、どこのレストランに届けられたか、法律にのっとった管理がされているかなどのトレーサビリティに活用されています。情報が改ざんされず保管され、必要に応じて参照できることから、安心した食生活を守るのに役立ちます。

ブロックチェーン技術はBIMに活用可能(*7)

昨今国では今以上のBIM・CIMの活用推進を期待していて、(8)国土交通省主管のBIM/CIM推進委員会にて建築BIM推進会議WGが設立されています。(9)BIMにブロックチェーン技術が活用できれば今後は以下のような設計環境が構築できるでしょう。

開発状況の共有・可視化が可能

建築業界にあてはめると、ある建物を作る場合は、主となる企業の設計者をはじめ設計事務所、サプライヤなどさまざまな立場の人たちがいます。

従来は設計部門は設計用データ営業は営業用データなど、部門ごとに分かれたデータを持っていました。それらを社内のイントラネットなどに共有して部門や職責に応じた閲覧権限を設定しているため、情報の共有には対応しづらい側面がありました。

ブロックチェーン技術が浸透すれば、いつ誰がどのプロジェクトにかかわっているかはすぐにわかります。また必要な情報はプロジェクトメンバーで共有できるため、組織がよりフラットになり、場合によっては部門を超えた人材の経験や知識、能力などが活かせる場面が出てくるかもしれません。

内部情報を関連するメンバーを巻き込み安全に管理(*10)

従来通常データを管理しようと思うと、IDやパスワードでログインし、各々の職責などに応じたファイアーウォールやアクセス権限をもとに情報に閲覧できる情報が設定されていました。しかしブロックチェーンではこのようなセキュリティのかけ方は行っていません。

自動車業界の事例と類似性がありますが、設計担当者をはじめ行政なども巻き込んだブロックチェーンを構成していれば、それだけ情報の共有がスムーズにできます。例えば、建物を建てる際に相続税制への対応として税理士、弁護士、公認会計士などと共同することも考えられます。BIMの設計自体は行わないメンバーが対象であっても、どのような条件で建築が進められているのかを共有する際にブロックチェーンが役立つでしょう。

製品や材料の履歴、メンテナンス情報の参照が容易

BIMに形状情報とメンテナンス情報を盛り込んだ状態で、そのデータをブロックチェーンで共有すると、補修や設計変更が生じた場合に簡単に履歴が追跡できるようになります。設計者、管理者、サプライヤーなどが使用している材料やメンテナンスの履歴などを共有していれば、必要に応じてすぐデータが取り出せるため品質や安全性を高めることができます。

公正な取引の推進(*11)(*12)

記録を人の判断に任せてしまうと仮に何か問題があった場合に「この人は知っている人だからあとで直接伝えればいい」「この人は面識がないのでしっかり記録しておいて指摘をしよう」など主観で場合わけされてしまうかもしれません。

建物を建てる際には大きな金額が動きます。どの企業もできるだけ有利な見積もりで入札したいと考えているため、競合の動向があれば知っておきたいと思う場合があります。ブロックチェーン技術では情報の内容はもちろん、アクセス日時や処理内容なども記録し共有できる仕組みです。

ある時系列の記録を共有することで、不正なアクセスや状況ごとに対応が違うといった問題を防ぐのに役立ちます。

まとめ

ブロックチェーン技術はICT技術のひとつとしてさまざまな産業に応用が期待されている技術です。BIMに活用した場合、必要なメンバーを巻き込んだブロックチェーンを構築することで設計や施工、メンテナンスの効率や品質が上がることが想定されます。個人が断片的にならない関連する情報全体を閲覧できるため、知識や時間、スキルなどを最大限に活かせるようになるでしょう。QCDの側面からも魅力のある建築物が設計できるようになれば、設計者、施工者、クライアント全体の利益となります。

参考URL
*1 ビットコインに学び、BIMをAIVSへと進化させる
*2 ブロックチェーンの仕組み
*3 ブロックチェーンと分散型台帳技術
*4 Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System
*5 進化を続けるブロックチェーンは、どの業界に影響をもたらすのか
*6 ブロックチェーンと分散型台帳技術 中編
*7 2018年以降、ブロックチェーンが普及する4つのシナリオ
*8 「BIM/CIMポータルサイト【試行版】」を開設しました!~BIM/CIM関連情報へのアクセシビリティの向上~
*9 建築BIM推進会議(第1回)を開催~国や関係団体等におけるBIMの取組報告等を行います~
*10 BIMで建築が夢をみる
*11 Autodesk CEO: Blockchain Can Stem Corruption in the Construction Sector 
*12 ブロックチェーン技術で建設業界の汚職を排除できる

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