土木設計ソフトウェアオートデスク Civil 3Dとは
この記事を読むと以下の3つのことがわかります。
①Civil 3Dの概要
②Civil 3Dの機能
③実際に活用されている事例
この記事では、Civil 3Dのソフトウェア特性を理解するために不可欠なBIMとCIMについても解説しています。
なお、Civil 3Dは2020年版がすでにリリースされているため、従来からの基本機能と新たな機能は分けて紹介しています。
活用事例は、海外の巨大インフラ整備プロジェクトでCivil 3Dがどのような役割を果たしているかを紹介。情報は、すべて2019年11月時点の公式サイトに準拠しています。
Civil 3Dとは
Civil 3D(シビル スリーディ)は、土木設計とCIM(シム)を支援する土木技術者向けのCADソフトウェアです。
CIMは、コンストラクション・インフォメーション・モデリング(Construction Information Modeling)の略語で、建築分野において広まりつつあるBIM(ビム:建築物の情報のモデリング手法)を土木に活用するための概念です。
つまりCivil3Dは、3次元モデルを活用することによって、より効率的に利便性の高い土木の設計をおこなうことができるソフトウェアといえます。*1
Civil 3Dの製品情報
Civil 3Dの使用料は、1ヶ月46,200円、1年間370,700(30,892円/月)、3年間1001,000円(27,806円/月)という3つの期間の中から任意に選ぶことができます。
より長期の購入契約を結んだ方が、1ヶ月あたりの利用料は割安になりますが、「とりあえず試験的に導入したい」、「活用の程度によっては別のソフトウェアやアプローチを試したい」という場合には、1ヶ月単位、1年単位の購入方法が得策でしょう。
なお、Civil 3Dには30日間の無償体験版もあります。まず社内で使い勝手を試したいという場合はこちらを活用するのがオススメです。
なお対応OSはWindowsのみで、Macintoshには非対応となっているので注意が必要です。
ダウンロード環境の詳細については、参考URLに挙げた公式サイトで確認するようにしてください。*2
Civil 3Dの機能とは
では、Civil 3Dの有する機能について詳しくみていきましょう。
Civil 3Dは、2020年版がすでにリリースされており、そこには新機能が搭載されています。そのため、本記事では従来の機能と、新たに2020年版で加わった機能についてわけて解説します。
従来版から備わっている機能は、大きく分けて8つです。
- 相対標高計画線
- 動的なオフセット縦断
- 接続されている線形
- 配管のサイズ設定と解析
- 平面図と縦断シートの作成
- プロパティセットデータのラベル付け
- トバラースエディタ
- コリドーのオーバーラップの解決
「相対標高計画線」は、計画線をサーフェスの変更に合わせて更新する機能です。サーフェスを基準にすることも可能です。
「動的なオフセット縦断」とは、オフセット線形作成と同じように動的なオフセット縦断を作成できる機能のことです。専用プロパティのタブを使用して横断勾配の変更、勾配擦りつけ区間の追加をおこなうことができます。
「接続されている線形」は、交差点巻き込み部や流入・分岐道路の作成に役立つ機能です。2つの交差する線形にともなうさまざまな作業をおこなうことができます。
「配管のサイズ設定と解析」では、標準規格であるHEC-22 2009に準拠した動水勾配線およびエネルギー勾配線の計算が可能です。
なおCivil 3Dは、3Dモデルだけでなく、平面図、縦断、横断シートを作成することもできます。作成するためのツールが、5つめに挙げた機能「面図と縦断シートの作成」です。
「プロパティセットデータのラベル付け」はラベルにカスタムデータを追加する機能、「トバラースエディタ」は、ネットワーク内の既存トラバースの手動による作成、管理をする機能です。
また、Civil 3Dでは、コリドーリンクが相互交差して発生するねじれをコントロールする機能も備えています。*3
Civil 3D(2020年版)の新機能
Civil 3D 2020では、従来機能にプラスして、新たに次の4つの機能が追加されました。
- Dynamo for Civil 3D
- 雨水および汚水解析
- 自然流下式ネットワークの解析
- ユーザーインターフェース
「Dynamo for Civil 3D」は、プログラミングと設計を自動化することで、ワークフローを高速化する機能です。
「雨水および汚水解析」機能は、設定ごとに個別の放水条件を設定可能で、条件に応じたデータ解析を実行することができます。
「自然流下式ネットワークの解析」は配管ネットワークの解析および解析結果の適用のための機能です。
さらに、Civil 3D 2020のインターフェースは、表示が高解像度モニターに最適化されています。従来よりも直感的な操作がしやすくなり、操作は従来版よりもシンプルになっています。*4
Civil 3Dの活用事例
ここでは、Civil 3Dを理解する上で重要な概念であるBIMがどのようなプロジェクトに活用されているかという事例をみていきたいと思います。
80年以上前から計画された巨大プロジェクトを3D化
米国NY市のイーストサイドアクセスプロジェクトは、近年における米国最大のインフラ計画とされていて、8マイル超の新しいトンネル、8区画にまたがるコンコースやプラットフォームが敷かれる計画になっています。巨大なプロジェクトのため、全体で個別契約は25種類、設計図面は10万枚が発生。数千人の作業員が雇用され、120億ドルのコストがかかるとされています。あまりに巨大すぎて、紙ベースでスタートした1960年から2D CADツールに置き換えられた2000年代はじめでさえ、プロジェクトの全容を見渡すことはメンバーの誰にも不可能だとされていました。
しかし、BIMへの移行によってプロジェクト全体がモデリングされ、125以上の相互接続モデルが作成されることで誰もがこのビッグ・プロジェクトの全容を知ることができるようになりました。その結果として問題点の洗い出しがなされ、トラブルや作業停止に追い込まれる前に対応することができるようになりました。
今後は、VRやMR(混合現実)といった最新のテクノロジーを組み合わせることによって、3D設計モデルのホログラムを作成し、没入感のあるプロジェクト・シミュレーションを展開することも視野に入れられています。*5
老朽化した橋を3Dモデルで再建
リバーガレッツ橋は、フランスのレユニオン島の川にかかっている橋です。およそ70,000台の車が行き交うとされる橋は、1950年代に建設され金属の劣化が問題視されていました。そのため、2020年中の完成を目指し、新しい2つの橋が建設されています。
レユニオン島はインド洋に面しているため、建設にあたっては雨季と乾季における川の水量の変化に応じて建築プロセスを設計する必要がありました。そのため、土木や道路、インフラをCivil 3Dでモデル化し、橋を多分野対応型BIMソフトウェアRevitでモデル化。さらに両者をNavisworks(3Dモデルレビューソフトウェア)で結合して、原価計算や調整を実施しています。Civil 3Dでのデジタル地形モデリングには、カメラを取りつけたドローンが活躍しました。正確な写真測量データによって、より精密なモデリングが可能になったのです。*6
マレーシアの高速道路設計に活用
マレーシアの労働省は、2015年から順次ボルネオ島北部サラワク州にある高速道路の拡張をおこなっています。
このプロジェクトにおいて、Civil 3Dが高速道路の詳細設計に活用されました。その結果、3Dによるプロジェクト調整から4D建設計画が進められるようになっています。
ボルネオの高速道路プロジェクトは、BIMとそれを保管する技術を使うマレーシア初のプロジェクトです。2021年半ばまでにひとつの区切りを目指し、それ以降の計画を新たに準備していく予定とされています。*7
【まとめ】
Civil 3Dは長大なプロジェクトや巨大な建設計画を可視化し、事前のリスクマネジメントや設計における各部門の情報共有を容易にするソフトウェアです。
30日間の無償版ダウンロードで、2020年にプラスされた新たな機能や使い勝手をチェックしてみてはいかがでしょうか。
【参考URL】
*1
https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/overview
*2 https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/subscribe?plc=CIV3D&term=1-YEAR&support=ADVANCED&quantity=1
*3
https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/features
*4
https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/new-features
*5
https://www.autodesk.co.jp/customer-stories/liro
*6
https://www.autodesk.com/solutions/bim/hub/aec-excellence-2018/infrastructure/finalists/riviere-des-galets
*7
http://www.infrastructure-reimagined.com/pan-borneo-highway-sarawak-history-making-malaysian-infrastructure/
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