今話題のノイズキャンセリングの原理を解説
King Gnuが透明感ある歌声で登場するCMで印象的なソニーのイヤホン「WF-1000XM3」やAppleの新製品「AirPods Pro」など、最近はノイズキャンセリング機能搭載のイヤホンが注目されています。今回の記事では、ノイズキャンセリングの原理についてご紹介していきます。
この記事で分かること
・ノイズキャンセリングとは
・ノイズキャンセリングの仕組み
・ノイズキャンセリング製品を選択するポイント
ノイズキャンセリングとは
ノイズキャンセリングとは、周囲の騒音(ノイズ)を低減する仕組みのことを言います。これにより音楽再生などでクリアなサウンドを得ることができます。風の音、飛行機や電車に乗った時の「ゴー」っという音、周辺の人の話し声などさまざまな外部で発生する音を消して、自分の聞きたいサウンドだけにする技術です。
ソニーのイヤホン「WF-1000XM3」のCMでは、電車の中でイヤホンにタッチするとノイズキャンセリング機能がONになって周りの人間まで(映像的に)いなくなってしまうことで、雑音の消失を表現していますね。実は私は「白日」でKing Gnuのにわかファンになってしまって、このCMを見るたびに『あ、もっと聴きたいのに』と思ってしまいます。ワンフレーズだけしか歌わないので、、、、
現在、話題になっているノイズキャンセリング機能は主にデジタル技術を使った騒音を低減するものですが、実は昔から使われている基本的な方法もあります。イヤホンやヘッドホンの素材・構造・装着した時の密閉度などで単純に周辺騒音を遮断する方法です。これを「パッシブノイズキャンセリング」と言い、デジタル技術で「能動的に」騒音を低減させる方法である「アクティブノイズキャンセリング」と分類することがあります。本稿では主に「アクティブノイズキャンセリング」の仕組みについてご紹介していきます。
ノイズキャンセリングの仕組み
耳に入ってくる音は周辺の騒音を含めて音波という「波」で表すことができます。皆さんも中学の理科の実験で、オシロスコープを使って音波の波形を見たことがあるかと思います。実際の周辺の騒音はもっと複雑な形状をしていますが、イメージとしてオシロスコープで見た「正弦曲線」と呼ばれる単純な波形を思い浮かべると良いでしょう。
音波の性質として、位相が全く逆の音と合成するとお互いに打ち消しあってしまいます。この特徴を利用して、周辺騒音と逆位相の音をデジタル的に構成し再生することでノイズを低減する技術が「ノイズキャンセリング」です。ここで「位相が逆」とは、音波の「山」と「谷」が逆転している波形のことで、元の音波と上下逆になっているものを言います。
一般にハードウエア的に雑音を遮断する「パッシブノイズキャンセリング」は中高音域で、デジタル技術を利用した「アクティブノイズキャンセリング」は中低音域に効果があるとされています。King GnuのメンバーがCMで歌っている楽曲を紹介しているYoutubeの動画では、「LOW感」という言葉で低音域のノイズキャンセリングに効果があることを語っています。※注1
デジタル処理についてもう少し詳しくご紹介しましょう。イヤホンの外側に到達する外部の騒音を(A)、イヤホンの内側で耳に近いところで聞こえる外部騒音を(A’)とします。同じ外部から聞こえる騒音(環境音)でも、イヤホンの内と外では異なるものになっています。これは先に紹介した「パッシブノイズキャンセリング」によって、内部に伝わる騒音は外部と比べて元々低減されているためでもあり、イヤホンの中を通ってくる際に別の雑音や反響が加わることもその理由となります。
そのため、デジタル処理する場合にもイヤホン外部の環境音を打ち消す「フィードフォワード方式」と、内部の騒音を打ち消す「フィードバック方式」の2種類の技法が存在し、より効果的で確実に環境音を低減できるのは後者の「フィードバック方式」であるとされています。耳のすぐそばの騒音を消去する訳ですから、理屈としても納得のいくところですね。
フィードバック方式
「フィードフォワード方式」ではイヤホン外部にマイクがあり、そこで拾った環境音と逆位相の音波を構成して再生することで騒音を低減しています。外部の騒音が(A)、再生する音楽を(B)とすると(A+B)に対して(ーA)を加えることで(B)だけが耳に聞こえる、というのがその仕組みです。ところが、実際にイヤホンを通して耳に伝わる音は(A+B)ではなく(A’+B)ですから、これだけでは完全にCだけにすることができません。
そこでイヤホン内部の耳に近いところにマイクを設置し、それで拾った騒音を打ち消すことで完全にクリアな音楽だけ残そうというのが「フィードバック方式」です。ただし、その仕組みはやや込み入っています。この場合マイクが拾う音は(A’)ではなく(A’+B)、つまり「耳近くに伝わる外部の騒音+再生する音楽」になります。そのため、フィードバック方式においては、一旦(A’+B)の逆位相の音を再生し全ての音を消去したあとで、改めて再生している音楽を追加するというやり方をしています。
少しくどくなりますが、式で表すと(A’+B)ー(A’+B)+(B)という感じでしょうか。ここで面白いのは、一旦全ての音を消去して「無音」の状態を作っているので、そのあとで付加する音によって「クリアな音楽の再生」以外にも色々な機能が実現できることです。例えば、何も追加しなければ「耳栓」として全く無音の状態にすることができますし、外部マイクで拾った周辺騒音(A)を追加すれば「クリアな環境音(周辺騒音)」をイヤホンをしながら聞くことができます。
ノイズキャンセリング製品を選択する場合のポイント
では通勤などでも利用しやすいイヤホンタイプで、いくつかの代表的な製品をご紹介しましょう。身も蓋もないことを先に言ってしまうと、価格に比例して性能は向上しますので「高額な機能は充実している」ことはやはり事実です。その中でそれぞれの使用環境や自分にあった音質を選択すると良いでしょう。
代表的なメーカーとしては高音域の再現性に定評があるソニー、ノイズキャンセリングの実績が豊富でノウハウを蓄積しているボーズ、最近「AirPads Pro」を発売したAppleなどが挙げられます。
イヤホンの接続方法
イヤホンの接続方法としては、イヤホンジャックを使った有線接続とBluetoothでの無線接続の2つがあり、最近はBluetooth接続の製品が多く出てきています。ただし、Bluetooth接続の場合、接続が不安定になったりすることがどうしてもありえますので、安定した音を高音質で楽しむには有線接続に優位性があると言えます。音にこだわるか、手軽に楽しむかで選択する良いでしょう。
バッテリー
ノイズキャンセリング機能を持った機器は有線・無線に関わらず電力を消費します。有線で10時間程度、無線だと6時間程度の連続再生に対応している機器が多いようです。有線であってもバッテリーが切れると普通のイヤホンとしても使えない機器もありますので、注意が必要です。Lightning端子で接続する機器ではiOS側から電力供給を受けますがその分、端末のバッテリーを消費することになります。
音質
音質ついては、実際に機器を利用して自分の好みにあったものを選ぶのが一番ですが、一般的に高額なものほど高音質が得られます。ハイレゾ対応の有無、ダイナミック型かBA型(バランスド・アーマチュア型)かなど、再生方法についても確認すると良いでしょう。
一般的にBA型よりもダイナミック型の方が音の歪みが少なく、広い再生周波数帯域が両立できるという特徴があります。BA型については構造上どうしても歪みが出やすいので、ドライバの優劣で音質が決まります。また、自社開発が難しいこともあり高額になりやすいのも欠点の一つです。
ノイズキャンセリング製品紹介
ソニー(SONY) WI-C600N
ソニーのノイズキャンセリングイヤホンの最新モデルです。ネックバンド型なので運動中などでも安心して利用することができます。また、7.5時間再生可能とワイヤレスタイプでは比較的長時間使えるのも魅力です。ソニーは音にこだわっているメーカーですので、高音質が楽しめるモデルでもあります。「AIノイズキャンセリング機能」を搭載し、3種類のモードから周辺環境に最適なノイズ低減が選択できます。上位モデルとして「WI-1000X」もあり、予算や音へのこだわりによって選択肢があります。※注2
ボーズ(Bose) QuietControl 30 wireless headphones
ノイズキャンセリング技術で豊富なノウハウを蓄積するボーズのイヤホンです。専用アプリを使えば12段階のノイズキャンセリングがカスタマイズできること、1回の充電で最大10時間の使用が可能なことなどが特徴です。もちろん、高性能スピーカーのメーカーですから、音にもこだわった作りとなっており、満足のいく音楽再生が可能です。※注3
ソニー(SONY) WF-SP700N
こちらはソニーのカナル型ワイヤレスイヤホンです。ケーブルによる煩わしさがなく、抜群の装着感をもつタイプです。さらに「IPX4」相当の防滴にも対応していますので、スポーツシーンでも大いに利用することができます。アンビエントサウンド(外音取り込み)モードを搭載し、重低音の再現性を向上させたEXTRA BASS soundなど、音質と機能の両方で特徴がある製品です。※注4
JVCケンウッド(KENWOOD) XE-M10BT
この商品は「周囲音取り込み機能」を使うことで、周辺の音をモニターしながらの音楽再生ができるため、楽器を演奏しながらという使い方もできます。コーデックに独自の技術が使われ、音質にもこだわった製品になっています。ネックバンド型の製品の中では選択肢の一つとして外せない製品です。※注5
Apple AirPods Pro
iOSユーザー待望のノイズキャンセリング機能付きAirPodsです。開放型からカナル型になったことで密閉度が向上し、良好な音楽再生環境が手に入るようになりました。前モデルからデザインも一新していますので、もう「耳からうどん」とは言われなくて済みます。
3種類のイヤーチップがあり、個人に合ったタイプが選択できるのもポイントの1つです。アクティブノイズキャンセリングを採用し、外部マイクと内部マイクの両方で環境音を拾い相殺することで、高いレベルでのノイズキャンセリングを実現しています。何よりiOSユーザーにとって端末との相性が高く、操作性が抜群であることが大きな魅力です。※注6
【まとめ】
今回は今話題のノイズキャンセリング機能つきイヤホンについてご紹介しました。メーカーやタイプによって多くの種類があり、それぞれに特徴も異なりますので、可能であれば実際に視聴してから自分にあった製品を選択すると良いでしょう。
※注1
Oricon公式チャンネル
King Gnu、初音源化楽曲「Teenager Forever」をCMで披露 静寂に包まれた電車内で圧巻の演奏 ソニー『WF-1000XM3』新CM&インタビュー映像
https://youtu.be/DzsQR1h7TPs
※注3
ボーズ
https://www.bose.co.jp/ja_jp/products/headphones/earphones/quietcontrol-30.html
※注4
ソニー
https://www.sony.jp/headphone/products/WF-SP700N/
※注5
JVCケンウッド
https://www3.jvckenwood.com/accessory/headphone/bluetooth/xe-m10bt/
※注6
Apple
https://www.apple.com/jp/airpods-pro/
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