活用事例に学ぶ、AIとBIMの組み合わせがもたらす未来
BIM技術は単体での活躍はもちろんですが、そのほかの次世代テクノロジーと組み合わさることで、さらなる可能性の広がりを見せてくれます。
中でも注目されている取り組みが、AI(人工知能)とBIMの併用です。
今回は各社の活用事例を参考にしながら、AI×BIMの新たな可能性について見ていきましょう。
目次:
①Autodeskの提供するジェネレーティブデザイン
②施工だけでなく保守管理へのBIM運用事例も増加
③AI活用によりBIMデータの生成も自動化
ジェネレーティブデザインの活用を推進するAutodesk
AIとBIMの組み合わせが持つポテンシャルについては、自社でBIMソフトを開発するAutodesk(オートデスク)が、いくつかの可能性を提示してくれています。
プロダクトデザインのあり方を変え得るパフォーマンス
オートデスクが2019年に行われたイベントの中で紹介したのは、ジェネレーティブデザインの活用です*1。
ジェネレーティブデザインは、オートデスクが自社ソフトで提供する設計検討プロセスです。
設計目標に加える形で機能や材料、製造方法、コストなどを入力することにより、自動的にソフトが設計図を出力してくれるという、優れた機能を有しています。
ジェネレーティブデザイン公式サイト:https://www.autodesk.co.jp/solutions/generative-design
これまでに蓄積されてきた、膨大なデザインのインプットから、ソフトはAIを用いて、最適解を独自に提案することができるようになったというわけです。
また、ジェネレーティブデザインが提案する設計は無限の可能性を秘めているだけでなく、瞬時に出力するパフォーマンスを有しています。
従来のプロダクトデザイナーが担ってきた仕事を、丸ごとソフト一本に代替してしまうことも、いずれは可能になるでしょう。
ジェネレーティブデザインの運用はすでに開始しており、日本では大和ハウス工業や、隈研吾建築都市設計事務所での事例が挙げられます*2。
AIによるデザインの生成と、BIMデータへのシームレスな移行は、建築から製造まで、多くの分野におけるメインストリームとなっていくかもしれません。
大成建設とマイクロソフトによる共同イノベーション
大成建設では、建設需要の減少に備えたストック型ビジネスへのシフトも進んでいます。
中でもAIやIoT、そしてBIMを活用する施設運用・保守事業のスタートは、新しい建設業界のあり方を提案する事例として、大きな注目を集めています。
AIとIoTを活用する施設運用・保守事業の開始
2019年の7月に「AI・IoTビジネス推進部」を立ち上げた大成建設は、マイクロソフトと協業する形で施設運用をスタートさせました*3。
Microsoft Azureを活用し、建物設備の自動制御や利用者データの収集をAIやIoTによって実現するクラウドサービスを構築したことで、具体的なソリューションの実施を進めていく段階に進んでいます。
BIMを用いた施設統合運用管理サービス
そんなソリューションの一つとして注目されているのが、BIMを用いた施設統合運用管理サービスの実現です。
BIMで構築された3Dモデルを、設計・施工だけでなく、運営管理の領域においても活用することにより、管理業務におけるコストパフォーマンスの向上が期待できるということです。
大成建設のクラウドサービスにおいては、BIMだけでなく従来型のデータも併用しての運用が可能となっています。
そのため、AIによる自動制御はBIMを用いた建物、BIMを使用していない建物の両方において行えるということで、即戦力となり得るシステムとして開発されているのです。
ハザードマップ生成に取り組むUGS
立川市に拠点を置くUGS(Utsugi Geo Solution)では、AIとBIMを用いた3Dハザードマップの作成が進んでいます。
AIとBIMを活用する地質の3D化
UGSが取り組んでいるのは、より正確な地質調査の提供です。
ボーリング調査のような従来の地質調査の場合、調査に不備が発生することも少なくありません。
調査時には問題なしとされた場合でも、後になって基準を満たさない地質であることが判明することもあるものですが、UGSは3D化によるソリューションによって問題の解決に取り組みます*4。
斜面をBIMデータ化することで、崩落などのシミュレーションを容易に行えるようにした上、AIによって過去の崩落事例とすり合わせることで、精度の高い調査を可能にしました。
「まちの防災」に取り組むUGS
このような技術を応用し、UGSは現在ハザードマップの3D化に取り組んでいます。
一般的なハザードマップは2Dで用意されていることがほとんどで、その上一元的な管理も行われていないのが現状です*5。
そこでUGSは自治体から既存のハザードマップの提供を受け、それらの3D化を一手に引き受けているのです。(削除)
一般的なハザードマップは2Dで作成されていますが、これでは地形の把握が難しく、一元的な管理が難しいという考えを持つ人もいるようです*5。
UGSはその点に注目し、自治体から既存のハザードマップの提供を受け、マップの3D化を一手に引き受けているのです。
3Dで視覚的に危険地域が理解しやすくなることで、適切な避難経路の把握だけでなく、地域住民の防災意識の高まりも期待できます。
また、3Dで共有する単一のハザードマップを参照するだけで、洪水や土砂災害などの情報を、一挙に把握することができるようになる点も、防災上の効果は大きいと言えるでしょう。
建設特化のクラウドを提供するaoz cloud
建設業界での運用に特化したクラウドプラットフォームのaoz cloud(アオズクラウド)は、低コストで優れたAIシステムを活用できるのが特徴です。
aoz cloud 公式サイト:https://www.photoruction.com/aozcloud/
膨大なデータを基にしたAIの提供
aoz cloudを提供するPhotoruction(フォトラクション)は、現場写真や図面などをクラウドにアップロードし、現場の一元管理を容易にするサービスを提供してきました。
2万5千件を超える導入実績を有する同社では、過去の実績から得られた大量のデータを活用し、AIの機械学習に活用されています。
その結果、クラウドに写真や図面をアップするだけでそれが何の工事で、何の図面なのかを自動的に読み取り、仕分け作業を行ってくれるよう利用することが可能になりました。
分析データからBIMモデルの構築も可能
aoz cloudが優れているのは、AIによってデータを仕分けすることができるだけでなく、そのデータを基にしてBIMデータをも構築可能である点です。
クラウドから仕様書などを読み込ませ、パラメーターも提供することにより、BIMモデルを自動生成することができるよう設計されているのです。
これまでは、仕様書などを基にデザイナーが手動で3Dモデルを構築していたのが、aoz cloudの登場により、そういったモデリング作業の手間を省くことが可能になりました。
おわりに
時間と人手をかけていた仕事が、AIとBIMの組み合わせによって次々と自動化されています。
BIMによって作業労働が減少しただけでなく、AIによって自律的な思考がコンピューターにも可能になることで、創造的な業務でさえも、人間の必要性がなくなりつつあります。
このような仕組みが普及した未来において、それでも人がやらなければならない仕事は何なのかという答えについては、回答を得るまでにもう少し時間がかかることになりそうです。
出典:
*1 建設通信新聞「【オートデスク・AUJ】IoT・AI×BIM デザインと建設、製造を融合 製造工程見通した設計を提示」
https://www.kensetsunews.com/web-kan/375533
*2 上に同じ
*3 大成建設「AI・IoTを活用した施設運用・保守事業の変革に向け協業を開始」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2019/191015_4811.html
*4 施工の神様「「私は”一人土木地質コンサル”」 AIやBIM/CIMを活用しハザードマップを3D化」
https://sekokan-navi.jp/magazine/35298/2#anc-0
*5上記リンク 3ページ
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