大和ハウスがBIMで提示する、建設業界におけるDXのあり方
日本では業種の垣根を越え、デジタル・トランスフォーメーション(DX)への注目が集まっています。
この流れは建築業界においても例外ではなく、大和ハウス工業では特に実践的な取り組みが進んでいるところです。
建設業界におけるDXが目指すもの、そしてそこにBIMがどう関わってくるのかについて、ご紹介していきます。
目次: ①DXはなぜ重要なのか ②BIMがDXにおいて重要な理由 ③大和ハウスが実践する「D’s BIM」
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
DXは、2000年代半ばから提唱されてきたコンセプトの一種で、ITの力で生活を向上していく行動を指しています。
鍵となるのはデジタルとデータの利活用
21世紀初頭、IT革命によって多くの企業でPCの利用は当たり前となり、オフィスワークにパソコンは欠かせない存在となりました。
しかしパソコンがいくら便利であっても、業務の全てをPCに一元化することは難しく、紙媒体の書類の運用やハンコによる承認作業などは依然として残されています。
DXは、あらゆる業務をデジタル化し、全ての情報をデジタルデータとして活用することで、より暮らしやすい社会を実現していこうというムーブメントです。
DX実現のためには旧来の業務形態の刷新が必要で、建設業界は特にDXの必要性や余地が大きいと呼ばれている業界なのです。
経済産業省も推進するDX
DXは、もはや一企業の取り組みとしてではなく、国を挙げての一大改革として進められつつあります。
経済産業省が発表したレポート「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、DXの実現が喫緊の課題であることについて、詳細にまとめられています。
DX実現に向けた具体的なシナリオ、推進のための対策などがわかりやすくまとめられたサマリーも公開されているので、気になる方は1度目を通しておいても良いでしょう。
DXの推進が急がれる理由
DXが日本においてこれほど力を入れて取り組まれている理由としては、いくつかの深刻な問題が差し迫っていることが挙げられます。
迫る「2025年の崖」
DX推進の一つ目の理由は、「2025年の崖」問題です。
これは、上記の経産省のレポートの中でも触れられている事案で、日本企業に大きなコストパフォーマンスの低下が襲いかかることを危惧したものです。
構築して十年以上が経過した既存システムの多くは、現世代、あるいは次世代での主要な運用が想定されているシステムやソフトウェアの運用に対応していません。
また、既存システムを現行の環境へアップデートするために対応できるエンジニアの数も減少し、費用はその分高騰を続けます。
あるいは当時構築を担当したエンジニアが現場を退くことで、システムがブラックボックス化してしまい、改修不可能になってしまう可能性もあります。
あるいは、公式サポートが終了したOSを使い続けることで、潜在的に大きなセキュリティリスクを抱えながら業務を遂行するリスクも増大していきます。
こういったリスクや負担は2025年から2030年にかけて、最大約12兆円/年にものぼる可能性があると試算されています*1。
これを、経産省は「2025年の崖」と呼び、各企業に警鐘を鳴らしているのです。
DXの実現によって少しでも費用負担を小さくすることが、企業の成長にも繋がっていきます。
労働人口の減少
そして、日本では少子高齢化による労働人口の減少が顕著です。
働き手が少なくなれば、熟練の労働者も技術を次の世代へ伝えきれずに一線を退くか、負担の大きな業務に携わらねばならず、人材育成に時間を割くことができません。
そのためAIの利活用やロボットの導入によって、積極的に業務効率化を推進していかなければ、日本の企業は持たなくなってしまいます。
DXの実現によって業務効率化を推し進めていくことは、建設業界では特に重要です。BIMの活用や無人での作業を実現し、人員の効果的な配置が求められています。
なぜ建設業界のDXにBIMが必要なのか
建設業界のDXにおいて注目を集めているのがBIMですが、そもそもBIMはなぜDXにおいて重要な位置付けにあるのでしょうか。
BIMはDXの原動力に
実は、日本においてはすでにBIMがDX実現に向けた原動力になり得るという話が出てきています*2。
BIMは設計から施工、運用に至るまで、建設や不動産運用に関わるあらゆる業務において利活用することができるデータです。
BIM活用が容易な運用プロセスを整備していくことで、建設業界におけるDXは大きく前進することになるでしょう。
建設業界の業務効率化に大きく貢献
BIMは3Dモデルに建築に関わるあらゆる情報を内包させるという技術ですが、これは言い換えると建築に関わるあらゆる情報のデジタル化とも言えます。
これまで建築に関わるデータを扱う場合、デジタルデータを一度紙に出力したり、出力した情報を再度デジタル化したりと、多くの手間をかけるケースもありました。
しかしBIMデータを一貫して運用できる環境を整えることで、設計から施工まで、大きな業務効率化を図ることができます。
大和ハウスが実践するBIM活用のDX
そんな中、大和ハウスにおいては他の企業に先んじてDXの実現に向けて動き出しており、積極的なBIMの運用が見られます。
建築イノベーションの「D’s BIM」 ダイワハウスが提唱する「D’s BIM」と呼ばれるプロジェクトは、設計革命の先駆者として、画期的なワークフローを実現しようとしています*3。
D’s BIMは、AutodeskのBIMソフトであるRevitをベースとしたプロジェクトで、ワークフローの完全BIM化を目的として動いています。
BIMを用いて建物の3Dモデルに部材の価格や仕様、性能などあらゆる情報を付与することで、一つのデータで全ての業務を遂行し、円滑な情報共有を実現しました。
無駄を減らし、ミスの余地も削ったことで、結果的に高品質、高スピードでの施工が可能となり、大和ハウスにおける新しい業務のスタンダードとして定着しつつあります。
基本方針となる4つの柱
D’s BIMにおけるコンセプトは、「文化・人・物・絆」という四つの柱を創造することにあります*4。
BIMの導入によって新しい業務フローを実現し、新たな企業文化を作り出すのが一つ。D’s BIMに最適化した人財を育み、企業の未来に貢献してもらうことが二つ。
Revitを共通言語とし、情報、つまり物を構築していくことが三つ、そうして築いた企業が、社会との絆を創造していくのが四つ、ということが目標に定められています。
BIM運用における明確なコンセプトの設定は、BIMの強みである円滑な情報共有の力をしっかりと引き出す上でも、大きな役割を果たしているのです。
おわりに
今やDXは日本全体が一丸となって取り組まなければいけない事案であり、建設業界においてはその必要性が差し迫っています。
大和ハウスのようにBIMをしっかりと企業文化として取り入れていく姿勢は、これからBIMの導入を検討している企業にとって、非常に参考になると言えるでしょう。
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▽BIMについてはこちらもチェック
五洋建設が進める施工管理システムへのBIM導入
https://stg.capa.co.jp/archives/33423
「D’s BIM」に見る大和ハウスのBIM運用の目的と手段
https://stg.capa.co.jp/archives/33426
鹿島建設の生産性向上施策|BIMを使ったロボットの遠隔管理を解説
https://stg.capa.co.jp/archives/33420
参考:
*1 経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」p.1
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
*2 BUILT「【第2回】日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」 (2/3)」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2004/15/news006_2.html
*3 大和ハウス「設計革命の先駆者であれ」
https://www.daiwahouse.com/innovation/soh/vol11/
*4 上に同じ