Autodesk forgeで出来る事と活用例
スマートフォンやタブレット等のモバイルデバイスを用いたインターネット接続が日常化した今、クラウドサービスの充実によってオフィス外であっても多様な働き方ができるようになりました。
このような背景で満を持して誕生したAutodesk社のforgeは、設計やデザイン分野のCAD利用を強力にサポートするツールとして日本にも浸透しつつあります。では、forgeには具体的にどのような活用方法があるのでしょうか。
この記事を読むと以下の3つのことがわかります
①forgeの機能概要
②forge活用例 サービス編
③forge活用例 管理編
forgeの機能概要
まったく新しいタイプのWeb サービス APIとして2015年に発表された「Autodesk Forge」は、webブラウザを介してCADデータの操作ができるツールです。クラウドサービスが充実してもなお、使用ツールの専門性の高さから恩恵を受けにくい立場にあった設計・デザイン分野のCAD利用者に、画期的な利便性をもたらすサービスとして注目が高まっています。設計者・施工者をforgeのプラットフォームを介して効果的に繋げることをミッションとして、ものづくりの世界における効果的・効率的なマネジメントをサポートするのがforgeなのです。
Viewer:web上で図面が見られる
forgeのサービスではwebブラウザでcad図面が見られるため、CADが導入されていないパソコンや、タブレット等のモバイルデバイス上でも図面が確認できます。外出先でも設計情報の共有をすることが可能となるため、設計・施工両者の迅速で確実なコミュニケーションツールとして活用できます。
Model Derivative API:様々な形式のフォーマットに変換
forge のプラットフォーム上で、CADファイルを他のフォーマットに変換してくれる機能です。AutoCADデータとCAD以外で作成したデータ、AutoCADデータと他社のCADデータなど、それぞれの領域を超えたデータのやり取りが可能です。
Design Automation API:AutoCADのコマンドを誰でも飛ばせる
forgeを利用するユーザーは、AutoCADをインストールしていなくても、AutoCADのコマンドが実行できてしまうのです。これは、AutoCADのインストールフォルダに格納されているもうひとつの AutoCAD 実行形式、accoreconsoleを用いて開発されているからです。accoreconsoleで実行できるコマンドであれば、クラウド上でCADの操作ができる仕組みとなっているのです。
Reality Capture API :写真から3Dデータが作れる
対象物をあらゆる角度から撮影し、それらの写真をクラウド上にアップロードすると3Dデータを生成してくれます。この機能はドローンによる鉱山の管理にも使われていることから、大小さまざまな規模に応用できそうです。
なお、ダウンロードした3D メッシュやオルソ画像は、各種Autodesk製品で利用できます。
forge活用例 サービス編
既存の各種デザインデータを誰もが活用できるよう開発されたforgeは、他のweb APIと組み合わせマッシュアップすることで、新たな可能性を生み出すことが予想されます。
web見積・原価算出サービス
Viewer 機能・Design Automation APIにより、アップロードされた図面上での積算が容易になります。webシステムとの組み合わせ次第ではweb見積サービスや原価算出システムの構築も可能です。
SNSと組み合わせた営業支援ツール
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるようなSNSとの組み合わせで、よりカスタマイズされた営業支援ツールを組み立てることができます。
たとえばGoogle Mapsと連携した土地や物件等の地理情報とリンクさせたり、Facebookで解析したユーザーのカテゴリを元に意匠設計のパッケージを複数パターン作成させたりと、あらゆるバリエーションが想定されます。
意匠設計の「数値化」
論理的な解析と判断が求められるビジネスの世界において、ことデザインの分野となると数値を伴ったエビデンスの提示を苦手としている、と言えるのではないでしょうか。CADによる意匠データと各種管理データを共存させられるforgeのプラットフォームを用いることで、従来「なんとなくかっこいい」「好みのデザインである」など、構造設計・設備設計に比べ数値化しにくかったデザインの分野にも、数値をあてはめることができるかもしれません。それにより建築の意匠性において「理にかなった美しさ」の提示が可能となり、構造、設備、施工、そして施主といった関係者各位との協議においても、より納得感ある円滑な意思決定が促進できることでしょう。
forge活用例 管理編
様々な機能を有するforgeは、管理部門にこそ本領を発揮するサービスと言えるかもしれません。例えば書類管理システムと統合すれば、図面や契約書の承認をweb上で行うことができることは想像に難くありません。その他、日本発祥の画期的なサービスがforgeから生まれました。
BIMでランニングコスト対策
建物の3Dデジタルモデルを用いて建築の設計・施工の工程において情報共有しコスト削減・業務効率化を図るBIM(Building Information Modeling)。ここで作成する3Dモデルは意匠表現を目的としたCGパースとは一線を画し、構造設計や設備設計に関する情報から仕上げの種類まで、数値化に必要なあらゆる種類の情報を含んでいることが前提条件となります。
日本の企業が開発したBIMシステムの事例として安井建築設計事務所のリリースした「BuildCAN (ビルキャン)」が国内外に知られていますが、このシステムに用いる3Dモデルの作成にforgeが活用され、BIMモデルに建物の点検・管理情報をも付加して可視化することで、設計・施工を経て竣工の運営段階においても効率化を図った点が評価されています。
(※)「BuildCAN で複数の建物を群として管理して、BIM モデルのない既存の建物を含めた一元管理が図れます。また、施設の点検をタブレットで行うことで点検業務のデジタル化や点検報告書の自動作成など、維持管理業務の支援も可能です」(※)
と、同事務所ICT本部長の繁戸和幸氏は発表しています。
IoT との組み合わせで複合的管理
このBuildCAN プラットフォームのもう一つの大きな特徴は、建物内にIoTセンサーを設け環境マネジメント機能を持たせたこと。BIMモデルに温度・湿度・CO2といった環境情報を可視化させることで、建物の省エネルギー化に有効な換気や空調に関する通知や、消費電力の予測・分析機能を付加しています。
安井建築設計事務所の事例では、forgeを活用したBIMによるワークフローにより10~20%の保全・修繕・更新コストの削減と、IoTセンサーによる環境マネジメント機能との組み合わせで1日最大60%の空調エネルギー低減効果が実証実験にて確認されました。
まとめ
2015年12月にAutodesk forge がリリースされてから4年弱。始めの1年だけでも4000以上のサービスがforgeによって開発されたといい、日本国内における認知度も確実に上がってきました。
様々なweb APIが開発・進化する中、 forgeの機能自体もブラッシュアップが行われており、各種APIの組み合わせによる「化学反応」が楽しみです。
設計に必要なCAD等の2D・3Dデータと各種明細や管理情報等のデータが同じプラットフォーム上に統合されることの最大のメリットは、その利便性や機能の高さ、将来的な用途拡充の可能性から、多種多様な人材を活用できること。人材不足や働き方改革といった社会情勢に対して、設計・施工等各分野におけるフレキシブルなソリューションツールとして、今後加速度的に利用者が増えることは想像に難くありません。
forgeを共通言語の行き交うプラットフォームとすることで、多様・多彩な人材で、スピード感をもってプロジェクトに対峙できるのではないかと思います。
forgeのコミュニティイベントや展示会も随時開催されていますので、活用を考えている方は積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
参考URL
(※)Redshift by AUTODESK
https://www.autodesk.co.jp/redshift/yasui-archi-buildcan/
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