Unity Reflectを活用した3D建築工事について
この記事でわかること
・現在主流の建築工事について
・Unity Reflectとは
・Unity Reflectを活用した3D建築工事
現在主流の建築工事について
建築を行うための必須ツールとして「図面」が挙げられます。
以前はドラフターなどの製図板を使い、手作業で図面を書いていました。この図面を「青焼き」と呼ばれるコピーで複製し、作業に携わる人達に配布するという形式が一般的でした。
設計に修正や変更があった場合は、図面を修正し、コピーを取り直し、配布し直すという手間がかかります。
当然ながら、どの図面が最新なのかの版数管理が必要となり、それをすべての人々に正しく伝えることも難しい作業でした。
1980年代ころから、パソコンを活用したCADが使われるようになり、製図をコンピュータ上で行うようになりました。最初は手作業の製図がコンピュータに置き換わっただけなので、印刷した図面はコピーした図面の取り扱いとほぼ同じでした。
これがネットワークを介してファイル共有という形を取るようになり、また、製図も2D(平面)から3D(立体)へと進化してきました。
さらに、ネットワークを活用することで、クラウド上にアップロードされたファイルを閲覧・編集することができるようになりました。これにより、誰もが最新のファイルを見ることができるようになりました。
現在では、特に大規模な建築においてはBIM(Building Information Modeling)が主流となっています。BIMは、企画・デザインから設計、施工、運用管理までを一貫して行えるシステムです。
また、BIMでは建物の外観的な3D図面だけではなく、使われている部材のコストや管理情報などの属性データを持っているのが特徴です。
これにより、設計フェーズで、構造計算や環境性能、各種シミュレーションを行うことができるようになります。*1
また、現場ではBIMで設計された情報に従って建設工事を行います。修正や変更があった場合も、クラウド上のBIMデータを確認しながら工事を進めていきます。
これが現在主流になっている建築工事と言えるでしょう。
Unity Reflectとは
Unity Reflectの前に、簡単にUnityについて説明しておきます。
Unityとは
Unityとは、2D/3Dのゲームエンジンとして有名なUnity社が開発したゲームエンジンです。
ゲーム内は仮想空間になっています。そこに立方体や球体、円柱などのオブジェクトを配置して、わずか数行のプログラムで動かすことが可能です。
例えば、「Rigidbody」という命令を使うと、オブジェクトを重力に従って動かすことができます。*2
球体を上空に置き、床を斜めにして「Rigidbody」すると、球が上から落ちてきて、床を転がっていきます。
「落ちる」「転がる」といった難しい物理演算はUnityがやってくれるので、プログラマはゲームデザインに注力することができます。
そのほか、キーボードやマウス、コントローラーなどのインターフェース管理、レンダリングやライティングなどのグラフィックス、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の管理など、様々な機能を持っているのがUnityの大きな特徴です。*3
このように、開発環境として優れているUnityは、ゲームのみならず、映像製作や自動車開発、医療分野でも活用されるようになってきています。*4
Unityが提供しているUnity Reflectについて
ではUnity Reflectについてみてみましょう。
Unity Reflectとは、Unityが提供している建築業向けのソリューションです。
さきほども説明したとおり、Unityには3Dオブジェクトの演算処理や優れたグラフィックス機能が搭載されています。
一方、BIMでは素材の属性を考慮したシミュレーションや設計、施工管理、運用管理などが行なえます。
UnityとBIMを組み合わせることで、強力でリアルタイムな3D環境を作り出すことができます。
ただし、BIMのデータをUnityに移行するには、BIMで管理している部材の材質や強度、寸法などの属性をUnityで扱えるように修正する必要があります。
具体的には、リダクション(変換)、マッピング(位置情報)、ライティング(3Dにおける光源管理)など、Unity用に変更する作業が数多く発生します。
これをワンクリックで行えるようにしたのがUnity Reflectです。
Unity Reflectをインストールすると、導入しているBIMソフトウェアへのプラグインという形で実装されます。
例えば、Autodesk社のRevit用のプラグインをインストールすると、RevitにUnity Reflectのボタンが表示されます。
このボタンをクリックすると、RevitのBIMデータがUnity用のリアルタイム3Dに変換されます。*5
Unity Reflectを活用した3D建築工事
従来のBIMでは、パソコンなどの画面上に3Dの建築物を表示させることができます。
また、データをクラウドに保存しておけば、タブレットやスマートフォンでの表示も可能です。
しかし、建築物ができていない更地に実際はどのように建築されるのか、あるいは、建築工事中の建物がどのように完成するのかなどは、頭の中で想像するしかないでしょう。
もちろん、BIMの細かいデータがあるので、熟練した人であれば、詳細に想像できると思いますが、それを他人に伝えるのはなかなか難しい作業になるでしょう。
Unity Reflectの3DデータとHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使えば、UnityのAR技術で、目の前に原寸大の建築物を3Dで表示することが可能です。
ARを使えば、建築工事が行われる前の段階でも、完成した建築物を「目で見て」確認できるようになります。
また、建物の縮尺やレイヤなどを自由に変更することができ、様々な角度から建築工事を分析することもできます。
Unity Reflectを活用することで、自分の担当する箇所をチェックすることはもちろん、プロジェクトの関係者と効率的に意思疎通を図ることができます。*6
また、Unity Reflectでは、HMD以外にもタブレットやスマートフォンを使用することもできます。
ARの見え方が変わってきますが、カメラを通して、建築物やその部材がどのように配置されるのかを確認することができます。
【まとめ】
今回はUnity Reflectと建築工事について説明しました。
Unity Reflectを活用することで、現場で建築物の確認を行う、プロジェクトの意思疎通を図るなど、多目的なツールとなります。
このAR技術がさらに進化し、精密なものになれば、ARで表示される仮想空間に、建材を並べていくことで建築工事が進んでいくかもしれません。
建築工事の手法を大きく変化させる可能性を秘めたUnity Reflectに、今後も注目していきたいです。
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参考URL
BIMとは? | BIM Design *1
http://bim-design.com/about/index.html
リジッドボディ概要 – Unity マニュアル *2
https://docs.unity3d.com/ja/2019.4/Manual/RigidbodiesOverview.html
Unity ユーザーマニュアル (2019.4 LTS) – Unity マニュアル *3
https://docs.unity3d.com/ja/2019.4/Manual/UnityManual.html
【初心者向け】Unityとは?特徴や活用事例について *4
https://game-creators.jp/g-job-tenshoku/news_articles/16
建築 | Unity for Industry *5
https://industry.unity3d.jp/Architecture.html
AR/VR のための AEC 設計レビューコラボレーションソフトウェア | Unity Reflect Review *6
https://unity.com/ja/products/unity-reflect-review