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Microsoft Edge次世代バージョンで変わること、できるようになること

次世代Microsoft Edgeのベータ版が、2019年8月20日(現地時間)に提供を開始しました。WindowsとmacOSのクロスプラットフォームで利用できます。この後、利用者からバグなどの報告を募り、最終的には2020年5月に正式版が提供される見込みといわれています。

Microsoft Edge は、Windows10 からデフォルト(標準)で搭載されるようになったMicrosoftのブラウザです。Macユーザーには馴染みがないかもしれませんが、Windows10以前はInternet Explorer(IE)として提供されていました。現在、Microsoft Edge はAndroidやiOSのモバイルアプリとして、スマートフォンでも利用できます。

次世代のMicrosoft Edgeは、どのように変わるのでしょうか。
この記事を読むと、次の3つのことが分かります。

①Microsoft Edgeの次世代バージョンで変わること
②Microsoft Edgeと他のブラウザの相違点
③Microsoft Edgeに搭載される新機能

Microsoft Edge の新バージョンはChromiumベース

次世代Microsoft Edgeは「Chromium(クロミウム)」ベースになります。Chromiumはオープンソースのプロジェクトで、Googleのエンジニアたちが主導になって運営しています。

ベータ版リリースに至るまでの経緯として、4月8日(米国時間)にWindows 10の64ビット版対象で、毎日更新されるCanaryビルドと毎週更新されるDeveloperビルドというプレビュービルドが公開されました。一般ユーザー向けではなく、一部の開発者や新しもの好きのためのプレビューです。新機能は搭載されず、UI(ユーザーインターフェース)の変更もなかったといわれています。しかし、100万件以上のダウンロード、14万件以上のフィードバックがあったと報じられました。このテスト期間を終えて、ベータバージョンの公開に至りました。

次世代Microsoft Edgeは「Chromiumベースになること」が大きな変更点です。以下の3つにおいて、これまでとは変わります。

・ブラウザのエンジンが変わる
・Chromium採用によってオープンソースをベースとしたブラウザになる
・個人や企業で利用の機会が生まれる

それぞれ解説しましょう。

1. ブラウザのエンジンが変わる

ブラウザは、HTMLの表示(レンダリング)や、JavaScriptの処理など、裏側で動作する「エンジン」が重要です。このエンジンが優れていると、リッチコンテンツをストレスなく表示させたり、インタラクティブな処理を可能にしたり、ブラウザの品質を高めます。

これまでのMicrosoft Edgeは、Internet Explorerから継承したベンダープレフィックス(Bender Prefix:Microsoftによる拡張機能を実装した)ブラウザで、HTMLのレンダリングエンジンはTrident とEdgeHTMLでした。これがChromiumベースになると、KHTML、WebKit、Blinkになります。

Chromium という言葉を何度か使いましたが、「そもそもChromeとChromiumはどう違うのか?」という疑問がわくかもしれません。

簡単に解説すると、Chromiumはオープンソースのブラウザプロジェクトであり、このソースコードを利用してGoogleが開発、製品化して無償配布しているブラウザがChromeです。ロゴマークを比較するとわかりやすいのですが、同じ形状であっても、オープンソースプロジェクトのChromiumは全体が青ですが、Google Chromeは中心の青以外は、Googleのコーポレートカラーである赤、黄色、緑に塗りわけられています。

ちなみに主要ブラウザのHTMLレンダリングエンジンは、次のようになっています。
表にはありませんがOperaもChromiumベースのブラウザです。モバイルOSでは、AppleはOSで利用するHTMLエンジンをWebKitに限定しています。それ以外は使えません。

 

Internet Explorer Trident  
Microsoft Edge

(現行バージョン)

EdgeHTML
Microsoft Edge

(次世代バージョン)

KHTML WebKit Blink
Google Chrome
Safari  
Firefox Gecko Servo  

 

表にはありませんがOperaもChromiumベースのブラウザです。モバイルOSでは、AppleはOSで利用するHTMLエンジンをWebKitに限定しています。それ以外は使えません。

JavaScriptのレンダリングエンジンは以下のようになります。

Internet Explorer Chakra
Microsoft Edge

(現行バージョン)

Microsoft Edge

(次世代バージョン)

Google V8 JavaScript Engine

 

Google Chrome
Safari JavaScriptCore
Firefox SpiderMonkey

 

つまり、JavaScriptに関しては、次世代Microsoft Edge はGoogle Chromeと同じエンジンで、SafariやFirefoxとは異なる仕様になります。

2.オープンソースベースのブラウザになる

同語反復のようですが、Chromiumベースになるということは「Windows 10標準搭載のブラウザが、オープンソースベースのブラウザになる」ということです。

2015年に登場したMicrosoft Edgeは独自開発のEdgeHTMLを採用しました。ところが2017年にはAndroid版とiOS版をリリースしていますが、EdgeHTMLを採用しませんでした。Android版のMicrosoft EdgeのレンダリングエンジンはBlink、iOS版はAppleではWebKit以外は使えないのでWebKitです。

オープンソースを利用すれば、クロスプラットフォームで幅広い機会が生まれます。Windows 10標準搭載にもかかわらず、機能的に退化してしまったMicrosoft Edgeが復活する可能性を秘めています。

Microsoft 社はPaaS(Platform as a Service)のAzureにおいても、オープンソース対応を進めています。さまざまなOSS(Open Source Software)が利用可能なプラットフォームを拡充することで、開発者の取り込みに積極的です。

3. 個人や企業の利用が増える

オープンソース化によって、開発者とともに一般ユーザーを増加させ、個人はもちろん企業におけるMicrosoft Edgeの活用を促進することがMicrosoftのねらいとしてあるようです。

Windows 8以降「Modern UI」が採用されました。タイル型のUIは、パソコンだけでなくタブレットやモバイルフォンでも共通のUIを提供することが目的でした。この設計思想に沿って、IEからの脱却をねらったブラウザがMicrosoft Edgeといえます。ところが他のブラウザはChromeに最適化する進路をとりました。機能面で他のブラウザに追いつけなかったというより、Microsoft Edgeは取り残されてしまった印象があります。

しかし、今回の次世代Microsoft Edge によって、Microsoftは独自路線からオープンソース路線に切り替えました。このことによって、企業や個人でMicrosoft Edgeの利用が増えるかもしれません。次世代Microsoft EdgeはWindows版だけでなく、macOS版も提供される予定です。

バグの発見者に最大3万ドルの賞金

ベータバージョンのMicrosoft Edgeをセキュリティ面からも完成度を高めるために、Microsoftは「Microsoft Edge Insider Bounty Program」を立ち上げました。重大な影響を与える脆弱性を発見した開発者には、最大3万ドル(約320万円)の報奨金を提供します。

参考:Microsoft Edge Insider Bounty Program公式サイト(英語)
https://www.microsoft.com/en-us/msrc/bounty-new-edge

Microsoft Edge の新機能

次世代Microsoft Edgeの最も大きな機能は「Collections機能」です。タブに表示された大量の情報を一時的に保存し、あとでWordの文書やExcelの表計算形式でリンクをまとめてリスト化できます。

最新のWordでは「スマート検索」として、文書の中の単語をハイライトさせてコンテクストメニューから検索をかけると、インターネットから検索したテキストや画像をサイドウィンドウに表示できます。Microsoft Edgeから気になった情報を「収集(コレクション)」して、WordやExcelで使えるようにすることは、Office 365を提供しているMicrosoftのオフィス向けアプリケーションと連携した強みになります。

Windows 7/8.xに対応したダークモード、基本・推奨・厳格の3つで設定できるトラッキング防止機能など、他のブラウザに標準装備されている機能も追加されます。Chromeの拡張機能も使えるようになります。

まとめ

話題は変わりますが、日本の現状では確定申告を「e-Tax」で利用する際には32bit版Windowsが前提条件で、64ビット版のWindowsでICカードリーダライタを利用する際のブラウザは「Internet Explorer 11」 に限られます。

macOSで利用できないことはデザイン系のオフィスでは致命的です。しかも64ビットのWindowsクリエイティブPCを利用していると、「えっ。IE 11限定なのか。そもそもIEって、どこにあったんだっけ?」と探さなければなりません(メニューの「Windowsアクセサリ」にあります)。

次世代Microsoft Edgeでは、Internet Explorerモードを搭載し、タブでIE 11としてWebサイトを表示できる予定です。確定申告の際に「IEはどこだ?」と探さずに済むようになるといいですね。

イノベーションのために、ときには古い仕様を切り捨てることが必要です。また、他社との競争によってテクノロジーは進化してきました。しかしながら、オープンイノベーションとして、社内にない技術を社外の開発者に求めたり、一般ユーザーに使ってもらった感想から改良を加えたり、「競争」より「共創」が必要な時代ではないでしょうか。

オープンソースのChromiumベースに変更し、セキュリティのバグを賞金によって社外の開発者に発見をゆだねる次世代Microsoft Edgeの試みは、ブラウザの機能充実や処理速度の向上はもちろん、企業姿勢として見習うべき開発の方向性を示しています。

 

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