Apple PayとFeliCa、どう違う?
iPhone 7以降のiPhoneは全てFeliCa及びApple Payに対応しています。(FeliCa?という方にはおサイフケータイに使われているのと同じ技術、といったほうがわかりやすいかもしれません)
iPhone7では日本版のみに搭載されていたFeliCaですが、8以降は世界標準搭載となりましたね。AndroidとiPhoneどちらが便利かという議論で必ず登場していた、iPhoneはおサイフケータイが使えないから不便、というのも今や昔となりました。
ところで、Android端末であれば主におサイフケータイ(またはGoogle Pay)を使ってFeliCa決済をするのに対し、iPhoneでは主にApple Payを使ってFeliCa決済を行います。
ここが少しややこしく、Apple PayとFeliCaって別物なの?そもそもFeliCaって何?という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Apple PayとFeliCaの違いを解説していきます。
FeliCaは非接触ICカードのプラットフォーム
FeliCaといえばおサイフケータイの印象が強く、決済システムのように思われている方も多いかもしれませんが、FeliCaは決済システムの名称ではありません。ソニーによって開発された非接触型ICカードの通信技術の名称です。
そもそもFeliCaはNFC(Near Field Communication)と呼ばれる近距離無線通信規格の拡張規格の一つです。
近距離無線通信とは搭載機器同士を近づけるだけで通信ができる技術のこと。もっと噛み砕いて言えばもの同士をかざすだけで情報をやり取りできる技術のことです。
その近距離無線通信のデファクトスタンダードがフィリップス、ノキア、ソニーの三社が共同開発したNFCという規格です。そしてNFCをベースとしてソニーが開発したNFCの拡張規格がFeliCaという関係です。
NFCないしFeliCaは「かざすだけで通信ができる技術」なので、FeliCaを活用したサービスはおサイフケータイやApple Payなどの決済サービスに限りません。たとえば、社員証としてオフィスの入退出時の認証管理にも使われます。あるいはイベントやスポーツ観戦のチケットにも使われています。さらに健康機器や家電と連携させて、IoTツールの一部として利用することも可能です。
日本でFeliCa決済を利用するサービスの代表格といえば「Suica」でしょう。2001年からJRで導入されました。いまでは紙の切符が珍しく感じるほどに普及しています。またスマホがSuicaになるモバイルSuicaの場合、スマートフォンでタッチして改札を通過できるため便利です。またスーパーマーケットやコンビニエンスストアでもWAONやnanacoなどのプリペイドカードににFeliCaの技術が使われています。小銭を出さずにスムーズな買い物ができます(使い方が増えるほど、カードやスマートフォンを紛失したときのショックも倍増ですが)。
なおNFCにはFeliCa(Type Fとも呼ばれる)の他にもType A、Type Bという2つの規格があります。世界的に広く使われているのは導入コストの低いType A、Type Bで、FeliCaはほぼ日本限定のいわゆる「ガラパゴス規格」となっています。
日本でTypeA/BではなくFeliCaが普及したのは先程述べたSuicaに代表される交通系ICの影響が大きいと言われています。FeliCaはその他の規格に比べ非常に通信速度が早いという特徴があり、日本の超過密な通勤ラッシュの中で自動改札を通過するには高速通信が可能なFeliCaが必要だったというわけですね。しかし、過密ラッシュへの対応という日本独自の事情で普及したFeliCaは、結果的にNFC決済において日本を世界標準から浮いた存在としてしまうこととなりました。
ここまでをまとめると、FeliCaは非接触ICカードの規格、プラットフォームであり、さまざまな活用方法のひとつとしておサイフケータイやApple Payというモバイル決済手段があるという関係です。
Apple Payは決済システム
一方、Apple Payは「決済システム」です。クレジットカードをiPhoneに登録して簡単かつ安全に決済ができるというApple独自のサービスで、日本ではiPhone7の登場とともに解禁されました。
Apple Pay自体は2014年アメリカで提供が開始されていましたが当初はType A/Bへの対応のみでいわゆるガラパゴス規格であるFeliCaには対応していませんでした。一方日本においてFeliCa決済は2000年頃からEdy(現在の楽天Edy)を皮切りに、SuicaやWAON、nanacoなどあらゆるシーンで普及が進んでいました。日本でのiPhone人気や、先述した特殊な交通事情なども鑑みてAppleもついに折れ、iPhone7でFeliCaを日本モデルで採用、8以降は世界標準搭載へと踏み切りました。
Apple Payが日本国内で浸透しているFeliCaの技術を採用したことによって、逆に日本の電子決済事情を変える可能性もあります。現状では、NFCによる電子決済のインフラはあまり整備されていませんが、急速に整うようになるかもしれません。
今後のNFC決済は?
iPhoneがFeliCaに対応したことで一気にFeliCaが世界標準に…となれば日本のユーザーにとっては好都合かもしれませんが、すでにType A/Bが海外で広く普及していることやコスト面の優位性からFeliCaが天下をとるのはなかなか難しいでしょう。
むしろインバウンド需要の獲得が大きな経済の課題となっている日本としてはFeliCa(Type F)だけでなくType A/Bによる決済のインフラ整備が求められるかもしれません。電子決済に慣れ親しんでいる訪日外国人が商品やサービスを購入しやすくなれば、東京オリンピックなどの国際的なイベントに向けて、経済的な効果が見込めます。
また日本でTypeA/Bでの決済が普及すれば、今度は日本人が海外に行った時スムーズにモバイル決済を利用できるというメリットもあります。日本で買ったiPhoneであってもTypeA/Bでの決済に対応しているので、今後TypeA/Bでの決済(NFC決済と呼ばれる)に対応するクレジットカードが日本でも増えれば海外旅行者などにとっては嬉しい状況となるでしょう。
フィンテックとともにビジネスチャンスの到来
最近、金融業界とIT業界で盛んに使われている言葉、フィンテック(FinTech)。テクノロジーによって新たな金融サービスを生み出す動向です。具体的には、電子決済はもちろん、ITによる資産の運用や管理のサポート、仮想通貨の流通などがあります。
Apple Payに代表されるNFC決済、広くはQR決済も含むキャッシュレス決済の拡大もフィンテックを代表する流れと言えるでしょう。IT業界においては決済システムの構築など、さまざまな需要と契機が考えられます。
AppleがiPhoneの販売不振のために、おサイフケータイ機能を取り込んで日本のファンに媚びたという見解もあります。しかしフィンテックに携わる方はむしろキャッシュレス決済拡大の流れを、より大きなビジネスチャンスと考えていかがでしょうか。
ビジネスにおいて変化は絶好の機会です。
追記:2019/7/18 アップデート
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