マーケティングとは、一言でいうと「営業しなくても商品が売れる仕組みを作ること」
「マーケティングとは?」に対する回答はさまざまではないでしょうか。「調査のことだよ」「広告や宣伝でしょ」「いやSNSの口コミこそがマーケティング」など、それぞれの仕事によって異なる解釈がありそうです。
マネジメントの父と呼ばれるピーター・F・ドラッカー(以下、ドラッカー)は『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』(ダイヤモンド社)という著書で「マーケティングの理想は、販売を不要にすることだ」と述べています。販売(Selling)という言葉を使っていますが、意味としては営業です。一言でいうと「営業しなくても商品が売れる仕組みを作ること」になります。
この記事を読むと、次の3つのことが分かります。
①マーケティングの定義、歴史、戦略
②マーケティング活動のプロセスと手法
③マーケティングとテクノロジーの融合
マーケティングの定義、歴史、戦略
マーケティングは、アメリカや日本の団体による定義のほか、ドラッカー以外にもフィリップ・コトラーなど、さまざまな研究者によって定義されています。
まず、定義を理解し、歴史について触れます。
マーケティングの定義
公益社団法人日本マーケティング協会は、1990年に次のようにマーケティングを定義しています。
マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。
参照リンク:
https://www.jma2-jp.org/jma/aboutjma/jmaorganization
文中の用語は脚注で解説されていますが、一般消費者向けのBtoCだけでなく、法人に対するBtoCや地域など、マーケティングの対象と概念を拡張していることが特徴です。
「市場創造のための総合的活動」がマーケティングの本質を突いています。脚注では、古典的なマーケティングの「4P」に、リサーチや関係性(リレーションシップ)を加えているところが特徴です。「4P」とは、Product(製品)、Price(価格)、Promotion(広告や販売促進などのプロモーション)、Placement(流通)であり、この4つを組み合わせて市場から反応を得ることを「マーケティングミックス」といいます。
マーケティングの歴史
古くからあると思われがちなマーケティングですが、その歴史はまだ70年ほどです。1950年代の「マネジリアル・マーケティング」が現代マーケティングの発端とされています。
ざっくり時代を追うと、マーケティングは以下のように発展してきました
1960年代:戦略的マーケティングの提唱
1970年代:ソーシャル・マーケティングなど概念の拡張
1980年代:データベース・マーケティング、リレーションシップ・マーケティング
1990年代:経験価値マーケティング
2000年代:ソーシャルメディア・マーケティング、CSRマーケティング
マーケティングの戦略
マーケティングでは「戦略(Strategy)」が重要です。戦略とは、目標を達成するために、どのような方針のもとに競合企業と差別化を行い、誰に、何を、どのような価値を与えて市場のシェアや利益を獲得するかについて、立案と計画をすることです。
競合企業の差別化は「3C分析」が王道です。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)のそれぞれを分析します。SWAT分析もよく使われます。内部環境の Strength(強み)、 Weakness(弱み)、外部環境のOpportunity(機会)、Threats(脅威)を分析します。
このとき「誰に」をマーケティング用語では「ターゲット」と呼びます。マーケティングの対象を絞り込むのですが、この絞り込んだ見込み顧客の集団が「セグメント」です。「ビールが苦手だけれど、自宅で気軽にカクテルを楽しみたい20代の独身女性」のようにターゲットを定めます。
「ペルソナ(仮面という意味)」という手法を用いることもあります。性別などの属性に加えて、どのような職業で毎日の生活パターンや趣味は何か、物語の主人公のように仮説からターゲット像を明確にします。
自社分析に関して、フィリップ・コトラーは市場シェアのトップを占める「リーダー」、リーダーを攻める「チャレンジャー」、経営資源が量的と質的に劣る2番手や3番手の「フォロワー」、小規模な市場(ニッチ)で独自性を発揮する「ニッチャー」を区別し、異なる戦略を立てるべきだと考えました。現在でも使われているフレームワークです。
中小企業では、潤沢な予算はなく人材は少ないため大企業と異なって全方位的なマーケティングができません。「ランチェスター戦略」のように、地域を特定して予算を集中投下するなどの戦略に効果があります。
マーケティング活動のプロセスと手法
マーケティング戦略にしたがって、具体的な施策を実施します。手法とプロセスにはさまざまなものがありますが、広告(AD: advertising)、広報(PR:public relations)、販売促進(SP:sales promotion)は異なることに留意したほうがよいでしょう。
広告は、4マス媒体(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)やインターネット、デジタルサイネージなどの屋外広告を使い、費用を払って認知拡大の目的で行います。広報はメディアにプレスリリースなどを配信して働きかけますが、基本的に対価を支払うものではなく、掲載される確実性はありません。企業と社会の関係づくりが目的です。販売促進は、認知拡大より購入時に背中を押すための施策です。
SNSなどで一般の投稿と区別するため広告に「PR」と記載することがあります。混同しがちですが、広告と広報(PR)は異なるという認識が大切です。
マーケティングのプロセスと手法は、文章で解説していると一冊の本ができるほど多岐にわたります。そこで独自の見解から「調査分析」「市場把握」「認知拡大」「理解促進」「顧客維持」の4つのプロセスに合わせて施策を図解しました。このプロセスは一般的にファネル(ろうと)に例えられることがありますが横向きにしています。ご参考まで。
マーケティングとテクノロジーの融合
マーケティング分野には、ITはもちろんAIが用いられるようになりました。
過去に遡ると1980年代には「データベース・マーケティング」が隆盛しました。顧客情報と購買履歴などをデータベースに格納し、ターゲットのセグメンテーション(細分化)を迅速かつ効率的に行い、ダイレクトメール(DM)などの反応から潜在顧客にアプローチします。
データベース・マーケティングから「リレーションシップ・マーケティング」や「One to One マーケティング」が派生して登場しました。顧客との関係性を重視し、顧客をファンに育て、リピーターとしてリテンション(維持)します。分析手法としてRFM分析が用いられました。RFMとはRecency (直近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary (購入金額)の頭文字で、このデータで顧客をセグメントします。
これらの手法が従来のマーケティングと異なっていた点は、データベースを活用して、長く買い続けてもらう「生涯顧客」の育成を重視していることです。生涯顧客によってもたらされる価値をLTV(Life Time Value)といいます。
最近ではインターネットによるデジタルマーケティングが主流です。CPI(Cost Per Inquiry:資料請求者)、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)などを可視化できることがメリットです。WebサイトにおいてSEO(Search Engine Optimization)は集客の基本であり、SNSやインフルエンサーの活用も普及しています。
そのような現状を踏まえて、今後、注目されるデジタルマーケティングを挙げます。
▽こちらもあわせてどうぞ
コンテンツマーケティング
オウンドメディアを立ち上げ、同時にSNSで情報を発信する企業が増えました。次世代通信規格5Gの登場を考慮すると、今後はモバイルコンテンツで動画配信などリッチメディアのコンテンツが重視されるでしょう。ARやVRを用いたインタラクティブなコンテンツにも可能性もあります。
アカウントベースマーケティング(ABM)
この手法は、特定の企業アカウントをターゲットにリソースを集中させ、パーソナライズ(個別化)したキャンペーンなどを実施する、主としてBtoBの考え方です。不特定多数に向けたキャンペーンと異なり、ターゲットが明確化されていることが特長です。マーケティングオートメーション(MA)のリード獲得とは、まったく別のアプローチになります。
オムニチャンネル
オンラインのECサイトとオフラインの実店舗を統合して、シームレスに(継ぎ目なく)販売を行う手法です。プロモーションでは、マスメディア、DMやカタログなどの紙媒体とWebサイトを連携させます。OtoO(Online to Offline)という考え方もありましたが、クーポンの利用よりモバイル端末上で一貫した購入を実現することが特長です。
まとめ:売れる仕組みとは
率直なところ「何もせずに売れること」はありません。したがって「売れる」と「仕組み」について戦略と手法を考え、実践する必要があります。それがマーケティングです。
「売れる」基本は4Pにおいて、素晴らしい製品か、魅力的な価格か、話題を呼ぶプロモーションか、新たな流通チャネルを開拓しているか、などの検討項目があります。ターゲットを掴み、競合企業との差別化も重要です。「仕組み」については、コンテンツ、ABM、オムニチャンネルなど、デジタルマーケティングを積極的に導入する方法がひとつ。お客様から別のお客様を紹介いただける信頼獲得の方法を確立すれば、それも仕組みといえるでしょう。
戦略と手法を確立し、その仕組みがきちんと回転して「営業しなくても売れる」ようになることが究極のマーケティングです。
▽気になる方はこちらもどうぞ
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