無料で使える3D CAD比較
3DやVR・ARが身近になり、このようなコンテンツ製作にも使われるCADですが、無料で使えるものの中にも実用に耐える高機能な製品が増えてきています。今回は無料で使える3D CADをいくつかピックアップして機能などの比較をしてみましょう。
サーフェスとソリッドの違い
3D形状を構成するのに大きくサーフェスとソリッドという2種類のアプローチがあります。サーフェスは物体の形状を面で構成し、中身の情報を持たない中空構造です。データが軽くて済みますので、1970年代から1980年ぐらいまでのCADではサーフェスを採用しているものがほとんでした。それに対してソリッドは物体の中身の情報も持つため、質量・体積・断面などの計算をすることができます。現在の3D CADではソリッドを採用しています。
建築や製品製造のため製図にはソリッドを採用
実際に構造物を建築するための製図や、工業製品の製造で使われる製図では多くの情報を持たせる必要があり、各種の数値計算ができるソリッドを採用しています。一方、ビジュアルの確認だけといった物体の形状だけが必要な場面では、データの節約もあってサーフェスを活用するケースが多く見られます。また、サーフェスの場合は数値での制御ではなく、感覚的に操作できるため複雑な形状をデザインする時などにとても向いています。
自動車製造で表面形状を曲面で表現する場合などでは、まずサーフェスでデザインし後でソリッドに変換するなどの処理をおこなうのが一般的です。以下でご紹介するいくつかの3D CADソフトについては、ソリッドを採用しているのが製図由来、サーフェスを採用しているのがモデリング目的のものであると、大まかに判断して良いかと思います。では、実際に例を挙げて比較してみましょう。
Fusion360、Free CAD、SketchUP Freeの3つを比較
今回はそれぞれ特徴のある3つの3D CADについて、機能の簡単な説明を加えながら比較してみましょう。取り上げる機能については
(1)3D形状の作成方法(サーフェスかソリッドか)
(2)アセンブリ・履歴管理ができるかどうか
(3)2D図面への書き出しができるかどうか
(4)その他の機能
以上の4点について取り上げてみます。
(1)3D形状の作成方法(サーフェスかソリッドか)
3Dモデルを作成するには、サーフェスとソリッドという大きく2つのアプローチがあります。サーフェスは面で形状を捉えるため、直感的に操作しやすく複雑な形状のデザインに向いているという反面、中身のデータを持たないので数値計算を伴う具体的な用途に適しません。ソリッドは中身のデータを持つのでデータ量が大きくなる一方で、体積・質量の算出や断面の作成などにも対応しています。
1980年代ぐらいまでのCADでは、データ量の節約もありほとんどのソフトがサーフェスを採用していましたが、現在の3D CADではソリッドが標準となっています。一方で、複雑なデザインが必要とされる自動車の局面の構成や、ゲームキャラクターの作成などにはサーフェスが向いています。なお、自動車製造の場面などでは最初にサーフェスで3Dモデルを作成し、あとでソリッドに変換するという手法がとられています。
■製図由来のFree CADはソリッド、SketchUPはサーフェスを採用
FreeCADは、オープンソースで有志が集まってプログラミングをおこなっている3D CADです。カスタマイズ性が高く高機能ではありますが、実際に使用するためには各種のプラグインや設定を自分でおこなう必要がありハードルが高めです。SketchUPはGoogleが提供していたサービスですが、現在はTrimble社が開発をしています。正確には3D CADではなく3Dモデリングといった方が良いかと思いますが、初心者でも気軽に利用でき直感的に操作が可能なため比較として取り上げました。こちらはサーフェスを採用しています。
■製品版と同等の機能を備えるFusion360
AUTODESK社が提供するFusion360は、学生・個人・スタートアップを対象として無償で提供されるソフトです。製品版と遜色ない機能を利用できます。無償で利用できる期間には制限がありますが、現在のところ更新すれば継続して利用ができるようです。Fusion360はサーフェスとソリッドの両方に対応しています。
(2)アセンブリ・履歴管理
Fusion360とFreeCADは両機能とも実装しています。SketchUPは両機能とも非対応です。アセンブリとは部品を組み上げて製品を作る際に、お互いの干渉などの確認をコンピュータ上でできる機能です。履歴管理は過去のデータへのアクセスができるかどうかという機能ですが、SketchUPはモデリングを主体とした簡易的なソフトのため、これらは実装されていません。
(3)2D図面への書き出し機能
3Dモデルを作成しただけでは実際に製造することはできません。2Dの図面に落とし込んで初めて現実に製造工程にのせることが可能となります。3Dモデルから直接2D図面を作成する機能はこの意味で非常に便利です。Fusion360はこの機能を持っており、SketchUPにはありません。FreeCADでは中間形式にファイルを変換するなどして、2D編集用のソフトへデータを移すことは可能ですがソフトウエア上で2D図面を編集することはできません。
(4)その他の機能
Fusion360は、その他の機能についても他の同種のソフトを圧倒しています。レンダリング・アニメーション・CAMやCAEなど豊富な機能を実装しており、とても無料で利用できるソフトとは思えないぐらいの充実ぶりです。製造元であるAUTODESKは、CADソフトでスタンダートである「AUTOCAD」3Dアニメーションの統合環境である「MAYA」建設CADで使われる「Revit」などを提供している企業です。そのため、これらのソフト間でのデータの移行もスムースにおこなえるなど、AUTODESK製を利用するメリットが非常に高くなっています。
今回比較した3つのソフトについては、特徴が明確に分かれるものを選択してみました。高機能で他のソフトとの連携も考慮し実用的なのは「Fusion360」、単純にモデリングをする目的であれば気軽に利用できる「SketchUP」、カスタマイズ性を重視するなら「FreeCAD」といったところでしょうか。無料で提供されている3D CADには他にも、Creo Elements/Direct ModelingやDesignSpark Mechanicalなどがあります。いずれにしても一昔前では、最低でも数十万円は出さないと手に入らなかった機能が無料で使えるようになっており、驚きと同時にとても嬉しい時代になったことを感じます。
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