Googleが提携したLabster社とは?ついにVRで仮想実験ができる時代へ
巨大なゴーグルのような「VR」。試してみたことはありますでしょうか。ゲーム機材と思われがちなVRですが、アメリカでは「仮想ラボ」を学生に提供しています。さらに驚くことに、実際に有名大学でも使われているというのです。
理系学生にとってメリットだらけな仮想ラボについてご紹介します。
仮想ラボを作るLabster社がGoogleのVR「Daydream」と提携
GoogleのVR(バーチャルリアリティ)「Daydream」といえば、日本では2016年から発売されています。Android向けのVRプラットフォームで、ヘッドセットにVR対応しているスマートフォンをセットして仮想環境を楽しみます。
また、Labster社とはVRによる実験室などを開発している企業で、ゲーム形式のアプリなども開発しています。
このLabster社がGoogleとタッグを組み「仮想実験ラボ」の環境の提供をはじめており、すでに実例もあります。なんと、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学、スタンフォード大学といった名だたる大学が、Labster社のVR環境を実際に使って仮想実験を行っているというのです。
▽関連記事はこちら
単なるゲームではない!VRでおこなえる仮想ラボとは?
VRといえば、ヘッドセットを付けた仮想環境の中で、高層ビルの上から伸びたハシゴを渡ってスリルを味わったり、ゾンビに取り囲まれたりとゲーム要素のイメージが強いですが、アメリカでは教育業界に進出し、実用化されています。
Labster社と提携したGoogleのヘッドセットを装着すれば、今まで実験室でしか行えなかったような研究ができるようになっているのです。
じつは日本でもVRの実用化は進んでおり、医療の現場で手術のシミュレーションをしたり、精神疾患の疑似体験をしたりといった使われ方はしています。ですが、教育分野にまでは進出していないのが現状となっているのです。
GoogleのVRとLabster社の提携による仮想ラボは、アメリカが推進する“STEM教育”に大きな進歩を与えてくれると予想されます。
アメリカが目指すSTEM教育とは?
STEM教育とは、
・Sciense(科学)
・Technology(技術)
・Engineering(工学)
・Mathematics(数学)
の頭文字をとったもので、アメリカではじまった教育モデルです。これらの学習には実験が欠かせませんが、費用や通学などで悩んでいた学生にとってはまさに朗報でしょう。
Labster社の仮想アプリに迫る
VRの仮想ラボではどんなことができるの?
公式サイトのキャプチャを見てみると、実にたくさんの実験種類があり、イラストの画像でありながらリアルな研究室の環境が再現されています。DNA配列の研究や、顕微鏡ごしに拡大された微生物、細胞培養の基礎といった本格的な実験ができるアプリケーションなどラインナップも充実しています。
また、実験だけではありません。仮想ラボを使い、研究室にある安全装置の使い方や専用キャビネットの特徴、緊急時の対応方法を勉強することもできます。
これは実際に起こったとき、経験のすくない学生ならパニックを起こしたりトラウマになったりする危険があるので、仮想ラボで疑似体験ができるというのは心にも体にも負担が少なくなりますね。
YouTubeの公式アカウントにて、一部動画が公開されています。英語ではありますが、本格的であることがうかがえます。ご興味があるからは、ぜひご覧になってください。
▽関連記事はこちら
太陽系外の惑星まで行ける!VRの種類は?
現在70ほどあるLabster社のアプリですが、これからもどんどん増やしていくとLabster社は意気込んでいます。
また、どうやらこのVR、太陽系外の惑星に行き、人間が生活できるか確認するという仮想研究までできるようです。この研究を実際に行おうとすれば、想像を絶する費用がかかります。仮想ラボは“仮想”ですから、あらゆる研究をコストを抑えて疑似体験することができるのです。
「ゲーム感覚」と言ってしまうと軽いイメージになりますが、仮想ラボによって地球を超えた実験まで可能になってきました。
Labster社の仮想ラボは学生が喜ぶメリットばかり!
リスクがない
実験というと、文系で実験が苦手だった筆者はどうしても「怖い」というイメージがつきまといます。人間だれしも間違いはありますから、溶剤や薬剤を間違えて事故に発展してしまうリスクもゼロではありません。
ですが、仮想ラボなら本人や周りの人がケガを負ったり、実験室が損傷したりといったリスクがありません。あえて危険な化学物質で実験を行い、危険にさらされずに間違いを犯すことだって可能なのです。
何時間でも使える
研究室は設備や材料に限りがあります。小さい研究室や生徒をたくさん抱えている研究室なら、他の人に気を遣って譲りながら実験する必要も出てくるでしょう。中には「使いたい機材があるけど、先輩が使っているから譲らなければ…」と我慢している学生もいるかもしれません。
仮想ラボなら、そんな窮屈な思いをしなくても何時間でも実験に没頭することができます。ここだけの話、「研究室に気の合わない人がいる」という時でも気兼ねなく使えますね。
もし台数の少ない特殊な機材があっても、時間を気にせず使うことができるのは学生にとって大きなメリットとなるでしょう。
仮想ラボは24時間使える
大学生になると、アルバイトと学業の両立を頑張っている学生も多いものです。特に理系は学費も高額になりがちですし、学業に没頭できる人ばかりではありません。
理系の学生を悩ませがちなのが、シフトの時間調整ではないでしょうか。研究室が使える時間に合わせてシフトを組んでいるという人は、仮想ラボによって時間を気にせずシフトを組むことができます。
場所を選ばない
仮想ラボは、GoogleのVRを装着すればいつでもどこからでもアクセスできます。ということは、わざわざ研究室に行かなくても、家にいながら実験が行えるというわけです。
もしVRによる仮想ラボが日本の大学でも適用されれば、遠方から通学している学生は金銭的にも時間的にも助かりますよね。
特に大学はキャンパスがいくつか分かれていることが多いですが、研究室が必要なキャンパスというのは遠方に作られることが多いです。VRによる仮想ラボが普及すれば、全員が近くのキャンパスに集まって授業を行うこともできるでしょう。
現実では不可能な実験もできる
太陽外の惑星を舞台とした仮想実験もできるとご紹介しましたが、Labster社のアプリの中には殺人現場をテーマとしたものもあります。つまり、殺人現場でDNAや指紋の採取など、法医学的な分析まで疑似体験することができるのです。
また、その時の仮想ラボでは学習者は捜査官という立ち位置になります。実際の事件現場であれば、経験の浅い学生が入ることはアメリカでも許されないでしょう。
殺人現場だけではなく、海の仮想環境で海洋生物の研究をすることもできます。魚が大量に死んでしまった海で水や魚のサンプルを集め、魚を解剖して死因を特定する…といったプログラムです。
私のように解剖と聞いただけで逃げ腰になってしまう人でも、仮想環境なら抵抗なく実験できそうですね!
仮想ラボはぜひ日本にも普及してほしい!
今回ご紹介したVRによる仮想ラボは、STEM教育の履修者だけではなく、大学生や高校生にまで普及していく意欲を見せています。また、デンマークやカナダの大学でも仮想ラボによる実験を行うことが決まっています。
研究室というのは維持費もかかりますから、日本にも仮想ラボが普及すると学費が安くなることも期待できるでしょう。さらに、住んでいる土地や疾患を抱えて通学が困難な学生であっても、「実験」という点においてはあきらめる必要がなくなります。
ITテクノロジーは日々進化しており、ゲームととらえられていたVRももう実用化されています。これからもどんな進化を見せてくれるのか、楽しみですね!
Error, group does not exist! Check your syntax! (ID: 1)