無料サービスなのに3カ月間で1兆円以上の純利益!Googleのビジネスモデルはどうなっているの
2018年10月25日、Googleの持ち会社であるアルファベットは、2018年7月~9月期決算の純利益が91億9200万ドル(約1兆300億円)と発表しました。
この数字は、売上高の間違いではありません。間違いなく純利益です。Google関連のビジネスだけで、わずか3カ月間の純利益がなんと1兆円を超えているのです。
しかもこの利益額は一時的なものではありません。2018年4月~6月期決算では、EUから43億4000万ユーロ(約5600億円)という巨額の制裁金が課されたため純利益が31億9500万ドル(約3500億円)へと下がっているものの、2018年1月~3月期の決算では既に純利益94億ドル(約1兆600億円)を記録しています。
Googleサービスの基本は無料で提供されていますが、無料サービス主体で年間4兆円もの純利益を生み出すGoogleのビジネスモデルとは、どうなっているのでしょうか。今回は、その構造を探っていきます。
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Googleの収益の大半は広告収入
Googleの収入の大半は広告関連です。2017年7月~9月期の連結売上高でみると約87%が広告収入となっており、断トツの売上げとなっています。
Googleの収益にもっとも貢献しているのが、「Google検索」に連動する広告です。この検索連動型広告による収入は年々伸びていますが、この伸びはスマホの普及が一役買っているといわれています。
iPhoneに搭載されているブラウザであるSafariは、デフォルト状態の検索エンジンがGoogleです。Android OSはGoogleが開発しているため、Androidスマホのデフォルト検索エンジンもGoogle検索になっています。
そのため、スマホの検索エンジンはほぼGoogle検索に寡占化されています。もともと検索エンジンのシェアではGoogleがトップでしたが、スマホの普及により、そのシェアがさらに高まっているわけです。
また、動画共有サイトのシェアについてもGoogle傘下のYouTubeがトップになっています。そのため、YouTube広告の収入も増加を続けています。
Googleマップからの収益も増加
Googleの広告収入として忘れてはいけないのが、Googleマップです。現在の収益額の内訳は明らかにされていないものの、アメリカのベアード・エクイティ・リサーチでは「2020年までに50億ドル(約5700億円)の収益をもたらす」と予測しています。
しかし、一般ユーザーがGoogleマップを利用しても広告は表示されないため、「Googleマップに広告収入なんてあるの?」と思うかもしれません。
Googleマップの収益は広告を表示することによる広告収入ではありません。Googleマップのデータを利用している企業が支払っている料金が収益として計上されます。
たとえば、民泊の「Airbnb」、自動車配車サービスの「Uber」、店舗予約サービスの「ホットペッパー」や「食べログ」など、Googleマップの地図データや経路データ、渋滞情報などを利用することで利益を得る企業がGoogleマップのデータを利用しています。
すなわち、企業がGoogleマップの機能を自社サービスに組み入れて利用する場合にGoogleが課金し、それが収益となるわけです。
Googleでは、Googleマップを利用するユーザーの行動データを無償で収集します。そのデータを蓄積し解析していくことにより、サービスがさらに改善していきます。なお、Googleマップユーザーの行動データは匿名で収集されるため、個人情報が流失する恐れはありません。
Googleのビジネスモデルに変化も
大半を広告収入に頼るGoogleのビジネスモデルですが、近年ではそれが少しずつ変わってきています。
かつて、Googleの広告収入はGoogle全体の収益の90%以上を占めていましたが、ここ最近は80%台後半へと比率が下がっています。代わって伸びているのが、クラウドサービスやアプリ、ハードウェアなどの収入です。
クラウドサービスとして提供されているのは、Googleビジネスの基盤を活用して公開された企業向けのGoogle Cloud Platform(GCP)です。企業向けクラウドプラットフォームとしては、Amazon Web Service (AWS) やMicrosoft Azure、IBM Cloudなどが先行していました。しかし、起動の速さや用途に合わせた仮想マシン選択の自由度、コストの低さなどでGCPが評価され、先行するクラウドプラットフォーマーを追い上げています。
2018年10月~12月期におけるGCPの売上高はというと、10億ドル(約113億円)超える事業にまで成長しています。
また、全体における収入に比べたらまだ微々たるものですが、ハードウェア収入も忘れてはいけません。
Googleが発売するスマートスピーカー「Google Home」は、Amazonのスマートスピーカーである「Amazon Echo」から2年遅れで登場しました。しかし、2018年1月~3月の世界出荷台数でAmazon Echoを抜いて320万台を記録。Amazon Echoの250万台を抜いてスマートスピーカー部門の首位に躍り出ました。
さらに、、2018年4月~6月にはGoogle Home Miniが世界出荷台数で230万台を記録。スマートスピーカーの市場シェアで20%に達しています。
そのほか、iPhoneに対抗するかのように、Googleが自社開発し2017年10月に発売された「Google Pixel 2」や、2018年11月に発売した「Google Pixel 3」というスマホが投入されるなど、広告収入でほぼ一辺倒だったGoogleのビジネスモデルが徐々に変化してきています。
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検索エンジン離れがビジネスモデルの変化を促す
Googleが広告収入一辺倒から脱却しようとしている理由のひとつとして、ユーザーの“検索エンジン離れ”があるといえそうです。
もちろん、人びとが情報を得ようとするときに利用するのは今でも検索エンジンであり、その検索エンジンのトップはGoogleであることは変化していません。ただ最近では、多くの人びとがFacebookやInstagram、TwitterなどのSNSからも情報を得るようになっています。
また、アメリカではオンラインショッピングをする際、「Googleから探す」のではなく「Amazonから探す」というユーザーが増えているという結果もあります。
アメリカの証券金融会社であるRaymond Jamesが2016年12月に実施した調査によれば、524名を対象に質問をしたところ、「Googleから探す」という回答者が26%なのに対して「Amazonから探す」という回答者が52%にも上りました。
つまり、オンラインショッピングをするとき、Googleで商品を検索してもAmazonのページが表示されるなら、その手間を省いて最初からAmazonで検索しよう、という動きです。
理由はその一手間にあるだけでなく、アメリカにおけるAmazonプライム会員数の多さにもあります。Amazonプライム会員になると商品の送料が無料になるなど、数多くの特典があるためにアメリカでは人気が高いサービスです。
2017年度中に、世界中のAmazonプライム会員が1億人を突破したと発表されましたが、その大半がアメリカ人だといわれています。
ビジネスモデルが変化しても、ユーザーファーストの理念は変わらない
このように変革を遂げようとしているGoogleのビジネスモデルですが、いかに変化していこうともGoogleが持つユーザーファーストの精神は変わりません。「ユーザーを第一に考えるユーザーファースト」という企業理念により、Googleはこれまで大きな成長を遂げてきました。
Googleが検索エンジンとして勝ち抜いてきた理由は、「ユーザー(=自分)が使いたいと思う検索エンジン」を常に追求し、改善を続けてきているからです。例えば、あいまい検索や動画、画像などの種類検索、音声認識による検索など、検索エンジンの使い勝手はどんどん良くなっていますし、その恩恵は常にユーザーが受けているといえます。
また、Googleには蓄積されている膨大なデータ(=ビッグデータ)があります。ビッグデータを活用することによって、新しい製品やテクノロジーを開発し、例えば、自動運転技術などの実用化へとつなげています。
3カ月間で1兆円以上という膨大な純利益を上げているGoogle。ユーザーファーストという根底にある企業理念は不変ながら、そのビジネスモデルは時代や状況に合わせて少しずつ変化してきているといえるでしょう。
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