長谷工コーポレーションのBIM活用事例|タワーマンション・DXが鍵
ゼネコン大手の長谷工コーポレーションは、マンション用のBIMとしてRevitをカスタマイズした長谷工版BIMを導入しています。
BIMは設計や施行に導入するのはもちろん、さまざまな分野の業務改革にも活用されています。
ここでは長谷工コーポレーションのBIMの目標や活用事例について詳しくご紹介します。
長谷工コーポレーションはマンションに多数の実績がある企業
長谷工コーポレーションは、マンションの建設や仲介などライフサイクル全体で実績がある企業です。
中期経営計画でも超高層マンションの受注拡大を掲げています。
人口減少問題がマンション建設にも影響
現在の日本は、将来的に人口が減少し世帯人数や世帯数の減少など多くの問題を抱え、新築分譲マンション市場は縮小傾向にあります。そのため、従来と同じように分譲マンションを手掛けているだけでは、事業継続が見込みづらくなると考えられます。
長谷工コーポレーションはこの問題に対応しつつ事業量を確保する考えから、タワーマンションや非分譲・非住宅の事業領域の拡大を目標としています。
タワーマンションとは、明確な基準はないもののおおむね20階建て以上の建物を指します。
建物は高さに応じて建築基準法や消防法など法規制を受け、建築難易度が高くなります。
しかし、タワーマンションの形態は長谷工コーポレーションが得意とする大規模板状型であり、駅前や複合施設、再開発案件など拡充の余地が見込まれます。
長谷工コーポレーションでは新築タワーマンションの拡充が目標
長谷工コーポレーションが2021年3月期から2025年3月期を実施期間としている中期経営計画
「HASEKO Next Stage Plan(NS計画)次なるステージへの成長を目指して」
では、超高層マンションの受注拡大を重点施策のひとつとしています。(*1)
ここでは専門部署を新設して体制を整備することに加え
「首都圏の新築タワーマンションのシェア20%確保」
の実現が具体的な業績目標に挙げているのです。
初年度である2021年3月期の指標は、受注目標のうち10~13%にあたる約450億~500億円をタワーマンションでになうことが想定されています。
建築、設計、技術、協力会社の四位一体となり、分譲マンションに加えて賃貸マンション、副業商業施設、認可保育園、高齢者住宅、と一体的な開発ニーズへ対応するのが狙いです。
長谷工コーポレーションは長谷工版BIMを徹底活用中
長谷工コーポレーションは長谷工版BIMがあり、規格化・標準化に活用しています。
長谷工版BIMの概要やカスタマイズしているポイントなどについてご紹介します。
長谷工版BIMはRevitをカスタマイズしたBIM
長谷工コーポレーションではBIMを2012年から推進し始めました。
これまで品質・生産性の向上や意思決定の迅速化、設計視点を多角化させるためにさまざまな検討を行っています。
長谷工版BIMは、AutodeskのBIMであるRevitがベースです。Revitに自社のマンションの設計や施工に必要となる機能がカスタマイズされています。
2022年3月期には設計施工全案件でBIMを導入予定
長谷工コーポレーションでは、「首都圏のシェア20%確保」を目標にしてマンションに特化した3次元設計技術を積み重ねています。
建物の設計情報を細部まで「見える化」することで、設計はもちろん施工・維持管理など、マンションに関わる業務全体での活用を想定しています。
2019年3月期時点では、着工しているプロジェクトのうち約3割でBIMが導入されています。
ここをさらに拡充し、2022年3月期には設計施工の全案件にBIMの全面導入する予定です。
長谷工版BIMはマンションに特化した3D設計技術を構築
長谷工版BIMは、新築では企画から設計・施工・販売・管理・修繕まで活用可能です。
長谷工グループ全体での使用を想定し、管理や修繕などへの活用も順次進められています。主に以下のような機能が盛り込まれています。
図面データの一元化
・建築に必要なエビデンス管理として意匠・構造・設備・外構など設計に関わる図面を登録
・販売用図面、施工図などの図面関係のデータすべてを一元化
BIM部品
タワーマンションには非常用エレベーターの設置など法令上必ず設置が義務付けられています。
・いままで培った設計・施工ノウハウを規格化
・BIM部品としてライブラリ化
作業効率化ツール
業務のニーズに応じたカスタマイズ機能が設けられています。
・マス自動配置
・地盤地形作成
・概算コスト連携
・改正省エネ対応
・積算数量出力
・仮設積算出力
など
長谷工コーポレーションはBIMをDXに活用開始
DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、設計手法・建築生産手法全体の改革をさします。
長谷工コーポレーションではさまざまなかたちでBIMを活用したDXが行われています。
ものづくり改革はBIMとDXのかけ合わせで進める
建物のBIMモデルはさまざまな用途があります。
長谷工版BIMは、チェック作業の見える化や自動化に役立つ機能が盛り込まれています。
設計時には解析やシミュレーション、整合性のチェックが可能です。
施行では、適宜必要な図面が参照できます。
また、配筋検討などの架設計画への適用にも利用可能です。
そのほか、BIMのデータはロボットによる施工自動化などの作業効率化やさまざまな情報を活用した生産体制の構築、設計施工情報のデータベース化など、DXへの活用が大いに期待されています。
マンションの販売シーンにBIMを活用
マンション販売におけるユーザー体験といえば、いままではモデルルームを見学してもらうのが一般的でした。
長谷工コーポレーションでは、BIMをもとにVR(仮想現実)を作成し、これを顧客に体感してもらうことを進めています。
「長谷工オリジナルBIMビューワー」はパソコンや、スマートフォン、タブレットを用いて、BIMモデルから生成された室内をVRで内覧可能です。
マンションの住戸全タイプを簡単に体感してもらえます。
また室内の色調の調整も可能なので、購入時の納得感を高めるのに役立ちます。(*2)
なお、実際の物件をデータ化した「360°VR内覧」は中古マンションなどで適用拡大されています。(*3)
LIMとの組み合わせでICTマンションを導入
LIMとはLiving Information Modeling(リビングインフォメーションモデリング)の略で、ICT(情報通信技術)を盛り込み付加価値を高めたマンションです。
第1号物件として板橋区に学生向け賃貸マンションが建てられました。(*4)
顔認証システムや地震を知らせる振動センサー、気象センサー、給排水センシング、エネルギーを見える化するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入し、取得したライフログを長谷工コーポレーションの情報プラットフォームである「BIM & LIM Cloud」に集積、分析します。
集まった情報をもとにセキュリティや情報サービスの提供、見守り、防災など住む人の暮らしをサポートするほか、保守、修繕にも活用し建物の長寿命化を目指しています。
まとめ
長谷工コーポレーションはRevitをベースにカスタマイズした長谷工版BIMを構築し、マンションに関わるノウハウを蓄積、活用しています。
長谷工版BIMを活用することで設計はもちろん施工でも大きな効果が期待できます。
BIMはマンション販売時のVR体験や居住者、建物の維持管理者双方にメリットがあるライフログ集積など多くの分野で活用が始まっています。
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参考URL
*1 https://www.haseko.co.jp/hc/ir/pdf/20200228_1.pdf
*2 https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/20171005_1.html
*3 https://www.haseko-chukai.com/syutoken-buy/theme/360vr
*4 https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/20190912_1.html