Unityのクラウドコンテンツデリバリーがゲーム開発者にもたらすメリット
ソーシャルゲーム配信システム
今回サービスを開始したクラウド配信サービスは、主にUnityを利用するゲーム開発者に向けて提供されています。
ゲームの配信には、ゲーム開発とは別にコンテンツ配信ネットワーク(CDN)や、配信のためのバックエンドが必要になります。これらの確保を省略するため誕生したのが、Unityのクラウドコンテンツデリバリーというわけです。
これまでは独自でCDNの構築や、バックエンド環境を整えることが一般的でした。
しかしUnity公式のゲーム配信サービスが整備されたことで、Unityのサービスだけでゲーム開発から配信までを、ワンストップで実現できるようになったのです。
Unityのクラウドコンテンツデリバリー誕生の背景
Unityが独自のクラウド配信サービスを提供するに至ったのは、ゲーム開発者のリリースに至るまでのステップに、大きな負担が生じていたためです。
ゲームを消費者の手に届けるためには、前述の通りCDNとバックエンドの環境を整備することが必要になります。
これらは必須の過程でありながら、ゲームそのものの開発とは関係がなく、開発者の負担として重くのしかかっていました。特に個人、または少人数でゲーム開発に取り組んでいるインディーズ開発者たちにとって、このような負担は死活問題でもあったのです。
そこで誕生したのが、Unityのクラウドコンテンツデリバリーです。ゲーム配信に必要なすべての手続きをクラウドサービスで一本化、自動化できるため、配信に必要なリソースは最小限度で済み、その分ゲーム開発に配分できるようになります。
また、Unityというゲームエンジンを提供する信頼性の高い会社のサービスであることや、高速で、尚且つリアルタイムでゲームデータを配信できるサービスでもあるため、機能性にも優れているのが嬉しいところです。
Unityのクラウド配信システムを利用するメリット
Unityのワンストップでゲームの配信環境を整備できるクラウドコンテンツデリバリーは、革新的なメリットが存在します。
ゲーム開発者の「ラストワンマイル」を解消
近年のゲームにおいて顕著なのが、複数回にわたるゲームデータの修正や、新コンテンツなどを配布するアップデート対応です。
これらはゲーム本編を有するプレイヤー向けに配信されるデータですが、その度にダウンロードが発生するという手間が発生していました。
いわゆるゲーム配信における「ラストワンマイル」と呼ばれるものですが、プレイヤーが気持ちよくゲームを楽しめるようにするためには、開発者が配信の末端部分まで作り込む必要があったのです*2。
Unityのコンテンツ配信サービスは、こういった問題の解消を目指すことを念頭に提供されています。クラウドを介して開発者は自由に配信スケジュールをコントロールし、開発者が意図するタイミングとアプローチでコンテンツを届けられます。
効率的なゲーム開発のサイクルと品質の向上を実現
ゲーム配信に伴う負担がUnityによって解消されれば、ゲーム一本あたりにかかる時間と費用は大きく削減されます。その結果、スケジュール通りの開発を進められるだけでなく、ゲームのディテール追求にも時間をかけられ、品質の向上にも役立ちます。
また、一本あたりにかけられるゲーム開発の予算とスケジュールに余裕が生まれたことで、新作や新しいコンテンツの開発サイクルも高まるようになるでしょう。
Unityが掲げるゲーム配信の哲学とは
Unityのコンテンツデリバリーサービスが大きなインパクトを有している理由は、ゲーム開発者に寄り添った設計を徹底している部分にもあるでしょう。
利用料金が明朗会計の理由
今回のUnityのクラウド配信サービスは、料金プランが非常にわかりやすく設計されています。送信量が50GBまでは無料で、50TBまでは1GBごとに0.08ドル、50TB以上が0.06ドル、500TBを超えた場合は0.03ドルとなっているのです*3。
クラウドサービスの多くはあらかじめ見積もりを取るため、計算ツールなどを活用して料金を把握しなければなりません。
しかしUnityにおいてこのようなわかりやすい料金体制にしたのは、やはりゲーム開発者の負担を軽減するためです。コストの計算にかける時間と労力も解消することで、使いやすく、本業に集中しやすい環境の実現を促進しています。
非Unityユーザーにも開かれたクラウド配信サービス
また、Unityのクラウドコンテンツデリバリーは、Unityのゲームエンジンを使用していない開発者でも利用が可能なサービスです。もちろん、UnityとしてはUnityエンジンを利用するユーザーのさらなる獲得と品質の向上を目指してのサービスです。
しかしそれ以上に彼らにとって大切なのは、ゲーム開発者の普遍的な成功です。利用エンジンに依存しない、すべてのゲーム開発者にとって有益なツールを提供することで、素晴らしいコンテンツの開発と成功を促すことが、Unityの哲学というわけです*4。
ゲーム開発の現場は世界中に存在し、今も無数のクリエーターが各地でヒットを目指して日夜開発に取り組んでいます。Unityはそんな彼らを支える上で、大きなサポートとなるプラットフォームの開発に着手してきたのでした。
おわりに
Unityはゲームクリエーターはもちろんのこと、研究者やデザイナーの間でもお馴染みのソフトウェアです。
そんなUnityがゲーム開発者にとって有益なクラウドサービスの提供を開始したことで、ゲーム開発の現場はさらなる飛躍を遂げることが期待できます。
ゲーム開発の技術はもちろんのこと、今後はゲームクリエイターベースのサービスも様々な会社から登場することになるでしょう。
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参考:
*1 TechCrunch「Unityがゲーム開発者のためのクラウドコンテンツ配信サービスを開始」
https://jp.techcrunch.com/2020/09/12/2020-09-10-unity-launches-it-cloud-content-delivery-service-for-game-developers/
*2 上に同じ
*3 上に同じ
*4 上に同じ