会計初心者の鬼門である「減価償却費」を理解する。
エンジニアは、会計制度を理解しておいたほうが良い、と言われる。特に、企業の基幹システムに触ることのあるエンジニアは、会計を知らないでは済まされないことも多いのではないだろうか。
だが、会計は聞き慣れない言葉が多く、勉強し始めて挫折してしまう方も多いのではないかと思う。とくに初心者にとって鬼門なのが「減価償却費」という概念だ。
減価償却費は、家計簿には存在しない科目のため、売上や人件費といった概念はなんとなく理解できていても、「減価償却」と言われると「なんのこっちゃ」という方も多いのではないかと思う。
そこで今回は、会計の鬼門である「減価償却費」という概念について、説明する。
まずは最も簡単な概念である、
売上ー費用=利益
という式を理解する。これは家計簿でも同じようなイメージができるので、簡単に理解できるだろう。要するに家計では
給与ー生活費=貯金
と同じであると考えておけばよい。一般化すれば、
稼いだお金ーその間に掛かったお金=貯金できるお金
である。そして、「減価償却費」というのは、その名の通り費用に分類される。
ここで、費用について少し考えてみる。費用とは、事業を営むのに掛かったお金である。人件費、光熱費、通信費、地代家賃など、会社を運営するには多くのお金がかかる。
そして通常、費用は売上と対応させる。ある売上を稼ぐのに必要だったお金が、費用というわけである。
しかし、費用をどの売上と対応させるのか、判断が難しい場合がある。
例えば、今年の8月に工作機械を1億円で買ったとする。その他の費用は1億円で、8月の売上は2億円だった。この場合、8月の利益はいくらだろうか?
家計簿では、売上2億円ーその他の費用ー工作機械購入費=0円 で、利益はゼロである。
果たしてこれは正しいだろうか。実は、正しくない。工作機械は10年位は使えるので、1億円の購入費用をそのまま8月の費用としてはいけない。
使える期間で費用を割らなくてはいけない。したがって、10年使えるので、1億円÷10年で、費用は1年で1000万円、これを12で割って、約80万円が1ヶ月分の機械の費用である。
だから、8月の利益は
売上2億円ーその他の費用1億円ー工作機械の「減価償却費」80万円=9920万円
とするのが正しい。
このように、「それを使う年数に応じて少しずつ費用にする」という考え方に基づく費用を、減価償却費というのである。