作業コスト90%減!大林組の土量測量アプリがバージョンアップ
この記事を読むと、以下の3つのことがわかります
1.大林組の土量測量アプリについて
2.土量測量アプリのバージョンアップ概要
3.従来の測量方法について
スーパーゼネコンである大林組は、2018年に開発した土量測量アプリに「AR機能」を追加してバージョンアップしました。これにより、手持ちのiPhoneやiPadで簡易的な土量測量が行えるようになります。
建築業界にもARやVR技術が活用されており、建築業界の中でも限られた人しかできない作業も、簡易的に行える技術が登場しています。
大林組が土量測量アプリをリニューアル!AR版が登場
大林組は、2019年10月に土量測量アプリ「スマホdeサーベイ」をアップデートしたと発表しました。このアップデートによって、手持ちのiPhoneやiPadで土量測量が簡単に行えるのです。
土量測量アプリ「スマホdeサーベイ®」のAR版を発表
引用:エムソフト スマホ de サーベイ公式サイトより
https://www.msoft.co.jp/service/smartphonedesurvey.html
大林組は、「スマホdeサーベイ」の新バージョンとして「スマホdeサーベイAR版」をリリースしたことを発表しました。ソフトウェア開発などを行う株式会社エム・ソフトの協力のもと、「AR機能」を搭載したことが大きな変更点です。※1
土量測量アプリにAR機能が搭載されたことで、作業者は自分のiPhoneやiPadで簡単に測量を行えるようになります。今まで時間がかかっていた測量作業を大幅に効率化でき、省力化やスピード化を実現します。
すでにApp Storeにアップロードされており、利用したいiPhoneやiPadからダウンロードするだけで準備できます。有料アプリとして、1万円で提供されています。
ダウンロードはこちらからどうぞ
iPhone版
https://apps.apple.com/jp/app/id1480348273#?platform=iphone
iPad版
https://apps.apple.com/jp/app/id1480348273#?platform=ipad
土量測量アプリ「スマホdeサーベイ®」の使い方は
大林組のスマホdeサーベイは、新バージョンの登場によって新機能も搭載されています。iPhoneやiPadにダウンロードしたら、以下の手順で簡単に土量測量ができます。※2
①測量タイプを次の4つから選択します
1.横断測量:断面の高低や面積を計測
2.盛土 土量:底面と上面4点を指定して、盛土の土量を計測
3.掘削 体積:底面と上面4点を指定して、掘削現場の体積を計測
4.【新機能】面積測量:3点以上の頂点を指定して面積を計測
②スマホアプリを起動して、スマホを持ちながら地形にそって移動する。アプリの中から仮想ポールを設置して範囲を指定する
③アプリから測定結果を確認する
上記の手順だけで、簡易的な土量測定をすぐに行えるようになります。
前身アプリでは専用のスマホが必要だった
大林組は、2018年に初代土量測量アプリ「スマホdeサーベイ」をリリースしていました。土砂災害時に迅速な復旧工事が行えるようにと、スマートフォンで地形の状態を把握する目的でアプリを開発していたのです。
しかし初代の土量測量アプリでは、仕組み上赤外線センサーを使う必要がありました。作業者は、スマホから出る赤外線センサーで点群による3次元の地形データを取得するという仕組みだったのです。そうして取得した地形データをメール添付などでパソコンに送り、パソコンに送って効率化を図っていました。※3
そのため赤外線深度センターを搭載したスマホでしか使えず、土量測量専用のスマホを準備しなくてはなりません。
しかし新しい土量測量アプリは、iPhoneなどに搭載されているAR機能を使っています。これによって専用のスマホがなくても、自分のiPhoneや仕事用のiPadですぐに土量測量が行えるのです。
初代土量測量アプリでは、最大約500㎡までの3次元地形データを取得できます。この時も若干AR技術を使っており、「測線」となるガイド線を表示していました。
数々のITツールで建築業務の効率化を狙う大林組
スーパーゼネコンとして数々の大規模プロジェクトを手掛ける大林組は、ITを活用した技術開発も積極的に行っています。ITの力によって、建築業務の効率化や人手不足解消に向けて取り組んでいるのです。
2017年には、3Dプリンターの開発を行いました。特殊セメント系の材料を使った建造物の出力を行う3Dプリンターで、モルタルブロックを複数作ってブロック橋の建設を行うなど、「建設業務で使える3Dプリンター」を作ったのです。
大林組の3Dプリンターについては、「大林組が挑戦する建設3Dプリンター導入プロジェクト」をご参照ください。
また、大林組はVR技術とBIMを融合させることで、建築の教育システムも開発しています。
VRiel(ヴリエル)というVRシステムはBIMデータと連携していて、本番さながらのシミュレーションができます。ヘッドセットと研修に集まれるスペースがあればすぐに実施でき、
研修にかかるコスト削減を実現しました。
詳しくは、「大林組が導入するVR教育システム「VRiel」の真価」をご参照ください。
建築業界への活用も広がるAR機能
ARやVRといった技術は年々市場が広がっていて、今では建築業界でもその技術が活用されています。コスト削減や作業の効率化に大きく貢献でき、今後も成長が期待できる技術です。
ARとは
拡張現実という意味のARは、現実世界の情報にデジタル情報をプラスすることで、現実を拡張して表現する技術の事をいいます。
ARといえば「ポケモンGO」が有名ですが、今ではゲームに限らず医療や建築など幅広い分野への実用化が進んでいるのです。
GPSや電子コンパスで自己位置を特定する「ロケーションベースAR」やカメラの画像認識や空間認識技術を利用した「ビジョンベースAR」、特定のマーカーデータを使わない「SLAM」(Simultaneously Localization and Mapping)など種類があり、さまざまなデジタルデータを合わせて現実を拡張しています。
マイクロソフト「ホロレンズ」は建築業界でも活躍
ホロレンズはマイクロソフトが開発したMRヘッドマウントディスプレイで、ARがより進化した「MR」(複合現実)機能を搭載したガジェットです。
MRは、ARとVR(仮想現実)の技術を組み合わせて生まれた技術です。VRでは装着したヘッドセットでのみ仮想現実のデータを映し出しますが、MRでは実際の空間に表示できます。
このマイクロソフトのMR技術によって、ある建設会社では導水路トンネルの調査や点検にかかる時間を半減した事例もあります。※4
土量測量アプリで従来方法の90%以上短縮できる
土量測量には座標データが必要となりますが、従来の人手頼りの方法では手間がかかっていました。大林組の土量測量アプリによって、労力が1/10まで削減できるのです。
手動で座標データを取得していた
今では土量測量アプリやドローンなど、さまざまな測量ツールが登場しています。しかし、さまざまな事情から未だに人頼りの測量を行うことも珍しくありません。
従来の土量測量方式では、測量結果データをパソコンに入力して図に起こし、そこから計算して土量を算出します。精度を保つために最低でも「5m間隔」で計測する必要があり、当然ですが測量範囲が広いほど時間もかかります。
パソコンにデータを入力するのは人ですから、入力間違いがあれば結果に大きく影響します。
土量測量には2人必要だった
引用:大林組公式プレスリリースより
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20180220_1.html
今でも測量作業ではトータルステーション(TS)やプリズムを使って行うケースが珍しくありません。
トータルステーションとは光波距離計「EDM」と、角度を計測する「セオドライト」を合体させたものです。距離と角度を同時に測れるため、土量測量をはじめ地図作成や工事計画など、座標を必要とする作業を効率的に行うツールとして今でも一般的に使われています。※5
斜距離・鉛直角・水平角の3つを計測して三角関数などを使って算出する作業は、誰でも簡単に行えるものではありません。専門の知識を持った技術者が算出しています。
そしてトータルステーションで測量する場合、精度の高い座標データを得るために測量用の「プリズム」も必要となります。入射光と平行に光を返してくれるプリズムがあることによって、広い計測範囲も高い精度で測れます。
つまり、手動で行う土量測量にはトータルステーションを扱う人とプリズムを扱う人の、最低でも2人が必要でした。しかし大林組の土量測量アプリを使えば、トータルステーションもプリズムも使わず、手持ちのスマホ1台で測量が行えるのです。
まとめ
大林組がバージョンアップを発表して、土量測量アプリについてご紹介しました。専門的な技術を終結させて行う建築業務は、その複雑さゆえに効率的にできないこともあります。しかしITや最新技術によって、すこしずつ効率化も進んでいるのです。
こうした取り組みが増えれば、建築業界全体が働きやすくなります。長時間残業や人手不足など、建築業界の課題が解決していくかもしれません。
参照:
※1 https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20191011_1.html
※2 https://www.msoft.co.jp/service/smartphonedesurvey.html
※3 https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20180220_1.html
※4 https://www.smcon.co.jp/topics/2019/03051300/
※5 https://www.cbr.mlit.go.jp/kensetsu-ict/model/pdf/GNSS-youryou_chigai.pdf
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