「Prott User Meetup vol.15 – クリスマス目前!恋するサービス特集 -」参加レポート
こんにちは。キャパでデザインを担当しております、井上祐美です。
今年も残すところあと少しですね。ということで、2016年12月14日(水)に渋谷・株式会社Goodpatch様本社で行われた「Prott User Meetup vol.15 – クリスマス目前!恋するサービス特集 -」というセミナーに参加してきました!
セミナーでは恋愛に関連するサービスを行っている、恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」でおなじみの株式会社エウレカ様と、カップルフォトサービスで話題沸騰中の株式会社ラブグラフ様がご登壇され、それぞれが考える「ブランディングとデザインの関係性」についてお話しされていました。
ネットサービスはまだまだテクノロジー頼り
最初にご登壇されたのは、株式会社エウレカ リードデザイナーの亀谷さん。
「pairs」はダウンロード数400万人を突破した大ヒットアプリですが、「ネットに強い人しか使ってくれない」というのが現状にあるといいます。では、マス(大衆)に受け入れられるサービスにするためにはどうしたらよいのでしょうか?
大手メーカーの広告などのいわゆる「マスのデザイン」は一目でどのメーカーのものであるかが分かりますよね。
一方で「Webのデザイン」を見ると、テクノロジー重視でデザインの世界観やブランド力にそれほど差があるようには見えません。
つまり、「ネットサービスはUI・UXを含めたブランド性で勝負をする段階がきている」と亀谷さんは言います。
そのためには、サービスにまつわるすべての体験を設計することが重要となってくるのです。
UIを設計するときに知っておくべきこと
UIを設計する上で最も大切なこととは何でしょうか?
エウレカ様では「ユーザーストーリーにおける全ての段階でブランドコンセプトを当てはめる」ことを大切にしているそうです。
たとえば「pairs」のブランドコンセプトには「相手を深く理解して真摯な恋愛を」というメッセージを掲げています。
一方、同じくマッチング系でアメリカの若者の間で大流行している「Tinder」というアプリがあります。
このアプリは気になった相手の顔写真カードをスワイプしていくUI設計になっていますが、もしもこの優れたカードUIを「pairs」に採用すると、どうなるのでしょうか?
これでは相手を顔だけで判断するようになってしまい、「pairs」のブランドコンセプトに大きく反するばかりか、結果としてUXの低下に繋がります。
つまり、UIは「手段」であり「絶対的なもの」ではないのです。
ブランド力とは?
では、UI・UXを含めた「ブランド力」とは何なのでしょうか?
次にご登壇された、元デザイナーで株式会社ラブグラフ 取締役CCOの村田さんは「こっちがイメージした世界観を理解してもらうこと」であると言います。
たとえば、Appleは「想像、デザイン、革新」というブランドを打ち出すことで成功しました。他のスマホより値段が高くても、私たちはブランド力によってApple製品を選んでしまうわけです。
他にも、目をつぶってペプシとコカ・コーラを飲み比べたら、「自称コカ・コーラ愛好家」といわれた参加者の大勢がペプシを選んだという実験もありました。コカ・コーラのブランド力の強さが分かりますね。
つまり、「人々のイメージとこちらが届けたいイメージの差を埋めること」こそがブランディングであると言えるのです。
ブランディングの方法
ブランディングと聞くと経営者側の話に聞こえがちですが、村田さんは「ブランディングを語るのは経営者にとって難しい」と言います。実際に、経営者は数字で語れるものは得意ですが、デザイン・ブランド力など数字で語れないものは不得意な傾向にあるそうです。
では、実際にブランディングを行うにはどうしたら良いのでしょうか?ラブグラフの例を見てみましょう。
①ブランドをつくる
・ビジョンを大切に
村田さんがカップルフォトサービス「Lovegraph」をはじめたきっかけは「趣味」だったと言います。趣味で写真を撮っていた時の「写真を撮ることで人を喜ばせたい」という気持ちが、現在のラブグラフのビジョンである「しあわせな瞬間を、もっと世界に」に繋がっているのです。
・経営者のデザインリテラシー、美意識の一致
チームの全員がビジョンを共有し、全員がリーダーシップを発揮して目標達成を目指すチーム、すなわち“ビジョンドリブンカンパニー”として機能させることが重要だそうです。
・専門性を宣言
やらないことを決めます。ラブグラフだと「Loveしか撮らない」と宣言することでサービスの特化に繋げています。
②ブランドを守る
・責任者を置く
CCOとしてブランド責任者を置きます。今、ブランド責任者が重要視されるべきであるにもかかわらず、ポストが空いてしまっています。
・みんなが語れる
ワークショップやブレインストーミングを行い、ブランドを明文化します。
・チェックできる
暗黙的なデザインルールの共有をします。
例:「写真が主役であるため他のデザインはシンプルに抑える」「スマホの中に絶景を見せるため、枠はいらない」「スクショサイズを意識する」など。
デザイナーこそ会社のブランドを担う人に
「人は見た目が9割、とよく言われるように、サービスも見た目が9割である」と村田さんは言います。その見た目を作るのはデザイナーです。
今後は「デザイナーという枠にとらわれず、デザイナーも経営者リテラシーを持つことがブランディングの成功につながる」というブランディングとデザインの関連性を意識しながらUI・UXの向上に励んでいきたいと思いました。
おまけ
余談になりますが、2016年10月14日(金)から 2017年1月22日(日)まで六本木・東京ミッドタウンで行われている『デザインの解剖展』に先日行ってきました。本展では「きのこの山」、「明治ミルクチョコレート」、「明治おいしい牛乳」などお馴染みの明治製品をデザインの視点で解剖し、各製品の成り立ちを徹底的に検証しています。
2001年からこのプロジェクトをディレクションしているグラフィックデザイナーの佐藤卓さんから寄せられたメッセージの中に、今回のセミナーと通じる部分があったのでご紹介して終わりたいと思います。
“デザインという言葉には、形や色といった目に見える視覚的印象が強くありますが、もともと「設計」という重要な意味が含まれます。例えば食品の場合、味や口の中での感触も設計されているのであれば、それもデザインなのではないだろうか。ものを解剖するというイメージを頭に描くと、このような疑問が次々に湧いてきました。デザインを、ものを見るための方法としてとらえること。つまりものや環境を理解するために、デザインをメスにすることができるのではないだろうかと思ったのです。全ての物事に何かしらのデザインが内在するのであれば、必ずデザインを頼りに解剖ができるはずなのです。”
(http://www.2121designsight.jp/program/design_anatomy/director.html)